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平家物語・潮騒の残響  作者: 原田広


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捌. 異界と異国、二重の脅威

天皇のすげ替えという朝廷内の大混乱は、北条氏の威信を大きく傷つけた。京を制圧しようにも、六代(ろくだい)の異能に守られた新朝廷の周囲には、得体の知れない事件が頻発し、武士たちは戦意を喪失していく。北条氏は、西国での勢力維持と、京の混乱の対処に追われ、その兵力と資源が摺りつぶされる一方であった。

六代(ろくだい)は、この疲弊を決定的な破滅へと導くため、最終段階の復讐を計画。それは、「人ならざる者」の力と「人からなる異国」の力を組み合わせるという、前代未聞の策略でした。


六代(ろくだい)は、草薙の剣とクトゥルーの知識を使い、遠く海の向こう、広大なアジア大陸を支配する元(モンゴル帝国)に目を向けた。

「源氏は我らを海に沈めた。北条は今、海を頼りに安堵している。ならば、その海から、彼らが予期せぬ、絶望的な脅威を呼び込めば良い」

六代(ろくだい)は、鬼界ヶ窟(きかいがくつ)で得た知識の中の「次元の門を開く術」を利用し、直接、海の向こうの皇帝に「幻惑の波動」を送ることは不可能なのはわかっていた。しかし、彼には、世界をまたにかける邪神の力が、間接的に影響を及ぼす方法があった。


六代(ろくだい)は、異形の眷属の中でも特に機動性の高い「深海遊泳者ディープワン」を使役し、九州北部の海路を通じ、大陸に近い高麗(こうらい)へ向かわせた。

高麗は、すでに元の支配下にあり、日本侵略の足がかりとして利用されている。六代(ろくだい)の眷属は、高麗王とその側近たちの『夢』の中に潜り込み、幻惑の波動を注入した。

その幻惑は、以下のようなヴィジョンを見せた。

海の向こう「黄金の島ジパング」には、元の財政を一瞬で潤すほどの黄金が、何の守りもなく眠っているという、誇張された幻視。

日本の武士団が京での内紛により崩壊寸前であり、一蹴できるほど無力であるという、偽りの確信。

これにより、高麗の支配層は、日本侵略を「極めて容易で、極めて利益の大きい事業」であると強く信じ込むようになる。


高麗からの報告がフビライ・ハンに届いた際、六代(ろくだい)は、草薙の剣の持つ「神威の増幅」の力を遠隔で利用した。

六代(ろくだい)は、剣を通して、高麗からの「日本遠征を進言する書簡」が持つ『影響力』を増幅させた。フビライ・ハンがその書簡を開いた瞬間、その進言は、他のどの報告よりも「魅力的で、無視できない天命」であるかのように感じられるよう誘導した。

元の宮廷では、対日遠征の是非を巡って慎重論も多かったのですが、この時期、突然、主戦論が勢いを増し、「日本を征服せよ」という勅命が下るに至りた。

かくして、六代(ろくだい)の策略は、海の向こうの巨大帝国を動かした。

「我らは、壇ノ浦で海に沈んだ。今度は、その海が、北条と鎌倉を打ち砕くのだ」

六代(ろくだい)は、薩摩の隠れ里から、東シナ海を睨みた。海の向こうでは、高麗と元の大船団が、九州を目指し始めている。

北条氏は、朝廷の権威を失った状態で、今度は「国難」という、人の世の武力だけでは防ぎきれない、異国からの巨大な軍事力という二重の脅威に直面することになる。

六代(ろくだい)の復讐は、単なる一族の滅亡ではなく、国体そのものを揺るがす、歴史的な大動乱へと姿を変えたのだった。


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