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腹ペコ4兄妹ダンジョンに行く〜貧乏農家はお肉が最優先です〜  作者: 熾之


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1 肉が食べたい4兄妹



「肉が食いてぇ〜!!」



 長男の春斗ハルトが絞り出すように叫ぶ。もちろん、親達のいないところでだが。育ち盛りには肉なしの食事では物足りないのだ。腹が減っていなくても肉が食いたい。


 たまに鶏肉が食卓にあがることもあるが、皆が食べられるように小さく切られたうえ野菜と混ぜられており、ガッツリ肉を食べることはない。ほとんどは野菜が中心のメニューでとても健康的だが、子供達には不評だ。



「我慢しなよ。お腹空いたならおにぎりでも作る?」



 長女の夏希ナツキが言う。家族が農作業で忙しい時はお手伝いをするので簡単な料理はできるようになった。とは言ってもおにぎりや野菜炒めとか簡単な物だ。


 4兄妹で協力しながら家事をしているので皆同じくらい料理ができるのだが、それぞれ得意分野や好き嫌いがあるので、最近はやる事が固定されつつある。



「お腹空いてるんじゃないんだよな~。肉食いたいってだけで」


「わかる。俺も肉食べたい」



 次男の秋斗アキトも長男に同意する。次男はよく畑仕事のお手伝いをしているので食べる量も多い。やっぱり肉が足りないようだ。



「この間、野菜炒めに鶏肉入ってたからしばらくは肉なしじゃない?」



 三男の冬斗フユトはあまり我儘を言わない。言わないが誰よりも肉に執着している。何故なら肉を使ったおかずの日をほとんど覚えているからだ。まぁ、数えるくらいしか出てこないから覚えるのも簡単だが。



 ちなみに、夏希と秋斗は男女の双子だ。しかも全員が年子で、上から10歳、9歳、8歳となっている。長男は10歳の壁にぶち当たっており、長男に引きずられるように長女と次男もモヤモヤした日々をすごしていた。三男はのんびりマイペースに生活している。



「前に食ったって言ったって1週間以上前だろ。オレは毎日食いたいんだよ~」


「家は貧乏だからムリでしょ。私だって食べたいけど我慢してるんだからあんまり言わないでよ」


「俺、畑仕事すると肉食べたくなる」


「そんなの毎日じゃん。僕は我慢できるよ」



 ほぼ毎日こんな会話をしている4兄妹だが、親達には絶対に聞かれないようにしている。家の経済状況を察しているからもあるけど、一番の理由はこの話が父親を追い詰めることになるからだ。



 父が友人の連帯保証人になったのにはちゃんとした理由があったし、本来なら友人も返せるはずだった。


 父の友人は探索者として活動していてかなり稼いでいた。曾祖父の一斗カズトが病気になった時、当時かなり高価だったポーションをただでわけてくれたこともあり、我が家の大人達はその友人にとても感謝していた。


 友人のパーティーにいろいろあって大金が必要になり、金融機関に借金して何とか活動を再開したが、その時に父は連帯保証人になったそうだ。詳しくは聞いたことがないからわからない。


 順調に活動していれば2年で返せる額だったのだが、なんとパーティーが全滅、友人も亡くなってしまった。残ったのは借金800万円。


 活躍している探索者にとっては普通に返せる額なのだが、ただの農家にとってはかなりの大金だ。しかも子供が4人いて暮らしていくだけでもお金がかかるし、壊れたコンバインを購入したあとだったので貯金がなかった。現在は削れるところは徹底的に削って借金の返済に充てていた。


 亡くなった友人のことは4兄妹も知っていたので、こんな状況になったことをそんなに恨んだりはしていない。もう少し大人になれば違うかも知れないし、モヤモヤすることもあるけど、今のところはおじちゃんに会えなくて寂しいなぁと思うだけだ。そんなことを考えるよりも肉が食べたいってな感じだろう。



「よしっ、兄妹会議するぞ!」



 少しアホの子な長男の号令でお肉会議が始まる。特に議題があるわけでもないので、同じ話の繰り返しで終わることが多いが、それでも何かと集まって会議だと言うのが長男のお気に入りだ。



「ハル兄、宿題やってないでしょ。怒られる前にやっちゃいなよ」



 長女は9歳だが親の経済状況を理解しているようで、誰よりもお金に厳しい。兄弟達が無駄遣いしないようにいつもチェックしている。肝っ玉母ちゃん予備軍だ。



「ナツは宿題終わった?」


「終わってるよ。アキもやったでしょ」


「一応」



 次男はやる事はちゃんとやるけど基本的に面倒くさがりだ。兄妹の中で1番好き嫌いが激しい。好きなことは頑張れるけど、それ以外無関心だ。喋るのも面倒くさい時がある。



「僕もやったよ。終わってないのはハル兄だけだよ」



 三男はちょっと腹黒いし、末っ子を満喫しているような性格だ。姉には逆らわないが兄のことは上手く使おうとする。長男のことは愛すべきおバカだと思っているので、ちょっと優しく対応しているけど…。



 4人の性格はバラバラだが仲はいいほうだと思う。放課後に学校の友達と遊びに行くこともあるけど、4人で遊ぶほうが多いくらいだ。長女に逆らわない限り日々は平和だと言えるだろう。


 結局この日も意味のないお肉会議が開かれたようだ。



「肉が食いてぇ〜!!」




 長男春斗は「オレ」

 次男秋斗は「俺」

 三男冬斗は「僕」



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