おまけ
カラン、鈴の音がして扉が開いた。
「シノくーん!」
制服を着た子が2人、嬉しそうに店に入ってきた。彼女たちはアイスコーヒーを運んでいる【高校生姿】のシノを見つけて、あっという間に取り囲んだ。
「今日もイケメン!」
「ねぇ写真撮って良い?」
「だめ」
「ケチー」
「はいはい席はそこね」
はーいと素直に返事をして、彼女たちは席に座った。
今ハートマークを出して見つめている相手が猫だと知ったら、彼女たちはどんな顔をするだろうか。カウンターの陣太は、ほとんどの席が埋まった店内を見回した。
不思議なカフェの件から5年が経った。大学卒業後、バイト先で修行しこの春めでたく独り立ちしたところである。
このカフェの名物は。
「にゃあ」
「虎ちゃん相変わらずかーわい」
愛想の良いトラ猫と。
「そんないい男だなんて当たり前のことを」
「白助戻ってこい、仕事しろ」
陣太はカウンターを叩いた。おばあちゃんと話していた青いエプロンの男が、舌打ちをして戻ってくる。
「全く、神使いが荒いんじゃないかい」
色白の伊達男と。
「陣太さん。4番テーブル、ランチ2つにアイスコーヒーです」
「はいよ」
バイト設定のため背は伸ばしたが、今日もボタンを留めてない黒髪の少年だ。
おかげでいつもカフェは賑わっている。
が、店員はいいのに店長が普通すぎると陰口を叩かれてもいた。
「お客さんいっぱいですねぇ」
うきうきとシノが空いた皿を下げる。その嬉しそうな顔を見て、陣太はその頭を撫でた。
「そうだな」
猫のカフェは今日も盛況です。