53話 天使を狩る戦乙女
通された部屋で食事を終えた美月たちは言われた通り休むことにしました。
ですが、日本の事が気になり気が気ではありません。
「大丈夫かな?」
そう口にしたのは美月です。
すると綾乃も不安そうな表情を浮かべます。
「うん……わからないけど……」
きっと大丈夫。
そう言いたいのは分かります。
ですが、それはあくまで願いだという事も……。
「…………」
あのゲートが使われてしまえば襲撃を逃れることはできません。
そうなっていないよう願うしかないのです。
美月はゆっくりと綾乃の方へと向くと彼女の様子に気がつきました。
彼女は美月よりも不安そうにしているのです。
美月を守ってくれていた強い少女はそこにはいませんでした。
きっと彼女も普通の少女だったという事でしょう。
「大丈夫、リンちゃんもリーゼさんもクラリッサさんもいるんだから……」
そう、今の日本には世界が誇るマナイービル5機の内3機がいるのです。
それだけではありません。
量産型マナイービルも配備されています。
最早人類を守る最後の砦、そう言っても差し支えないでしょう。
そう思っていましたが、やはり不安なのは同じです。
すると部屋の中に響くのは女性の声。
「美月さん、綾乃さん! タイヘンデス」
先ほど案内してくれた人とは違いますが、ここの使用人のようです。
「どうしたんですか?」
まさか日本に襲撃が?
そう思った香奈たちは青い顔をするのですが……。
「中国、アメリカ天使の襲撃が……アルソウデス」
つたない日本語でそう伝えてくれた彼女の言葉に美月たちは目を合わせます。
日本が襲われる。
そう思っていたからこそ、驚きました。
天使たちの狙い……それは……。
「そんな! じゃぁ……」
「今日本から連絡入りました。そこにリン? とクラリッサが向かったって……」
「二人が向かった……じゃぁ、大丈夫、なんだよね」
そうは言いますが不安は残ります。
何故なら今日本にはリーゼしかいません。
美月たちが離れたこのタイミングで合わせたかのように各国への襲撃。
当然母国を救おうと動くでしょう。
「その、機体の調整はどのぐらいかかりそうですか?」
「ま、まだかかりそう?」
二人の質問には申し訳なさそうな表情を浮かべる女性。
ですが、マナ・イービルを持っている国へと襲撃を開始したという事は日本も襲われるでしょう。
「早くして……って言うのは簡単だけど」
「さすがに機体の事だし……」
妥協はしてほしくない。
それは二人の意見だった。
「急がせます。丁寧に……」
「「あ、ありがとうございます!」」
二人は彼女の発言に感謝を告げる。
その日二人は眠れなかったですが、それでも体を休ませるために瞼を閉じ過ごします。
これから日本が襲撃される。
そうなるかもしれないのに万全の状態でないというのは不安があったからです。
ですから、彼女たちは少しでも体力を確保するために休もうとしたのです。
翌朝……二人は少し疲れた顔を合わせると……。
「寝れなかったね……」
「うん……」
少ない会話を交わすと――スマホが鳴り響きます。
何かがあったのでしょうか……慌てて手に取ると……。
「綾乃ちゃん!!」
「これ……うそ、でしょ?」
着ていたのは緊急情報。
そこにはイービルがない国にまで天使が襲撃に出たという事でした。
アメリカの量産型が向かっているとのことですが……。
天使の戦力は徐々に日本に向けて集められているとの情報もありました。
「急がなきゃ……」
「でも、機体が……」
二人は焦りますが、どうにもできません。
その気持ちを抱えながら整備が終わるまで待つしかないのでした。




