田んぼ作り
「田んぼを作ろうと思う」
あー坊と夕食を囲みながらずっと考えてたことを言ってみる。
クロは仕事に行ってて、今はいない。
以前買った古い玄米にダメ元で水をあげてみたら芽が出てきたのだ。
もう少し育てた後、是非田んぼに植えて育てたい。
「タンボ?」
そうか、あー坊は田んぼを知らんのか
「田んぼというのは稲を植えるための土壌のことじゃ」
「稲って米ができるっていうあれか?」
「そうじゃ、水を溜められるようにせんといけんから大変じゃがの」
「ばあちゃんずっと米が食べたいって言ってたもんな」
そうなのだ。
生まれてこの方ご飯を口にしない日はない生活をしていたのに、ここに来て以来一切米を口にしてない。
もう、ご飯が食べたくて仕方がない。
ラナにも頼んでみたがいまだ良い報告はもらっていない。
無いなら作るしかない。作り方は十分知っておる。
とにかく米が食べたいのじゃ。発狂してしまいそうなのじゃ。
まずは田んぼづくりに欠かせない水源の確保
この家の横手には湧き水が絶えず湧き出ている場所がある
その水を受ける水槽が3段に連なっている。
一段目の水槽は、飲み水として使うのでなるべく綺麗にしている。
二段目の水槽は一番広く深い。水汲みするときはここからとっている。そして魔法石からでるお湯はここの水を使っていると思われる。どういう仕組みかはわからないがお風呂を入れるとかならずここの水が減る。
三段目の水槽は浅く踝くらいできており、わしはいつもそこで洗濯をしている。
そこからあふれ出した水は細い川をつくり山の下へと流れていた。
その川にそって田んぼを作ろうと考えている。
なるべく平そうな場所を選んであー坊と耕す。
水がたまるように土手を固め、水平になるように穴をほる。なかなかに大変な作業だった。なんといっても水が地面に吸い込まれていき溜まらない。
もっと粘土質なところまで掘り進めないとならないのか。
稲は作ったことあるが、「田んぼ」を作るのは初めての経験で何日も何日も試行錯誤を繰り返しながらがんばっていると、クロが仕事から帰って来た。
いつもなら、すぐお出迎えをしてあげるのだが、手も足もドロドロで出来そうにない。
そのことを詫びたら「気にしないで続けてください」とわしらの作業を興味深そうに眺めている。
お!ここらの土いい感じに水を含んで溜まるようになってきた。
鍬で水と土をかき混ぜる。
昨日の雨がいい働きをしたようじゃの
「もしかして、田んぼを作ってるんですか?」
これをすぐに田んぼと理解した!まだまだ未完ではあるがそれなりに形になってきているようじゃ
「おお!よくわかったの」
「どうしても米が食べたくての。自分で作ることにしたのじゃ」
なるほど、とクロは頷き
「それならもっと早く言ってくれたら良かったのに」
そういって微笑んだ。
「今度米を買って来ましょう」
なんと!?
「米が手に入るのか!?」
「ええ、この辺りはパンが主食なので少ないですが西の方では米作りが盛んなんですよ」
「僕もパンよりご飯の方が好きなので買ってきますね」
わしらは全身泥んこになりながら茫然と立ち尽くした。
クロ助の話は嬉しい。とても嬉しいのじゃが
今までの苦労は一体なんだったのか。
「もっと早く言えーーーー!!!」
あー坊が鍬をクロに向かって投げる。
絶対当たらないと考えてるのじゃろうが、あー坊よ少し過激じゃないかね。
クルクルと回転しながら飛んで来る鍬を予想通り軽やかに受け止めて見せたクロだったが、その受け止めた反動で鍬についてた土がべちゃりとクロにかかった。




