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夢の世界で魂を求めて -ソウルメイト-  作者: nusuto
第二章 ガルナドク解体作戦編
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第二十三話 消えゆく夢と共に(上)

 病室に戻るとメルマールがは大粒の涙を流しながら温かい手で俺を抱き、ずっと放してくれなかった。

「エルディア、もう行かないでよ!私のヒーローがいなくなるなんて嫌だよ!」

「すみません、でも俺はメルマールさんを失いたくないから戦うしかないのです」

「どういうことよ!戦わなければエルディアは命を失わず、ずっと私と一緒に平和に暮らせるわ。今からでも遅くないから、命を懸けることはやめようよ」

「ごめんなさい、無理です。俺がガルナドクを倒すまで戦い続けなければならないので、この手で倒すまで諦めません」

「でもエルディアが......!」

メルマールが「死ぬかもしれないから戦いから離脱してくれ」と泣き叫ぼうとしたとき、槍が窓ガラスを突き破り俺の目の前に飛んできた。槍は風の影響を受けずに一直線に、銃弾が放たれるように素早い速度で向かってきた。俺とメルマールのやり取りを無表情で見つめていたセレストは咄嗟に槍に手を伸ばし、

「光の壁よ、私達を恐怖から守りたまえ、シャイニング・ウォール」

と唱え、俺とメルマールの目の前に小さな光が1つに集まり、目の前に光り輝く壁を作り出した。壁は槍の攻撃を防ぎ、俺を守ってくれた光が消え去ると共に槍が地面に落ちた。

 また何者かが俺達を狙っている。俺はメルマールから手を解き、すぐに剣を取り出して戦闘態勢に構えた。すると今度は病室の壁を地面が大きく揺れるほどの爆発音と共に破壊し、灰と共に1人の女性が3人の目の前に立ち塞がった。女性は大きな胸やくびれを強調しているスリムな黒色の鎧に覆われ、先程襲ってきた漆黒の槍を左手で構えていた。胸下よりも長い黒髪を揺らしながら、誘惑するかのように笑みを浮かべた。

「エルディア、あなたはガルナドクにとって巨大な敵。あなたはここで死んでもらうわ」

女性が挑発するとメルマールが短銃を構え、怒りながら真剣な目で女性の頭に狙いを定めた。

「あなたは何者なの!エルディアの邪魔なんてさせないわ!消えなさい!」

「あらあら、怖いお姉さん。残念だけど、消えるのはあなたよ」

メルマールがトリガーを引き爆音とともに弾丸が勢いよく放たれるが、女性は左手で構えている槍を回転させて弾丸を弾き飛ばし、メルマールに向けて右手を突き出した。

「雑魚とは戦いたくないの、申し訳ないけどお姉さんには退場してもらうわ」

病室全体から黒色の粒が女性の右手に集まり、頭と同じサイズの黒色の球体を生成した。女性は上投げで黒色の球体を放つと、弾丸よりも高速に駆け抜けてメルマールの腹に激突した。

「キャー!」

メルマールが激痛を訴える悲鳴が病室全体に鳴り響き、黒色の球体は無数の粒に分解され、メルマールの体を全て覆った。セレストはすぐに状態異常を治す魔法を唱えようとするが、女性の攻撃が1秒速かった。なんと黒色に染まったメルマールから無数の粒がセレストに向けて発射され、セレストの両手を真っ黒に塗られた。セレストは今まで見たことがないほど焦りながら、

「魔法が唱えられない!こんな魔法なんて見たことがない!嘘だ、私が魔法で負けるなんて!」

と悲鳴を上げながら必死に魔法を唱えようと反抗するが、セレストも気色が悪い黒色の粒によって全身を封じられた。すると女性は俺を挑発するかのように色気を出しながら尋ねた。

「ねえエルディアお兄さん、お姉さんの命を懸けて戦わない?いいえ、雑魚共を懸けて戦わない?」

「ふざけるな、どういう意味だ?さっさと解放しろ!俺と戦え!」

「まあまあ、焦らないで。エルディアお兄さんをもっと絶望のどん底に突き落としてあげるから!」

女性は開いている右手を握りしめると、病室の天井を轟音と共に突き破りながら真っ黒に染まった人間が5人も降ってきた。必死に手を上げて助けを求める墨に染まったように真っ黒な体、認識したくはなかったが俺は5人の人間を認識してしまった。死の恐怖に怯えながら微動だに動かない人形になってしまったアリア、リル、クラーラ、エミ、そしてメイド姿のフローレンスだった!俺の仲間は全て女性によって囚われてしまった!一人ぼっちの俺は怒りと憎しみと共に剣を大きく振りながら女性に向けて衝撃波を放った。しかし女性は左手で構えている槍で轟音と共に襲ってくる風圧を一振りで押し返し、俺の攻撃を無効化した。


 今までの敵が小さく見えるほど圧倒的な能力者が目の前に現れ、怒りよりも失望の感情が上回ってしまった。一切弱点を見せず、魔法と槍捌きにより俺達は絶望に囲まれてしまった。女性は失意の俺に向けて槍を眼球に向けて笑いながら構えた。

「お兄さん、つまらないわよ。私はまだ遊び足りないわ、2人で楽しく地獄を楽しみましょう!」

女性は俺の右足を引っ掛け、地面に転ばされた。女性はにこやかに槍を俺の腹に突き刺そうとしたが、俺の右手が勝手に動き出し、虹色に輝きだした剣で槍を弾いた。女性は後ろにジャンプしながら間合いを取り、槍を右手に持ち替えた。

「へえ、あなたは魂の声が聞こえるのね。それならもっと絶望を教えてあげないとね!」

女性は地面を大きく蹴りながら体を回転させ、俺に再び向き合うと槍から黒い鋭い棘が襲ってきた。針よりも鋭利な棘は空気を揺らしながら飛んできたが、再び俺の体が勝手に動き出し、素早く体を起こして虹色に発光し続ける剣を大きく振って棘を弾き飛ばした。魂の声は俺に激怒してきた。

「エルディア!あなたが諦めてどうするの!仲間を救えるのは、あなたしかいなのよ!気持ちをさっさと入れ替えて!」

「だがこんな相手に敵うわけがない」

「それを乗り越えたから、今のあなたがいる!思い出して、危機的状況をあなたは幾度ものりこえたよね!この状況も張り切って乗り越えるわよ!隊長の私の力を限界まで使っていいから、絶対に勝つわよ!」

俺はアリアを奴隷商人から守り、ラデオアを倒し、ガルナドクの下っ端を追い払った光景を思い出した。これらは運ではない、俺が決して諦めずに勝利の奇跡を導き出したからだ!俺は心の中で支えてくれるフローレンスに感謝しながら、剣を女性の顔に向けて構えた。

「フローレンス、ありがとう。それと遠慮なく力を使ってやるから、後悔しないように覚悟しておけよ!」

「了解!これでこそエルディアよ!」


 しかし女性の猛攻は勢いが衰えず、反撃の隙を一切作ってくれなかった。女性は俺に向かって瞬足で病室を駆け抜け、左手から魔法で槍を生成し飛ばしてきた。さらに右手で構えている槍で何度も突きながら攻撃の手を緩めなかった。俺は銃弾よりも速い槍を剣で振り落としながら、女性の槍捌きを剣で防御するしかなかった。素早い攻撃に耐えるしか方法はなく、剣を振る動作を封印してきた。この戦いに飽きたのか、女性は攻撃をやめて、後ろへ大きくジャンプした。槍を左手に持ち替えた。

「そうだ、言い忘れてたわ。私の名前はライラ。元ゼルガンドの将軍わよ。死ぬ前に私の名前を憶えてね!」

「ゼルガンドの将軍がなぜ生きている?ゼルガンドは解体されたはずだ!」

「ガルナドクという優秀な魔導士に実験で余った魂を分けてくれたおかげで、私は闇に隠れながら生き延びたわ。そしてあなた達を悪夢に突き落とすために、この瞬間を拝むために再び光へ舞い戻ったわ!」

ゼルガンドの副隊長から『魔法の手紙を通して命令を受け取った』という言葉を思い出した。強力な魔法を使用できるライラなら何通でも魔法の手紙を出せるはずだろう。

「おい、ゼルガンドの将軍!今度こそお前達を滅ぼしてやるから覚悟しておけ!」

「ねえねえ、お兄さん、怒らないで。あなたは今すぐ私に命乞いするから!」

ライラは両手で槍を俺の目の前に構え、鋭い刃から病室の壁が粉々になるほど強力な衝撃を放ってきた。風圧は病室だけでなく広間まで広がり、あっという間に城内の壁を全て崩壊させた。


 俺は何とか虹色に光る剣で衝撃波を放って相打ちさせたが、城は瓦礫の山と化し、依然の堂々とした城の面影がなくなった。そしてアリア達を見失ってしまった。俺とライラはワイマル王国のように、何もない空間に空間に取り残させた。ディール共和国もワイマル王国のように消えてはいけない。恐怖に体が支配されそうになるが、血で汚れた手で剣を必死に握った。

「フローランス!」

「エルディア!」

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