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66話 天使の世界へ向かう戦乙女

 灰色の戦乙女(ジャンヌダルク)、そして黒色の堕ちた僧(ナルカミ)

 二機の悪魔は地震たちを操る悪魔乗りを乗せ、支部から飛び立ちます。

 新たに組み込まれた信号はゲートを開いてくれるとのことで、目指す場所はあのゲートがある場所。


「まだ敵はいないみたい」

「今のうちに……って言いたいところだけど」


 美月がレーダーを確認し、綾乃は不安そうな声を出します。

 それもそうでしょう。

 襲撃されないという事は願ってもない事ですが、敵の総数は未だ分からないのです。

 もしかしたら、こちらがゲートの情報を得ていると仮定し、この先で待ち受けているかもしれない……そんな不安はぬぐえませんでした。


「……ゲート、近くなってきたね」

「うん……美月、レーダーに反応は?」


 綾乃の質問に美月は「ないよ……」と口にします。


「……こっちにも反応はない、か……」


 綾乃の声を聞き美月は心配になります。


「不安?」

「うん、ゲートの向こうにいっぱいいるんじゃないかって……」


 気休めを言うつもりはありませんでした。

 例え、待ち構えていないとしてもそれなりの数が居ることは分かっています。

 だからこそ、何も言え無いなんてことはありません。


「生き残ろう……どんな手を使っても二人で……絶対に」

「そうだね……そうだよね!」


 二人がゲートに近づくと装置は突如光り始め、起動します。

 これでどうやら通れるようです。

 この先は天使(アンゼル)たちの巣窟……人類の敵の本拠地でしょう。


 二人はともにゲートに飛び込みます。

 するとそこには――。

 信じられない光景が広がっていました。


「な、なに……ここ」

「……ひ、ひどい……こんなの……」


 二人は思わずそうつぶやきます。

 何故ならそこは建物があったのでしょう、崩れ落ち、空と大地は赤く染まっています。

 草木は一本も生えておらず、まるで死後の世界。

 そう言ってもいい世界が広がっていたのです。


「これが天使の世界?」

「地獄だね……」


 そう言いながら辺りを見回すとどうやら人のような姿を見つけました。

 いえ、ほぼ地球人と同じといってもいいでしょう。

 モニタに移るその姿は誰もがガリガリとなり、お腹だけ異様に膨らんでいます。


「栄養が取れてないんだ……」

「これがあったから、地球を狙った?」


 そうだとしても疑問がありました。


「でも、地底人の人達の時代からだよね? だとしたらこの人たちはどのぐらいずっとこのままだったの?」


 すぐに助けられなかったのか?

 ほかに方法を考えなかったのか? それが疑問でした。

 美月たちは地上の人を見つめますが、彼らは空に浮かんでいる彼女たちに興味がないのか?

 それとも日常でしかないのか? いえ、それとももうそんな事を気にするほど気力がないのか……。

 気にするそぶりがありません。

 そんな中、彼女たちの目に移ったのは……。


「ねぇ、アレ……」

「普通の人?」


 そこには先ほど見かけた、人達よりも身なりが良い人です。

 それは美月たちの見慣れた人ではありませんでした。

 青白い肌に背の高い男女……ほっそりした身体には程よい筋肉がついておりしなやかでもあります。

 彼らは動かない人々を見るとおもむろに何かを取り出し……。

 それを投げ捨てます。


 人々はそれを見ると目の色をかえたのでしょうか? 群がっていきました。

 なんだろう? と眺めていると……拾ったそれを口へと運びます。

 どうやら食べ物だったようです。

 そして、青白い人々はそれを見ると這いつくばって食事をとる人達を踏みつけ笑い始めたのでしょう、空を仰ぎました。

 そして――。


「目が合った……きっとあれが天使だ」

「つまり、あの人たちは家畜同然……って事?」


 ふつふつと湧き上がるのは怒りよりも闘志でした。

 きっと彼らは地球以外にも侵攻をしていたのでしょう。

 そして、彼らはその敗北者なのかもしれない。


「皆をこんな目に遭わせられない!」


 綾乃はそう叫ぶと操縦桿をしっかりと握りなおします……。

 そして、その声に続き――。


「私たちが、皆を守るんだ……」


 美月もコントロールオーブを強く握り、そう決意を口にするのでした。

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