52話 たどり着いた戦乙女
ドイツへとたどり着いた美月たちは嘗て訪れたリーゼの家へと向かいます。
すると、彼らは温かく向かいいれてくれました。
「ようこそ!」
以前会った男性は何処に行ったのでしょうか?
そう思いましたが、美月たちに話しかけてきたのは女性でした。
彼女は流暢な日本語で聞き取りやすく……。
「こ、こんにちは」
美月は彼女へとそう返します。
すると彼女はにっこりと笑い。
「旦那様は此方です」
と案内をしてくれるようでした。
ありがたいと思いつつ美月たちは彼女の後をついて行きます……。
以前も通った気がするその道を歩く中、考えるのは日本の事でした。
今こうしている間も危機に陥っているのではないか?
そう思うと気が気ではありませんでした。
しかし、焦った所で何も変わらないのもまた事実です。
今は状況を打破するためにレンをリーゼの父に会わせることが重要なのです。
通された部屋にはリーゼの父がおり、彼は笑みを浮かべると両手を広げ近づいてきます。
抱き着かれる! そう思った二人は身構えますが……。
彼の妻の手によってそれは杞憂に終わりました。
ほっとしつつもこれからどう話を伝えればいいのか? 彼女たちは迷います。
リーゼが居ないのでは通訳もできないと考えたのですが……。
「では、私はここで!」
笑みを浮かべて去ろうとする彼女を見て……。
「待ってください!」
そんな彼女を引き留めました。
幸いにも流暢な日本語です。
「通訳をしてくれませんか?」
美月はそう頼み込むと彼女は目を丸くし、館の主人へと目を向けます。
するとリーゼの父も頷き、何かを伝えました。
美月たちにとっては何を言っているかもわからない言葉です。
しかし、彼女には意味が分かる言葉。
頷き、その場にとどまってくれるようです。
ほっとした二人はレンへと目を向けます。
「彼女が私たちの希望です」
そう伝えると女性はリーゼの父に美月たちの言葉を伝えます。
「そうか……では、こちらで丁重にもてなそう」
「でも、あまり時間がないかもしれない、もしかしたら日本に敵が……」
攻めてくるかもしれない。
そう伝え、そのままとんぼ返りをしようと考えていたのでしょう綾乃は……。
「だから後は――」
「ああ、待つんだ。少し休んでいきなさい」
「え?」
通訳を通じ、伝えられた言葉に美月は目を丸くします。
「休んでって……」
今、敵が来るかもしれない。
そう言っているのにもかかわらず休めという女性。
「……そんなに疲れてないですし」
「休んでほしい理由はそうじゃなく……」
彼女はそう言うと笑みを浮かべます。
「イービルの武装を調整したのです」
「イービルの武装?」
彼女の言葉に綾乃は首を傾げます。
確かに香奈たちの武器はドイツ製です。
それも今香奈たちが居るリーゼの実家。
ここで作られたものでした……。
「……つまり、強化してくれる? ってことですか?」
香奈の言葉に頷き、女性は真面目な顔を浮かべました。
「これからあなたたちの言った通り日本は戦場になるかもしれません、それに備え……武器をしっかりと整えてください」
彼女はそう口にし、美月たちを見つめました。
美月たちは目を合わせると……。
「確かに、ここで準備はしておいた方が良いよね……」
「うん、向こうの襲撃のタイミングによっては戻れるとは限らないし……」
現状では支部に戻れないかもしれません。
戦力が減ったのは気がついているのかもしれないのです。
「戻った時に……もし戦いが起きてるなら」
「すぐに戦えるように!」
二人の決意を秘めた瞳をドイツの人たちも気がついたのでしょう。
声を高らかに上げ……。
「スタッフ達も張り切っていますね、では部屋に案内します」
彼女は笑みを浮かべ、美月たちを再び案内し始めるのでした。




