６８話 猛攻する戦乙女
二機の悪魔の性能は格段に上がっています。
そして、その性能に振り回されることなく二人は次々に天使を撃墜していきました。
それは天使にとって予想外の結果でしょう。
「次！！」
「綾乃ちゃん引いて！ 囲まれるよ！！」
突っ込みがちな綾乃に美月は忠告し、彼女はそれを聞き後ろへと下がる。
「良い感じ……」
綾乃は辺りの天使たちを見回し呟きます。
すると――。
「新型！！」
美月はそれを見つけ思わず声に出してしまいました。
以前、倒すのに苦労をした新型です。
しかもそれが何機も出てきたのです。
ですが、引くわけにはいきません――。
『魔力増幅確認……』
魔法を使ってもマナタンクに魔力がある時は美月本人の魔力は使いません。
ですが、そう何度も魔法を使えばすぐに枯渇するでしょう。
「インフェルノ！！」
だからと言って出し惜しみをすれば不利になるのは美月たちです。
ここは魔法を使い数を減らすべきだ。
美月はそう考え再び魔法を唱えます。
ジャンヌダルクから解き放たれた炎の魔法は瞬く間に天使達へと纏わりつき機体へとダメージを与えます。
ですが、その炎はあっさりとかき消されてしまいました。
相手も美月と同じ魔法が使えるのです。
「綾乃ちゃん！！」
「うん！」
ですが、二人はそれを知っています。
以前戦った事から知っているのです。
黒煙のせいでよく見えないモニターを無視しレーダーに頼った二人は天使の背後へと回ると――。
剣をふるい……背骨を叩きおっていきます。
煙が晴れると新型機は残り二機にまで減っていました。
仲間たちの撃墜を知ってか天使は二人に接敵しようとしますが――。
どこに居るか煙が晴れる前から分かっている二人はすでに行動をしていたのです。
関節を銃で狙い、動きを奪ったうえで背骨を折る。
そして――無数にいる天使達へと向き直ります。
すると天使たちは明らかにたじろいでいるのが分かりました。
それもそうでしょう。
今まで有利だったはずの地球の機体。
たったの二機がそれを覆してきたのです。
「気を抜いたら駄目だよ、綾乃ちゃん！」
「分かってる……確実に進もう！」
美月と綾乃は敵の本拠地である城のような場所へと近づきます。
しかし、それを許さないように天使たちは立ち向かってきます。
ですが……。
「天使の動きが鈍い……綾乃ちゃん！」
二人は悪魔を駆り、天使を撃墜し――。
「城が近づいてきた……」
美月は目の前に現れた天使を破壊すると前を見据えると……。
見たこともない天使が現れました……。
それと同時に警報機が鳴り響きます。
「すごい警報……こんなん初めてだけど……いったいどういう事？」
綾乃はそう口にするとやはり天使の方へと向きます。
「あの天使は一体……」
どんな力を持っているのか？
二人が警戒をしていると――。
『ここまで来るとは正直思っていなかった……その機体は存外素晴らしい物だ』
「――っ！？」
それは確かに日本語でした。
目を見開き目の前の天使を見つめた美月は――。
「ち、地球人？」
『違うな、我々はお前たちの言う天使だ。わざわざ下等なお前たちの言葉に合わせてやっているだけだ』
「喋れるなら交渉ぐらいできたんじゃ！！ なんで急に――！！」
綾乃は声を荒げながら問います。
それもそうでしょう、彼らが急に襲撃をしてきたことで地球はあのような状態になったのですから……。
『なぜわざわざ交渉せねばならない……奪い取ればいいだけだ。土地も食料も戦士も家畜も……そして、子を産ませるための素体もな』
「……え？」
それは予想外の言葉も伝えられ、二人は呆然としてしまうのでした……。
