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62話 怒る戦乙女

 リーゼの治療を終えた美月はその足で指令室へと向かいます。

 そこには司令官である司が当然いるわけですが……。

 綾乃の一件、そしてレンの事からも彼がどうしても苦手になってしまった美月はノックをためらいますが、そうも言っていられません。


「……誰だい?」


 ノックをし、返事を待つ美月の耳に司の声が聞こえます。


「夜空です……」


 美月がそう答えると「入りなさい」と一言返事があり、それからは何も言ってきません。

 ゆっくりと深呼吸をした美月は扉へと手をかけ、中へと入ります。

 するといつも通り椅子へと腰を掛けていた彼は――。


「それで彼女の事かい?」

「……今ドイツの方と一緒にゲートの事を調べてくれています」


 そう伝えると彼は大きなため息をつきました。

 まるでそれでは遅いと言いたいかのようでした。

 それは分かっています。

 ですが、相手の兵器がゲートと予想がついているだけでも良い……そう思っていたほうが良いでしょう。


「敵はもう攻めてきている」

「私たちの機体は――!!」


 強化されました。

 美月がそう言いかけると――。


「ドイツの兵器を積んだみたいだね……確かに強力なものだ。だけどね、敵は天使だ……今まで人類が負け続けてきた天使だ」

「…………」

「良いかい? 負け続けてきたんだ……疑わしきは滅し、そして完全に勝たなければ意味がない」

「だから……なんですか?」


 勝たなければいけない。

 それは分かっていることです。

 最早人類に逃げ道はありません。

 もう天使に勝つしか安心して暮らせる世界はないのです。

 そして、それに協力してくれている仲間たちもいる。


「ゲートを早々に解明し、そして――奴らを倒し、地下の者も一掃する」

「……それが貴方のやり方ですか?」


 納得がいきません。

 それもそうです、地下から来たというレンは地上のために手を貸してくれています。


「そうだ、彼らが本当に居るか分からない、だが……分からない以上脅威でもある」


 言っていることは何となく理解できました。

 理解したくはない、そう思っても何故そう言うのかは考えられます。

 彼らについては謎ばかりです。

 ですが、行っていることが本当ならイービルを作る際彼らのお陰で出来たと言っても過言ではないでしょう。

 だからこそ――。


「私は、皆を助けたいです……地上も地下も……それに天使を追い出せたとしても人は減り過ぎました」

「…………」

「そんな状態で地球の人達同士で争いをするんですか?」


 あくまで冷静に……彼女は自分の考えを口にします。


「私はそんなのに力は貸せません……綾乃ちゃんだって、皆だって……」

「分からないのか? 君たちは兵士だ」

「なら、私はそれをやめますジャンヌダルクは私が奪ってでも持って行きます……」


 怖かった。

 彼女は震えていた……だが……決して口先だけではなかった。

 その時はそうしよう……その意思がしっかりとあったのです。

 もう、逃げるだけの自分ではなく……。

 自分の意志を通すための力と精神が彼女にはありました。

 そして、彼女はそれを支えるための大事なモノも得ていたのです。

 家族である母だけではありません……。


「面白いじゃないか夜空美月」


 突如として聞こえてきた声はその場にはいない人の言葉でした。


「盗聴をしておいて正解だ……その反乱祖国と共に私も乗ってやる」


 そう、それはクラリッサの声でした。

 予想だにしなかった返答に戸惑う美月でしたが、続く声に安堵を覚えます。


「ずるい! 私が先にメイユエに言おうと思ったのに!!」


 今度は中国に居るはずのリンからの通信です。

 そう、その場にはすでに彼女たちの手によって盗聴器が仕掛けられていたのです。

 当然今の会話は――。


「日本の司令には呆れたものだ」


 それはほんの少し前に聞いた女性の声でした。


「もし、君たちが離反するのであれば我々エーベルト社は全面を持って彼女たちの支援をするとおっしゃられております」

「さて、悪魔よ……分からないのか? 夜空が言っている通り地球人同士で争うべきではない、我々の敵は堕天使だ」


 挑発的な声に対し、司はため息をつくと――。


「ふむ、そうかい、なら好きにすると良い……私は一人でもやるよ……人類のためにね」


 そう口にし、拳銃を取り出します。

 思わず身を守るように美月は頭を抱えますが、銃声が鳴り響くと同時に――。


「きゃぁぁぁぁあああ!?」


 悲鳴を上げるのでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とてもスリリングです、次のエピソードを楽しみにしています
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