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未来の彼方  作者: 焔伽 蒼
開業学園編
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【第5話『保健室の事故?』】

「なあ九条、お前手加減って言葉を知ってるか?」



俺は現在、保健室にて自ら腕や腰に熱冷ましシートを貼って、その上から包帯を巻いている。


先ほど九条に合気道で投げ飛ばされ、それはもう盛大に投げ飛ばされ、勢い余って扉なんかも自らの身体でぶっ壊すほど投げ飛ばされたのだ。




「いや、確かにな?ノックも無しに扉を開けた俺も悪いけどさ。本気で投げ飛ばす事はないと思うんだよね」



九条は目を反らしている。しらを切る気か?


保健室に見舞いに来た奴が、保健室のお世話になると言うシュールな光景を俺に体現させた張本人様が。


俺がジト目で九条を見ていると、流石にシラを切るのを諦めたのか、転校生の方に逃げる。



「そ、そういえば調子はどうかな? 余波とはいえ、谷口先生の爆発で吹き飛ばされたんだし、頭とか打ってない?


「まてこら。確かにそっちも大事だけど、逃げるために利用したろ?」



俺が少しきつめに言う。勿論、本気で怒ってる訳ではない。半分冗談も入っていたのだが、九条は意外にもしゅーんと落ち込んでしまう。



「うっ・・・ごめんなさい……私が悪かったです」


「あ、いや、そこまで本気で怒ってる訳じゃないから。だから頭を上げてくれ、な?」



俺が焦った様子でフォローすると、「ホント……?」と上目遣いで言ってくる。

その仕草に俺はドキッとしてしまい、顔が紅潮していく。

そうだ!転校生の方は大丈夫かな!様子を聞いてみるとしよう!



「ちなみに私に注意しといて、転校生を口実に逃げる……なんて事はしないよね」



ば、バカな!心を読まれた……だと!?



「あと言っておくけど、心を読んだりとかしてないからね?」


「!?」


「意外そうな顔をしているね。一之瀬君は気付いてないと思うけど、焦ったり嘘ついたりしている時、必ず目を横に反らすんだよね」



なっ、そうだったのか……!無意識でやっている分、予知夢と一緒で直しようがないじゃないか!



「二人とも仲が宜しいのですね」



気付くと転校生がクスクスと上品に笑いながら、俺達の事を見ていた。



「あ、ごめんね。変なとこ見せちゃったかな?」


「いえ、見てて楽しかったです」



九条は少し頬を紅潮させていた。

かくいう俺も同じ為、なんとも言えない気持ちになる。


そんな中、扉があった場所から慶太が来栖先生と一緒に入ってきた。


そうだ。忘れてたけど、包帯とかどこにあるか分からなかった為、慶太に職員室まで来栖先生を呼びに行って貰ってたんだ。



「光司、大丈夫か?来栖先生連れてきたぞ」


「悪いな、慶太。だが一足遅かったようだ……」


「な、何……!まさか、手遅れだったってのか……」


「あぁ……あと少し早かったら、保健室を荒らさずに済んだものを……くっ」


「こぉら、“くっ”じゃないでしょ、“くっ”じゃ」



ほんの冗談のつもりだったんだが、来栖先生にチョップされてしまった。とは言っても相当軽くだが。


九条と転校生なんか、チョップされた俺を見て笑っている始末だ。


すると、来栖(くるす)先生は俺を確認するなり、せっかく巻いた包帯を取ってしまった。



「こんな雑な巻き方じゃ皮膚がかぶれちゃうわよ。やってあげるから、大人しくしていなさい」



来栖先生が俺の脚や腰回りを包帯で巻いてくる。


ヤバい、凄い緊張する。

サラサラな短めのポニーテールからは、フローラルな匂いがしてきて、下を見ると濃厚な胸が視界に入ってくる。


こ、これが大人の女性なのか!

男子が騒ぐのも分かる気がする。もし、こんな女性に迫られたら、あっという間に理性が崩壊するんだろうな。


等と冷静ぶっているが、もう耐えられそうにないため、顔を右側に反らす。



「またいやらしい顔している……」



反らした先には九条がいて、俺の顔をズイッと除き込んでくる。


九条のロングヘアーもさらっとしていて、とても良い匂いがしてくる。それに顔が近い。


俺は今まで以上に顔を紅くしていく。そろそろ、燃え出すんじゃないだろうか。



「いやらしい?男ってのは本能を剥き出してこそ、秘められた魅力が出るってもんだろ」



等と似合わずカッコつけてみたもの、余計に恥ずかしくなった。


何やってんだ、俺は。バカか?バカなのか?誰かバカと言ってくれ。


慶太がやっちまったな的表情をしているのがムカつく。


九条も引いているだろうと思って、チラ見してみると「そ、そうだね……私が間違ってたよ」と意外にも肯定。

あれ?と首を傾けるも、九条は顔を反らす。



「はい、出来たわよ。痛くない?違和感とかある?」



いつの間にかに来栖先生は包帯を綺麗に巻き終えていた。


相変わらず手当てが上手いと思う。流石は元医師だな。


来栖先生は、2年前まで阪東橋にある市大病院で医師を勤めていた事のある、女性では珍しいタイプである。

医師と言えば、普通は男性だからな。それに医師から保険医へ転職と言うのも珍しい。


何か理由があるのだろうか。



「家に帰ったら安静にしてること。もし痛みや痺れが再発してきたら、冷やすか何かで圧迫したりすると和らぐから」


「ありがとうございます」


「それじゃあ、もう遅いし帰宅しなさい。天王洲さんも大丈夫よね?」


「あ、はい。おかげさまで意識もハッキリしています」




へぇ、転校生の名前は天王洲(てんのうす)って言うんだ。なんだか凄い名前だな。

すると天王洲さんは気づいたかのように、こちらに顔を向けてキチンと姿勢を正して自己紹介してくる。



「申し遅れました。今日よりこの学園の2年C組でお世話になります、天王洲(てんのうす) (なぎさ)と申します。 分からないことだらけではありますが、仲良くして下さると嬉しいです」



天王洲さんは金色のロングヘアーにウェーブを加え、可愛らしい髪止めリボンをつけている。

背は俺より一回り小さいものの、くびれやふとももの肉付きが良い感じで整っていて、ホワイトニーソがより輝いて見える。

青白いキリッとした瞳とは裏腹に、その礼儀正しい態度は中々に魅力的だ。


まあ、そんなことは口が)けても本人には言えない。なので第一印象で感じたことを素直に言うことにした。



「可愛い名前だね、(なぎさ)って」


「え、えぇ!? あ、そ、その……ありがとうございます……」



照れてる姿が結構可愛い……だけど俺は学習している。このまま行くと、また九条の機嫌を損なう。

冷静にいつものスタイルを装った。



「天王洲……うそだろ……」



ん?何やら慶太が驚きの表情を見せている。よく見ると九条も口を開けたままポカーンとしていた。


なんだなんだ?二人とも何をそんなに驚いているんだ…?


……でも天王洲ってどこかで聞いたことあるような……。そんなことを脳裏に(よぎ)らせていると、九条が慌てた様子で俺にうながしてくる。



「い、一之瀬君知らないの!?天王洲って言えば、日本でも三指に入る超名家だよ!?」



聞いたことがある。

僅か一代で築き上げられた天王洲財閥は、軍事部門から政治部門まであらゆる財務をこなす大企業だ。


日本だけではなく、世界八ヵ国に会社を展開するほどの巨大財閥。


他に「鷺ノ(さぎのみや)家」「石動(いするぎけ)家」等が存在していて、それらを総称して御三家(ごさんけ)と呼ばれている程の超有名な財閥だ。


そんな天王洲の名前を持つ、転校生様ってもしかして……



「天王洲さんって、あの天王洲財閥の天王洲さんですか……?」



つい敬語になってしまう俺。天王洲さんは戸惑った感じに応える。



「は、はい。天王洲財閥で間違いないです。父のてた会社です」


「父……?てことは娘さん?」


「はい……」


「マジで?」


「え?はい、マジです……」



天王洲さんはなぜか申し訳なさそうに「すいません」と謝っていたが、そんな様子もお構い無しに慶太が会話に入ってきた。



「うっはー!マジかよ!天王洲さん、良いとこのお嬢様って事かぁー」


「す、凄い……そんな有名人の娘さんが、どうしてこんな学園に……」



九条がもっともな疑問を抱くが、横で聞いていた来栖先生が「こんな学園で職務する私って……」と呟いていたが、そろそろ保健室にいるのも邪魔だろうと考え、俺達は下駄箱に向かいながら話を進める。



「この学園に来たのは父が決めたことなので、私にも……すいません」


「いや渚ちゃんが謝る必要はないっしょ」



慶太が既に軽い呼び名をつけていた。その子供のような無垢むくさがたまに羨ましくなるよ。


天王洲さんは優しく微笑み、「そうですね」と返事を返した。





それから俺達は横浜駅まで一緒に帰った。途中、色々な話をしたりしていく内に、天王洲さんとも打ち解ける事が出来て、九条なんかは渚と呼び捨てにする程仲良くなっていた。


すでに18時30分。

5月とは言え、もう熱中症とかに掛かりやすい時期だ。それぞれが体調を考えて、早めに帰宅をしていく。


ちなみに天王洲さんと、慶太は帰り方面が一緒みたいで、戸塚駅まで乗ると別のバスに乗って帰っていった。


そして俺と九条は同じ方面なので、一緒に家に帰っている途中だ。というか隣同士だから最後まで一緒なんだよな。



俺達の住む町、舞岡は都会である横浜市内にしてはやけに田舎っぽいとこだ。

都会と都会に挟まれて田舎が存在するのも奇怪な話だと思う。


しかし自然も多く、動物も多く生息するから豊かな町であることは確かだ。


中には舞岡公園というのがあって、巨大な山を人が気軽に通れるように開講したもので、散歩とかにはうってつけの場所だ。住民の人々に取って、(くつろ)ぎの場となっている。


テレビ曲が取材に来たこともあったな。


舞岡のマイナス点と言えば、牛や豚の飼育所がそばにあるため臭いと言うのと、あまり出店やコンビニがないことだ。


それでも俺はこの町が好きだけどな。


そして俺達はいま、30分かけて舞岡に着いた。


行きと違って帰りは歩いたのだ。

バスも乗ろうとしたが、お金の問題で断念。俺も九条も家庭の事情で、金銭的に余裕がない。


そんな理由が生んだのは偶然か必然か、俺達は帰り道想像を絶するモノを見ることとなる。



次回へ続く!!


出来ました・・・!今日、投稿できました!


と思ったら!後書きを書いていたら日付がChangeしてしまいました(汗)

くぅ!時間め!KYだ!等と馬鹿な八つ当たりは置いときまして、後書きに入らせてもらいます。



今回で転校生の話が終わりました。この後も渚にはがんばってもらうつもりです。


そして次回はすこーしシリアスになるかもしれません。と言うのも、物語においてキーとなるフラグが出てくるからです。あらすじにも記してあるやつです。


といっても、コメディもあるのですが。

配信日は2日以内かと思われます。

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