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58話 二人の戦乙女

 街を襲う天使(アンゼル)へと狙いをつけた二機の悪魔(イービル)はそれぞれの武器を構え、敵へと攻撃を開始します。


「美月!! そのまま撃って!!」

「うん!」


 綾乃の指示に従いトリガーを引いた美月のジャンヌダルクからは魔法の弾が放たれ……。

 天使へと吸い込まれていくように線を描きます。

 いくら強化をされたジャンヌダルクとはいえ、その愚直すぎる攻撃では天使は軽々と避けてしまいます。

 ですが、その背後に回ったナルカミは巨大な剣をその背へとたたきつけるように回り……。

 轟音を立て天使は街の外へとはじき出されました。


「美月、リーゼの反応は!?」


 日本はドイツのパラケラススを駆るリーゼロッテが守ってくれていたはずです。

 彼女の姿がないことに不安を感じた綾乃は尋ねますが……。

 美月が何度確認しようと友軍を表す光点は綾乃の者しかありませんでした。


「駄目……どこにもいないよ」


 正直にそう言うと綾乃が舌打ちをしたのが聞こえました。

 勿論美月に対して野茂じゃないのは分かっています。

 リーゼがいないことに焦っているのでしょう。


「とにかく、ここなら通信がつながるはずだよ。支部に連絡を……」

「そうだ! そうだね!!」


 美月の提案に綾乃は頷き、通信を繋げます。

 提案した美月自身も通信を繋ぎつつ、レーダーへと目を向けました。

 話に夢中になって天使に襲われました。

 では、笑い話にならないからです。


『綾乃さん、美月さん……戻られたんですね!』


 聞こえてきたのは懐かしくも感じるオペレーターの声でした。


「ただいま……それよりもリーゼは!?」


 綾乃はせかす様に訪ねます。


『今は支部の方で治療中です……天使との戦いで魔法を使い過ぎて……疲労したところを負傷したんです』

「そんな……」

「大丈夫! 私が――」


 自分なら治療が出来る。

 そう自身があった美月はすぐに支部へと向かおうとします。

 しかし――。


『駄目です! この支部はすでに天使たちに囲まれています。危険です!!』


 彼女は焦ったようにそう言い。


「なら殲滅するだけだよ!!」


 綾乃はその言葉に対し自信満々で答えました。

 そう、二人の機体はグレードアップしたのです。

 きっと天使を倒すことはできる。

 例えどんなに強い相手でも負けることはない。

 そう考えていました。

 そして……。


「美月、そうだよね?」

「うん! そうだよ!」


 二人は短い会話を交わした後、支部へと向かい飛び立ちます。

 目標は無数の反応。

 それは天使です……天使たちも敵が来たことに気がついたのでしょう。

 戦闘の準備を始めました。


「この距離なら――」


 綾乃はそう言うと巨大な銃を構え、トリガーを引き――。


「美月!!」


 信頼する彼女の名を呼びます。


「うん!!」


 美月はコントロールオーブを強く握り目を閉じると――。


『魔力増幅確認……』

『「テンペスト、展開!!」』


 魔法を唱えるのでした。

 それは暴風となりて、綾乃が放った銃弾をさらに加速させます。

 天使にとっては見えている範囲で行われた狙撃という物ほど避けやすい物はないでしょう。

 ですが、魔法を使われたら話は別です。

 銃弾は見事に胸を撃ち抜き……それは背骨まで損傷させたようです。


「行ける!! このまま数を確実に――」

「減らすよ綾乃ちゃん!!」


 対し二人は決して侮らず警戒をし、戦う事を決めたのでした。

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