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36話 支えたい戦乙女

 綾乃は暫く伊達の顔を見つめていました。

 しかし、ぽろぽろと涙を流し始め……。


「な!?」


 泣かれてしまった事に驚いた伊達は思わず声を上げます。

 どうしたらいいのか分からないのでしょう。


「お……」


 そんな彼に対し綾乃は声を上げようとします。

 ですが、顔を下に向け……。


「もう、なにがなんだか分からないよぉ……」


 頭の中がぐちゃぐちゃになっているのでしょう。

 美月はそっと寄り添い。


「私の部屋行こう?」


 伊達が居るこの場では綾乃が落ち着かないかもしれない

 だからこそ、美月はこの場から話そうと考えたのでしょう。


「……うん」


 美月の声に反応し彼女は首を縦に振りました。

 よろよろと立ち上がった彼女は美月に縋りつき歩き始めました。

 歩く中、美月は伊達の方へと目を向けました。

 彼は自身のふがいなさを感じているのでしょう……。


「……その、落ち着いたら話が出来ると思うから」


 伊達は悪くない。

 それが分かっているからこそ美月は何も言えませんでした。

 綾乃の気持ちもなんとなくはわかったのです。


 もし自分の母が母ではない。

 更には近くに居た人物こそが本当の母と言われたらどうなるか?

 頭の中はぐちゃぐちゃになってしまうでしょう。

 何を信じたらいいのか分からない。

 そう思って当然でしょう。


「ごめん、ごめんね、美月」

「大丈夫、だから……ね?」


 ここまで弱弱しい彼女を見たのは初めてです。

 だからこそ、美月は自分がしっかりしないと……と考えるのでした。




「……俺はなんて声をかけてやったら」

「答えなんかわかるはずないだろう……」


 伊達の疑問に答えるのはクラリッサです。

 彼女も事の複雑さは理解していました。

 だからこそ、そう答え……。


「だが、これから先お前と暮らす可能性も今生まれた……それだけは言えるさ」

「お前、まさかそれが狙いでこんなことを!? 何も今じゃなくてもだな……」

「なら、いつそれをする? あいつは今馬鹿犬より夜空の方に興味がある。そのうち愛情が偽りだと気が付くだろう」


 クラリッサはそう言うと腕を組み伊達へと目を向けます。


「そうは言ってもな……」


 伊達はそう言うと美月たちが去って行った方へと目を向けるのでした。







 部屋へとついた後、美月は落ち込む彼女をベッドへと座らせます。

 彼女が落ち着くまで……美月は彼女の傍に座り込みます。


「アタシ、どうしたら……」

「綾乃ちゃん……」

「……わかんないよ」


 泣きじゃくる綾乃を見て、美月は何も言えなかった。

 このままでは綾乃が壊れるかもしれない。

 だが、どうしたらいいのかは分からないのだ。


「……美月は違うよね? 美月は美月だよね」

「……うん、私は私だよ」


 美月は頷き綾乃の手を握ります。

 それだけでも、彼女の心の支えになれれば……そう思っていたのだ。


 それは綾乃にも伝わったのだろう。

 彼女は美月に寄り添うようにし……しがみつきました。


「…………」


 そんな彼女の行動に顔を赤くした美月。

 彼女は思わず固まってしまったが、それでも何とか冷静さを保ち、綾乃の背へとそっと手を乗せました。

 そして――。


「私はここにずっといるからね、どんな時でも綾乃ちゃんの傍に居るから」


 そして、美月は彼女へそう誓うのでした。

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