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プロローグ

初めまして。くろハムと言います。

今回は近未来の日本が舞台のSFなので、プロローグを読むと導入がスムーズです。次回が第一話になるので読み飛ばしても大丈夫です。

よければブクマお願いします。

 世界は、一度滅びかけた。


 温暖化による耕作地の減少、エネルギー資源の枯渇、止まらない物価上昇と経済の崩壊。資源と食料を奪い合う国家間の対立はやがて世界規模の戦争へ発展し、核兵器の使用が決定的な一撃となった。


 長い混乱の果てに、人類の人口は最盛期の十分の一にまで減少した。


 生き残った人々が最初に求めたのは、自由でも豊かさでもなかった。ただ明日も人類が存在していることだった。


 国家は人口を回復させるため、あらゆる制度を作り変えた。


 個人より家族を、家族より国家を、そして国家より人類という種の存続を優先した。


 その過程で一夫多妻制が復活した。


 より多くの子孫を残すことのできる男性には複数の女性を抱えることが認められ、反対に女性の権利は少しずつ削られていった。最初は非常時の特例だったものが恒久的な制度となり、やがて一部の女性は姓を失い、名前すら必要とされなくなった。


 人間には番号が与えられた。


 能力は測定され、教育内容が決められ、適性に応じて職業が割り当てられる。どこで働き、どれだけ食べ、どの程度の医療を受け、誰の遺伝子を次代へ残すのか。その膨大な選択の多くを、いまでは人間よりもAIのほうが正確に判断してくれる。


 少なくとも、そう教えられている。


 自由を失った代わりに、飢餓は減った。


 失業も減った。


 戦争も終わった。


 そして人口は、再び増え始めた。


 だから、この社会が間違っていると言う者は少ない。


 そもそも現在を生きる大半の人間は、自由だった時代を知らない。


 生まれたときから番号があり、生まれたときから役割があり、生まれたときから自分より優れた誰かが人生を決めてくれる。


 それが世界の正常な姿だった。


 K-SM-00821も、そんな世界に生まれた一人だった。


 彼女には姓がない。


 名前もない。


 それを不幸だと思ったことも、一度もなかった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

よろしければ続きを読んでいただき、忌憚なきご意見や評価もいただけますと幸いです。

なろうでは中々ニッチでシブいジャンルではありますが、面白く読んでいただけるように頑張ります。

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