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49話 疑問を問いかける戦乙女

 手術が失敗した。

 司は簡単にそう言いましたが、美月たちはその意味を知っています。


「待って! それじゃあたしは?」


 なぜ生きているのか? そう問うのが普通です。

 何故なら適合手術に失敗するという事は死ぬという事だからです。


「ああ、正しくは適合手術は失敗した……だが、君は死ななかったと言った方がいいか」

「その理由は何なんですか!? だって……」


 おかしいですよ!

 美月はそう口にしようとしました。

 ですがその前に司は言葉をつづけたのです。


「ミュータント細胞は死滅した……」

「死滅?」


 そう聞き綾乃はその顔をどんどん青くしていきました。


「つ、つまり、もし美月にあたしの血を投与していたら?」

「影響はないだろう、実験として君から採取した血液をミュータント細胞にどのような影響を受けさせるのかを確かめた」


 彼はそう言うとため息をつき……。


「結果は何も起こらなかった……だが、君の身体にはミュータント細胞を敵と判断し攻撃する何かがある……白血球であることは分かっているが……条件が分からない」


 それ以上は……と彼は口を閉ざしました。

 ですが、意味が分かりません。

 ミュータントと天使。

 それがつながったのはつい最近です。

 もしも、昔から分かっていたのであれば……人々はミュータント細胞に頼ることはなかったでしょう。


「なんで……綾乃ちゃんは希望なんですか?」


 美月はあらためて問います。

 すると司は――。


「昔ある男が居た……そいつは私にこんなものを残したんだ」


 彼が手に取ったのは一つのUSBメモリーです。


「この中にはこんな画像が入っていた」


 そう言って映し出されたのは……。


「なに……これ?」


 天使のような人が人を襲い捕えています。

 そして、それは捕まえた人たちに何かを施しているようにも見えます。


「捕らわれた人がミミズのような物を体にいれられて……」

「恐らく、ミュータント細胞だ……そして、この後を見てくれ……」


 人と天使は戦いをはじめ、人は敗北、そして……その先に描かれていたのは……。


「地下に住む人? ……それに、これ」


 人類は地下に潜り、過ごしている。

 ですが……一人の人が地上に出てきているのです。

 そして、空から現れた新たな人……その中の一人と恋仲になっているような絵が描かれていました。


「どういうこと……?」

「恐らく、夜空君、そして私の祖先は宇宙から来た新たな人類だ……そしてこの絵の中で魔法やミュータントに殺された描写はない。つまり地下の人間はミュータントへの耐性があった」

「……それじゃ、綾乃ちゃんは地下の人の血を継いでるってことですか?」


 おそらくは……そうつぶやいた司はゆっくりと頷いた。


「だが、地下の人間はミュータントを体の中にいれられている未知の存在だ……ずっと一緒に過ごしてきた綾乃はともかく、あの子は危険だと判断した」

「……だから、殺そうとした? そして、綾乃ちゃんは変化が無いから希望?」

「そうだ、天使を撃退してもミュータントがどんな影響を及ぼすのかは分からない、だからこそ今はその時の血清も必要なんだ」


 美月はその話を聞きため息をつきました。

 意味が分からないのです……。

 レンを殺そうとしたことも綾乃が希望と言われたことも……。


「意味が分かりません……子の絵だって昔の物語の可能性もありますし全部憶測ですよね? そもそも、その絵があったからと言って最初から綾乃ちゃんが希望というのも納得いきません! ミュータントが天使由来の物ってわかったのも最近なんですよ!?」


 そう訴える美月に対し司は……。


「最後の画像だ……手紙の画像と映っている手は友の死体だ……これは彼が残した直筆だろうな血に汚れて見にくいが……天使たちが我々に見せしめのために残したに違いない」


 その写真に写っていたのはたった一言、ミュータントは生物兵器という言葉でした。

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