表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/241

38話 支え、支えられる戦乙女

「それで……良いんですか?」


 美月は思わず聞きなおします。

 いいわけがない!

 そう思っていました。

 ですが、彼は頷き……。


「ああ……あいつが死ななければそれでいい……」


 そう口にするのです。

 美月には理解できませんでした。

 家族ならずっとそばに居たい……。

 そう思って当然だと考えたからです。


「……そう、ですか」


 だが、それ以上何を言っても無駄だ……そう理解してもいました。

 何故なら美月にもどうしたらいいのか分からないのです。

 どうやったら過去の記憶を取り戻せるのか?


 司と引き離し伊達と共に暮らせるのか?

 いや、そもそも暮らしたとして本当に綾乃は幸せになれるのかも分かりませんでした。

 幼い時に離れてしまった家族なのです……。


 その長い間のせいで家族としての生活はぎこちない物となるでしょう。


「話はそれだけだな……悪いな聞いてもらってよ」

「……いえ」


 美月はゆっくりと首を横に振ります。

 そして、伊達の方へと目を向けるともう彼は吹っ切れた様子でした。

 それでいい……そう言っているのです。

 それは嘘ではないことが分かるのです。

 美月はもう何も言えません……。

 ただ一言を除いては……。


「絶対に綾乃ちゃんは守って見せます」


 誓いを立てる美月に伊達は目を丸めます。

 そして歯を見せて笑うと……。


「強くなったな、夜空!」


 そう言い始めました。

 果たして本当に強くなれたのでしょうか?

 それは分かりませんでした。

 ですが、美月の中で何かが変わったのは事実です。

 なので彼女は……。


「ありがとうございます、でも私はまだ弱いですよ……きっと綾乃ちゃんたちが居ないと崩れちゃうぐらいには……」


 そう伝えます。

 すると伊達は首を横に振り……。


「ああ、そいつが分かってるから強いんだよ……忘れるんじゃないぞ、お前は皆を支え皆に支えられてるんだ」


 美月は目を丸めます……ですがすぐに微笑み頷くのでした。

 そして彼女は自身の機体であるジャンヌダルクの元へと向かいます……。


「…………」


 そこには死んだ新谷の機体であったコピスのパーツも使われているのです。

 触れると不思議と温かいのは昔から一緒でした。


 私は皆に支えられてる。

 勿論この子にも……。


 イービルはただの戦闘兵器。

 そう考えるのが普通でしょう。

 それでも温かいと思うのは何故なのか? 美月はその理由は何となく考えていました。

 ジャンヌのお陰で救えた命がある。

 だからこそ、香奈にとってはただの兵器ではなかったのです。


「……頼むぞ、死ぬんじゃないぞ」


 伊達がそんな事を言い、美月は振り返ります。

 そして、笑みを浮かべ再び頷きました。

 こんなところで死ぬわけにはいかないのです。

 ましてや、死んでしまえば綾乃は支えを失うでしょう。

 その後の事は考えたくもありませんでした。

 だからこそ、彼女のためにも死ねない……。

 美月はそう考えていたのです……。


「分かってます。どんな手を使っても生き残って見せます」


 言い方としてはどうなんだろう?

 美月はそう思いつつ伊達に伝えました。


「おう……」


 すると伊達は笑みを浮かべました。

 彼も彼なりの悩みがあった……ですが、どうやら美月と話区切りはついたのでしょう。


「じゃぁ、頼むぞ……あいつの事」

「うん……それじゃ、部屋に戻りますね」


 美月は頷き綾乃が居る自室へと戻ろうとハンガーを出ます。

 振り返るとそこには見送る伊達の姿とイービルジャンヌダルクの姿がありました。


 ゆっくりと前を向いた美月はしっかりとした足取りで部屋へと向かいます。

 天使との戦いは相変わらず怖いと感じました。

 それでも仲間が居ることで彼女の足元はしっかりしていたのです。

 だからこそ、今まで支えてくれた綾乃を支えたい。

 そう思うのでした……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ