ただいま、愛しのエルドリア!5
作者都合により大きく間が空いてしまいました、ごめんなさい!
このまま完結まで頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。
ちっとも馴染んでくれない、護衛のアリエル。
そんな彼女とどうにか友達になるべく、私は作戦を決行することにしたのでした。
「わかったわ、アリエル。なら、護衛として、ぜひ頼みたい任務があるのだけど」
「任務……!」
私がそう言うと、ずっと無表情だったアリエルの顔が、ぱあっと明るくなりました。
「なんでしょう、シャーリィ様! このアリエルに、なんなりとお申し付けください!」
なんて、心底嬉しそうなアリエル。
どうやら、彼女は人から頼まれるのが好きなようです。
ワクワクした顔で命令を待っているその姿は、まさにワンコ系。
彼女にしっぽがついていれば、それは今、千切れんばかりにブンブンと揺れていることでしょう!
なんにしろ、やってくれるというのなら好都合。私は皿から出来立てのお菓子を一つつまみあげると、そのまま彼女の口へと放り込んだのでした。
「これの、味見をして欲しいの。食べて、感想を言ってちょうだい。はい」
「むぐ」
アリエルは、突然のことに一瞬びっくりした顔をしましたが、口をもごもごと動かし。
やがて……キラッキラに、その目を輝かせたのでした。
「おい……しい……!」
そうつぶやきながら、サクサクとお菓子を噛みしめるアリエル。
そして、それをたっぷり味わった後、夢見るように言ったのです。
「凄い! こんな美味しい食べ物、生まれて初めて食べました! なんという名前のお菓子なのですか、これは!?」
「うふふ。これはね、『パイの実』って言うのよ」
パイの実。そう、あのパイの実でございます!
サクサク食感なパイ生地の中に、とっても甘いチョコレートを入れてじっくり焼き上げた、みんな大好き定番お菓子!
フォクスレイで囚われている時に、なんだか無性にこれが食べたくなりまして。
戻ったら絶対作るぞ! と、心に決めていたのでございます。
そんなパイの実は、何層にも重ねたパイシートの間にチョコを挟み、オーブンでじっくり火を通して作るのですが。
これが、火が通るとともにパイ生地がぷっくらと膨らんできて、もう見てるだけでたまらなく美味しそうなのでございます!
この光景を見られるのと、さらに焼きたてを食べられるのは、まさに自分で作った時だけの特権!
そう、こちら、冷やしたものも美味しいですが、焼きたてはもう別格。
外はカリッと、中はふんわりとした素敵なパイ生地。
それを噛みしめると、中からトロットロのチョコレートが溢れ出してきて、これがもうたまらん美味しさなのでございます!
ああ、素敵なパイの実。
この美味しさをこの世界に広めるのも、また私の使命なのでございます!
「これは、本当に素晴らしい……。これが、ウィリアム陛下だけでなく、フォクスレイの皇帝すら魅了したというシャーリィ様のお菓子ですか。まるで、別世界の品のようだ……!」
うっ。やだ、この子、結構鋭いとこ突いてくる……。
まあでも、甘い物を食べて幸せオーラを出してるところは、ローレンス様とよく似てます。
やはり、甘い物好きは家系なのでしょうか。
これからも甘い物で攻めるのがよさそうね、なんて思いながら、私は笑顔で彼女に言ったのでした。
「気に入ってくれて良かったわ。それはそうと、私のことを様付けで呼ぶのはやめてくれない? 敬語もなしね。これから長い時間一緒なんだもの、気軽にいきましょう」
「いえ、それは……むぐ」
生真面目な顔で応えようとしたアリエルの口に、もう一個パイの実を押し込む私。
そして、またもや頬を緩ませる彼女に、私はこう聞いたのでした。
「で、味の感想は? 甘すぎるとか柔らかすぎるとか、直すべきところがあったら教えて欲しいのだけれど」
すると、アリエルは二個目をじっくり噛みしめた後、考えた顔をし、しかしやがて、キッパリとこう言ったのだった。
「わかりません。とにかく美味しくて美味しいです。大好きです。それ以外は、なんとも言えません」
……どうやら、彼女に試食係を頼むのは、難しそうです。
◆ ◆ ◆
「……シャーリィ!」
そんなこんなで、アリエルを連れ立ち、メイドとしてのお仕事に明け暮れる私。
そして次の準備のために王宮の廊下を歩いていると、そこで突然、よく知っている声が聞こえてきたのでした。
「あら、アガタじゃないの。どうしたの? 慌てた様子で」
そう、それはわが友、宮廷魔女アガタの声だったのでございます。
声の方を振り返ると、いつもの魔女帽子に作業着姿の彼女が、声を上げ、慌てた様子で廊下を駆けくるのが見えました。
どうしたんだろう、と思っていると、彼女はそのままこちらにやってきて。
そして、驚くべきことに、ぎゅっと私にしがみついてきたではありませんか!
「良かった、シャーリィ! あんた、戻ってきたのよね? ここにいるわよねっ!」
「ええっ!? ど、どうしたの、アガタ?」




