第一章二節 高秋の訪問 その7
「まず術の前に、私たち神についてをお話ししなければなりません。まず神には、上位、中位、下位の大別して三つの位があり、生み出された時点で決められています。
そして、どこに位置付けられるかによって、備わっている能力の高さもある程度決まっています」
「確か東雲は、上位の神様として位置付けられているんですよね……?」
「はい」
「その上位の神様というのは、全体でどれほどいらっしゃるのでしょうか」
「そういえば、そこはお話ししていませんでしたね。正確な数は私も把握しておりませんが、上位の神が一割未満、中位の神が二割、下位の神が七割……と言ったところでしょうか。」
東雲の言葉を聞いた翡翠は、上位の神の少なさに驚きを禁じ得なかった。
「そんなに少ないんですね……。」
「加えてお伝えすると、同じ位に属する神の中でも力の強さに違いが出ます。中でも特に“陽“と“陰“を司る神は、別格と言われています。」
笑顔で翡翠に告げられた言葉は、翡翠にとって衝撃が強かった。
東雲が口にした『“陽“を司る神』という言葉。もしも東雲の纏っている着物の色が、司っているものを象徴しているのだとすれば。
「えっ……、ということは、東雲は……」
二の句が告げなくなった翡翠に代わり、その先は東雲が言葉を紡ぐ。
「はい。紛うことなく、私は別格に分類される神です。“陽“を司る神としてこの世に生み出されました」
____そういう大切なことはもっと早く言って欲しかった。
翡翠は混乱する頭でそう独り言ちる。
残念ながら、気品あふれる笑顔を浮かべている神様には届く由もなかった。
「話を戻しましょう。先ほど、神格によって備わっている能力の高さが決まると言いましたが、その能力とは行使できる術の数を指します。
具体的な数を示しますと、上位は七、中位は五、下位は三と使える術の数は決まっており、さらに言えば、術の内容はその神の持つ性質に準じます。」
東雲の説明に、翡翠は首を傾げた。
神様の性質や術に関しての知識がほぼゼロである翡翠にとっては、想像しにくい内容だったのだ。
せっかくならしっかりと理解したいと思った翡翠は、疑問を解消するべく東雲に問いかけた。
「あまり想像がつかないので、差し支えなければ具体例を教えていただけませんか?」
「そういえば、翡翠さんは桜から私たちのことについては詳しく聞いていないと仰っていましたから、想像するのは難しいですよね。思い至らず申し訳ありません。
私を例にするならば、私が使用できる術は肉体に作用するもの、時間に作用するもの、過去に作用するものをはじめとした七つです。それらは全て、私が司る“陽“が持つ性質を汲んでいます。」
「なるほど……。何となくですが、わかりました。今のお話を自分なりに咀嚼してみたので、聞いていただいて良いですか?」
「もちろんです」
即答した東雲は、袖にしまっていた右手を差し出して、先を促した。
「ありがとうございます。先ほど伺った、『蓮の花の生命を保つためにかけた術』は『時間に作用する術』であり、その術は東雲が『“陽“という性質を備えているために使うことができる術』__という認識であっていますか?」
翡翠の解釈を聞いた東雲は、目を弓形に細め、嬉しそうに何度も頷いた。
「おっしゃる通りです。無事にご理解いただけたようで安心しました。
____この話は、これから出会うことになる可能性が高い他の神にも通用する話ですので、できれば記憶にとどめておいていただきたいのですが」
翡翠に向けられた東雲の顔には、先ほどまで浮かべていた笑みは跡形もなかった。
普段とは違う鋭さを持った真剣な表情に、翡翠はただ頷くことしかできなかった。




