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74話 世界を救った戦乙女

 彼女に声をかけたのは医師である吉沢信乃でした。

 怪我は大したことがない。

 その言葉に安堵を覚えた美月でしたが、不安は消えません。


「あの、なんで……」

「貴方たちが帰ってからしばらくすると魔法使いが次々にその力を失っていったんですよ」

「え……」


 美月は思わず呆けた声を出します。

 それもそうでしょう。

 今まで普通に使ってきた魔法。

 それがなくなったのです……ですが、考えてみれば当然だとも思いました。


 ミュータントは天使の細胞……そう彼が言っていたからです。

 天使の親玉が死に……天使たちが力を失ったように魔法使いもその力だけを失ったと考えた方がいいでしょう。


「…………そっか」


 美月はそれを理解するとようやく戦いが終わったことを理解し……。

 そして――。


「私はもう、イービルに……ジャンヌに乗れないんだね」


 若干寂しくも感じました。

 今まで一緒に戦ってきたジャンヌは美月の魔法の力で動いていました。

 ですが、肝心の魔法が使えないのではそれも無理なのです。


「美月……?」


 美月が寂しさを感じていると綾乃の声が聞こえます。

 ハッとし、彼女の方へと目を向けると彼女は優しい瞳を美月へと向けてくれます。


「良かった……起きたんだね」


 涙声で告げられ、美月はゆっくりと首を縦に振ります。


「綾乃ちゃんも……起きないかと思っちゃった」


 不安を口にすると彼女は目を丸めた後、少し笑います。


「それはこっちのセリフ……起きない人もいるって聞いて……本当、怖かったんだ」

「……え?」


 美月は綾乃の言葉を聞きすぐに信乃の方へと目を向けます。

 すると彼女は若干言いにくそうな表情を浮かべ――。


「魔法使いの中には意識が戻らなくなった人がいます……」

「じゃ、じゃぁ皆は……?」


 美月は一緒に戦ってきた仲間の顔を思い出します。

 すると――。


「あなた以外は皆命に別状はなく、目を覚ましていました……ですが……支部に居た他の魔法使いの一部はそのまま息を引き取った者もいたようです」

「そ、そんな……」


 美月はその言葉にショックを覚えずにはいられませんでした。

 それはつまり、彼女たちが殺したと言ってもいいからでしょう。

 そうなるとは思わなかった……ですが、そうしたのは美月たちです。


「ですが、美月さん……あなたはそれを気にしては駄目ですよ」

「な、なんで……!!」


 思わず眉を吊り上げる美月に対し信乃は――。


「あなたは……いえ、貴方たちは世界を救うために戦ったんです……そして、天使の脅威を退けただからこそ、胸を張ってください」


 そう告げられ、美月は複雑な気持ちになりました。


「でも……起きなかった人は……」


 自分たちが殺したようなものだ。

 美月はそう言おうとし――。


「貴方たちが天使を倒さなければいずれ皆死んでいたのですよ?」

「それは……」


 そうだ。

 もし仮に生き残ったとしてもみじめな人生を送ることになるだろう。


「さぁ……今はしっかりと休んで体を整えましょう」


 いつもより真面目な表情の信乃の言葉に美月は首を縦に振る。

 納得は行きません。

 ですが、全て納得するというのは無理な話でしょう。


「美月……」


 信乃たちが見守る中、綾乃の声が聞こえ美月は振り返ります。

 すると彼女は笑みを浮かべ――。


「お疲れ様」


 と口にしました。

 それに対し美月もまた……。


「うん、お疲れ様……綾乃ちゃん」


 複雑な気分のままそう答えるのでした。

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