76話 青い空を見上げる少女
それから間もなく、世界には天使の脅威から解放されたことをニュースで流されました。
それは人々が待ち望んだものです。
「い、今は困ります!」
そして、休息を得ている美月たちの元に報道陣がどこから情報を得たのかは分かりませんが集まっていたのです。
「一言、一言だけで良いですから!」
そう叫ぶように懇願されている信乃は最初の内は丁寧に断っていました。
しかし――。
「いい加減にしてください、ここに居るのは怪我人です……とっとと失せてくれませんかね?」
笑顔を張りつかせたまま怒り始めているのが、分かりました。
「信乃お姉ちゃん怒らせると怖いんだよね……」
そんな中、綾乃がそうつぶやき美月は思わずクスリと笑ってしまいました。
これから先、どんなことが起きていくのかは分かりません。
復興までどの程度かかるかもわからないのです。
壊れた町は数知れず……。
今だ瓦礫の中にあるところもあります。
ですが、それでも……。
「お、お願いします! 我々を救った神に――!」
「勝手にそんなものと同じように呼ばないでください! あの子たちはただの女の子です! とにかく怪我をしていて疲労もあるんです! 取材は受けさせられません!!」
騒ぐ報道陣を追い出したのでしょう、乱暴に扉を閉める音が聞こえました。
その音を聞きつつ、今度元気な時にちゃんと話をしようと美月は考えながら空を見つめます。
かつてそこは人から奪われた物でした。
ですが、今は彼女たちが取り戻した物です。
「綾乃ちゃん……」
「ん?」
「これからも一緒にがんばろうね」
美月は布団の中で綾乃の方へと顔を向けながら微笑みます。
すると綾乃もまた笑顔を浮かべながら……。
「あったりまえじゃん、こっちこそよろしくね」
と答えてくれたのでした。




