71話 決戦に挑む戦乙女
雷は天使を飲み込み、次々に撃墜をしていく……。
そして、親玉もその雷に飲み込まれて行きました。
「美月!?」
いつもと違う様子に驚いた綾乃はすぐに美月の元へと駆け付けます。
「だ、大丈夫?」
「……う、うん」
美月は苦悶の表情を浮かべながら綾乃の言葉に答えます。
そして、腫れていく土ぼこりを眺めていると――。
『……今のは、なんだ?』
「「――っ!?」」
周りに居た無数の天使たちはすっかり数を減らしました。
ですが、親玉らしき天使はまだ健在だったのです。
それも魔法で攻撃を防いだのでしょうか?
その機体には大した傷がついていません。
「あの魔法で……あんなにピンピンしてるの!?」
綾乃は怯えた声でそう口にします。
すっかりと逃げ腰になってしまったのです。
ですが……美月は……。
このままじゃ、綾乃ちゃんが殺される。
それだけは絶対に嫌!!
彼女には再び戦うためのその炎が産まれていました。
そして――。
『ほう?』
イービルを動かし――。
「美月!?」
彼女は天使の目の前に立ちます。
今の自分では敵わないかもしれない。
大丈夫……思ったより魔力は使ってない。
ですが、引くわけにはいかないその理由を思い出した彼女は敵を睨みます。
それに答えるようにイービルは動き始め――。
「こんなところで綾乃ちゃんを殺させない!!」
刃のないブレイバーを構えます。
どうやらマナタンクに入っていた魔力は先ほどの雷で使い切ってしまったのでしょう。
魔力が減る感覚を感じつつ、彼女は魔法の刃を形成させます。
そして――。
「そして、私もあなたたちの言いなりなんてならない!!」
そう声を上げます。
小さかった声はいつもの調子に戻り……そんな彼女の様子に勇気をもらったのでしょう。
綾乃もまた武器を構えるのでした。
二機の悪魔は再び天使へと向かっていきます。
何も言わずとも左右から京劇を仕掛ける美月たち。
対し天使はその両手に刃を構え……。
その攻撃をいとも簡単に防ぎます。
「嘘……」
「こ、この……っ!!」
二人はまさか防がれるとは思っていなかったのでしょう。
再び絶望へと落ちかけましたが、すぐに持ち直し……。
「なら……」
美月は綾乃の方へと目を向けます。
すると綾乃は――。
「一緒に行くしかないね」
そう答え、二人は同時に天使へと斬りかかりました。
当然防御を試みる天使。
ですが美月は振り下ろされた刃を二本の件で受け止められると――。
「負けない、負けれない!!」
祈るようにコントロールオーブに力を籠めます。
そして、明確なイメージを送り込みました。
ここで負けたら綾乃は死んでしまう。
そんなことは許されない。
彼女の必至な願いと祈り……そして、目の前の天使を滅ぼすためのイメージは――。
『魔力増幅確認……グラビティ展開』
無機質なアナウンスと共に魔法という力に姿を変え発動するのでした。
「え?」
突然、剣が重くなったことに綾乃は驚きます。
ですが手から柄が離れないよう操縦桿を握り締め――。
美月は同様にコントロールオーブを握ります。
二人の剣は天使の件を砕き、首元から袈裟切りにその背骨を断ちました……。
「…………」
重力に逆らえず、またそれ以上はイービルの腕が耐えられず天使の頭と共に落ちていく二人の剣。
しかし、二人はそれを見て慌てて天使から離れます。
と、同時に大きな爆発が起き――。
「「きゃああああああああ!?」」
二人は吹き飛ばされてしまうのでした。




