第百十八話「仕組み」
「二人は寝たか?」
「うん」
リザに運ばれて、ある程度森の深い場所から抜けた僕たちは夜になると共に、ある程度の安全を確認してから野宿することになった。
リウンとリナを寝かせ、僕とウェニアは見張りをしている。
「貴様も休め。
最も消耗しているのは貴様なのだからな」
「グルゥ」
ーソウダヨー
「ありがとう。大丈夫だよ。
それに疲れてるのは二人だって同じだし」
二人は僕に休むように言ってきたが、気を失って休むことが出来た僕と違って二人は起きていたはずだ。
そのこともあり、僕は二人こそ休むようにと言おうとしたが
「言う通りにしろ。
我は既に休息を必要としない身だ。
それにリザも森の魔力で消耗を抑えることが出来る。
貴様に必要なのは休息だ」
「ぐっ……!
リザは何となくわかるけど、どうしてウェニアも?」
僕の異論は却下されると共に気になることが出来てしまった。
「休息が必要ないってどういうこと?」
魔物であるリザに関しては他の魔物、魔獣がそうだった様に魔力があれば体力の回復が可能なのは理解出来た。
「回復の魔法の仕組みを覚えているか?」
「え?うん」
ケルドさんに回復魔法を施した時の説明でも通常の生物ならば、代償に寿命を消費するが、魔力の高い生物ならそのデメリットがないことも説明された。
しかし、どうして今になってその話が出るのだろう。
「ある程度魔力を極めた存在は自然に漂う魔力を取り込むことである程度の生命維持の活動を代用ないしは促進に利用出来るのだ」
「はあ!?」
「声が大きいぞ」
「あ、ごめん」
衝撃的な発言に僕は思わず、大きな声を出してしまったが、ウェニアに言われてリナとリウンを起こしてしまう可能性を考えてすぐに冷静さを取り戻した。
「……そういうこと?」
「わかった」
冷静さを取り戻すのと同時にどうして、リザとウェニアに休息が必要ないという理屈になるのかを理解した。
魔物やウェニアみたいに魔力をある程度扱える魔族にとっては魔力というのは体の基になるもの、つまりは栄養同然だ。
直接、栄養をそのまま細胞に変換出来てしまえば、ある程度の休息や食事が不要になるのも道理だ。
同時に僕は思った。
「……あのさ、どうして、その……
魔族以外の人間ってそんな相手のことを迫害して敵に回すようなことをしているの?」
今まで、僕は魔族が人間たち相手にあそこまで圧倒しているのは魔法があっち側が優れている技術の差だと思っていたが、今の事実でそれ以外、いや、そもそもそれ以前の問題だと気付いた。
そもそも生物としての強さが魔族の方が上だ。
傷付いても回復して戦線復帰してくる、寿命も明らかに長い、加えて、休息を必要としないので単純に考えて睡眠時間を8時間として仮定すると、少なくとも活動時間が人間よりも30%以上多い。
そんな相手を長年どころか、千年単位で迫害して憎しみを募らせて敵に回す。
中には魔族にだって野心を持って(絶賛目の前に該当する人物)、世界を支配しようとする者はいるが、それ以外の存在も敵に回す行為で同調者すら作ってしまうのは明らかに愚かに感じてしまう。
僕は単純にそう考えたが
「怖いからだろうな」
「!」
ウェニアの言葉に僕は思い当たる節を感じてしまった。




