2棟 9幕 巡る輪廻と闇夜の深淵 IV
「良し!行こう!」
腕鎧の位置を直し、大きく声を張る国橋先輩。
俺は国橋先輩に着いていきながら階段を登っていく。
ついに今日、俺たちはあの回廊の扉に入る。
どんな裏ボスが待ち構えているのか、
好奇心4割、恐怖6割。
階層が上がる事に人が増えていく。
皆覚悟した目だ。
講堂で待ってる人達の為に命をかける。
それが俺たち攻略組の役割なんだ。
そう自分に言い聞かせ、頬を両手で軽く叩く。
皆怖いはずなのに覚悟して来てるんだ。
俺も自分の命くらい張れなきゃ男じゃねぇ。
覚悟をして目の前を見ると、回廊に着いていた。
今回、ラストアタックが俺達のギルドだったから
このクソでかい扉を開けるのは俺達の仕事になった。
俺は震える手を扉に当てると、肩に手が置かれる。
びっくりして振り返ると大和が居た。
「力み過ぎだ。肩の力抜け。」
大和がゆっくり諭すと俺は大きく息を吸い、吐く。
邪念は消えた。
俺が大和に「助かる」と言うと大和は微笑み、
ゆっくりと扉に手をかける。
力を込め、少しづつ扉を開けて行く。
闇が少し、また少しと漏れていく。
人1人入れるまで扉を開けたところで、
俺は闇の中に入っていった。
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「さて、お手並み拝見と行こうか。」
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闇の中は某RPGゲームの冒頭で出てきそうな
王の間だった。
柱が6本、壁には灯り用の松明が幾つか。
そして、少しの段の上に王座が1つ。
そこには
タバコを咥えている、見た感じ80代後半くらいの
男が座っていた。
だが、俺は油断して近づく事などしない。
何故なら、
かなり離れているはずなのに、
その爺さんはかなり大きかった。
目視で言うなら2mちょいくらいはありそうだ。
それに腕も筋肉質だし、王座の両脇には
人1人より大きな大剣が左右に1本づつ立てかけている。
大和もあの爺さんをみて、固まる。
無理もない。
ゲーマーじゃなくてもあんなのとは殺り合いたくない。
大和が震える指を指して口をパクパクさせながら
言葉を紡いでいく。
「そ…それ…それって…まさか……ッ!!」
「タバコだぁぁ!!!!!!!!!!」
こっち来てから一番の喜びようだ。
半年吸って無いのが相当キたんだろう。
それを見て爺さんが乾いた声で笑う。
英語だったので当時は何を言ってるか分からなかったが、
戦いの後、大和に何を言っていたのか
教えて貰ったので日本語で書いていく。
「はっはっは!私に会っての第一声が葉巻か!
面白いガキだ!」
大和がふと我に返り、爺さんに質問を投げる。
(大和も質問のため英語で喋ってるけど、
便宜上日本語で書かせて貰うよ)
「あんた、どこの国のモンだ?
イギリスか?アメリカか?」
それに爺さんがタバコの火を消しながら答える。
「現代でU・Kと呼ばれている場所だ。
前回ここに来た肌の白い人間が言っていた。
その人間からこの葉巻も教えて貰った。」
「成程、道理で。
あんた、イギリス産まれの癖に
アメリカ英語の発音だからな。」
大和が俺に話を噛み砕いて説明する。
「つまりコイツは少なくとも英語が産まれる前…
大体1500年よりは前の人間…!!
もう何が来ても驚かないつもりだったのに、
とんでもねぇのがいたもんだ。」
その独り言に大和も「同感」と返していた。
爺さんがゆっくりと立ち上がり、こちらを睨む。
「ケルベロスが死んだのは分かってる。
だが今理解した。
お前らだな、奴を殺ったのは。」
大和はそれを聞いて不敵に笑い、煽る。
「ぴんぽーん!大正解!
正解者には地獄への切符をプレゼント〜!」
爺さんが豪快に笑い、剣を1本掴む。
「面白い!気に入った!名前を教えろ!」
大和も背中から直剣、腰から短剣を引き抜き、
構え、答える。
「烏丸 大和。」
「烏丸か!良い名だ!私はべズドナ!
かの神に深淵の冥王の名を受けし者!」
爺さん…「べズドナ」が名乗った刹那、
2人の剣が交わり、2人の想いが交差する。
「あちゃー…待てなかったか…」
杵鞭が入ってきながら頭を抱え、
大和の好戦っぷりに溜息をつく。
全員が来るまで待てなかった大和も勿論悪いのだが、
もうちょい早く入って来るとか無かったんですかね。
と、心の中で悪態をつく。
まぁそんな事は置いておいて。
あの双剣キチガイのせいでめちゃくちゃだが、
今この時から裏ボス戦が始まる。
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ベズドナの力強く、正確な剣を短剣でいなしつつ、
何度か斬りつけていく大和。
手応えは軽そうで何度も首を傾げる。
単純にアイツの火力が無いだけなのだろうが。
俺も見てばっかりは良くない。
俺達全員が武器をインベントリから取り出し、
ベズドナの元へ走り出す。
ベズドナがそれに気づき、横振りを繰り出すが
大和が回転斬りで弾き、俺の「クロススラッシュ」が直撃する。
だが、手応えがあるのに全く効いてるように見えない。
それに手応えもおかしかった。
浴槽に貯めた水を上から殴るように、
途方もないような手応え。
俺は舌打ちしながらバックステップで距離をとる。
それにしても、このジジイ強い。
大和の攻撃をいなしながら攻略組達を吹き飛ばす程度の素早さと、あの圧倒的な筋力。
体感、颯人の3倍はある。
攻略組で1番相手にしたくない人。
それを何度も考え、同じ結論が出る。
火力の高い大野や颯人?
ステータスの高い塚野や清水?
勿論その4人も出来れば殺り合いたくないが、
俺が殺り合いたくない相手、それは…
あそこでぐんぐんスピードを上げて、誰も着いていこうと思えないほどの速度でベズドナの全身を斬りつけている、あの双剣キチガイだ。
スキルありでの塚野を凌駕する速度。
あの速度で上から何発も差し込んで来る。
デバフで割合ダメージも入れてくるし。
だから、大和と互角以上の鍔迫り合いを繰り広げてる
ベズドナに俺はさっきから震えが止まらない。
勿論、ベズドナは何発か弾き損ねて喰らっているが、
それでもあのHPならその程度じゃ削り切れない。
大和もそれを分かってるのか、
さっきから表情が暗い。
そこに大野の炎魔法が直撃。
ようやく、奴のHPバーが動く。(ほんの数ドットだが)
大和が大野に親指を立てると、
大野もニヤけながらピースを返す。
「血が出るなら殺せる。
ってシュワちゃんが言ってたけどあれは異常だよ…」
と山口が零していた。
まぁ正直ちょっと怖い。
いやだいぶ怖い。
大和が弾き、大野が魔法を当てる。
たまに小川も。
それで出来た隙に俺達や大和が何発か入れて行く。
それを繰り返し、HPバーを1割程削った辺りだろうか。
奴が笑だす。
「ははははっ!!楽しいな!!
久々の戦闘は!!
歳は取りたくないもんだ!!
このような若者と肩を並べて戦いたかった!!」
「そりゃどうも」
と大和が返す。
「だが、もう遊んではいられないな。」
「ッ?!」
「私も本気で相手しよう。」
お久しぶりです、
霧ヶ峰藤五郎です。
ついに佳境に入った深淵編。
皆さんは2000歳の爺さんと戦って勝てますか?
私は無理です。




