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最終話 ~失意のお嬢様へプロポーズをした件~ 後編

 最終話 後編






「俺はお前と『兄妹』としての家族では無く『夫婦』としての家族になろうと思ってるんだよ」



 俺のその言葉に、美凪の目が見開かれる。


「兄妹では無く……夫婦としての家族……」

「まぁ、血の繋がった本当の家族なら結婚なんて出来ない。でも血の繋がらない義理の兄妹なら結婚することは可能だからな」


 俺がそう言うと、美凪は少しだけ視線を逸らしながら言葉を返してきた。


「で、でも……世間体があるじゃないですか……」


 ははは。お前の口から『世間体』なんて単語が出てくるとは思わなかったな。


「そうだな。俺もその世間体を気にした瞬間があったよ」

「…………あ」


 俺のその言葉に、美凪としても思い当たる節があったのだろう。

 彼女は小さく声を漏らしていた。


 そう。美凪の『誘い』に躊躇ってしまった時だ。


「あ、あの時にはもう既にこうなる事がわかってたんですか?」

「まぁな。俺にはお前と違って色々とヒントがあったからな」


 俺がそう言うと、美凪は少しだけ頬を膨らませながら抗議した。


「むー。だったら話してくれても良かったじゃないですか」

「確証が持てないことを話す気にもなれなかったからな。あれとはこっちも色々と準備をしないといけないことがあったからな」

「じゅ、準備……ですか?」


 疑問符を浮かべる美凪に俺は首を縦に振って答える。


「そうだよ。親父のことも大切だけど、やっぱりいちばん大切なのは自分のことだって気がついたからな。他人の都合や世間体なんかより、優先すべきは俺の事。ははは。俺としたことがこんなことを忘れてたなんてな」


 俺はそう言ったあと、美凪の目を見て言葉を放つ。


「さて、ここまで言えばもうわかるよな?」

「………………そうですね。わかりますよ」


 美凪はそう言うと、少しだけ頬を赤く染める。


 俺はそれを見たあと、小さく息を吐いたあと彼女の目を見つめる。俺の視線を美凪もしっかりと受け止める。


「美凪優花さん。聞いてください」

「はい。聞きますよ、海野凛太郎さん」


 俺はポケットから指輪が入った小箱を取り出す。

 それを見た美凪が息を飲むのがわかった。


「海野凛太郎は美凪優花を心の底から愛してます。優花。俺に一生お前のご飯を作らせてくれ。お前の眩しい笑顔と美味しいの言葉を死ぬまで俺に向けて欲しい」


 そう言って、俺は小箱を開いて指輪を差し出した。

 中には美凪の誕生石。ペリドットを嵌め込んだ指輪が月明かりを反射して輝いていた。


「ぎ、義理の兄妹が結婚なんて世間体……」

「世間体なんか気にするなよ。大切なのはお前の気持ちだ」


 俺がそう言うと、美凪は少しだけ俯きながら声を出す。


「……わ、私はめんどくさい女ですよ」

「ははは。知ってるぞ」


「し、嫉妬深い女です。私以外の女の子と話してるだけで怒りますよ」

「まぁそれも可愛いところだよな」


「う、浮気なんかしたら包丁で刺しますよ!!」

「お前より魅力的な女なんか居ないだろ?浮気する理由が無いな」


 俺が笑いながらそう言うと、美凪はこちらを見つめて言った。


「わ、私も!!貴方のことが大好きです!!」


 美凪はそう言うと、俺から指輪が入った小箱を受け取る。

 そして深呼吸をしたあとに俺の目を見て言う。


「美凪優花は海野凛太郎を心の底から愛してます。貴方に私のご飯を一生作ってもらいますからね!!美味しいご飯を作ってくれなかったら許しませんからね!!」

「ははは。一生努力するよ」


 俺がそう言うと美凪は指輪が入った小箱を俺に突き出してきた。


「貴方から嵌めてください」

「わかったよ」


 俺はそう言うと小箱から指輪をそっと手に取った。

 そして美凪の左手の薬指に指を添える。


「サイズは平気ですか?」

「ここだけの話。お前が寝てる時に採寸は済ませてる。急に太ったとかが無い限り平気だよ」


 俺が笑いながらそう言うと、美凪は頬を膨らませながら言葉を返す。


「むー!!太ったなんてことはありません!!優花ちゃんのこのパーフェクトボディはいつだって至高なんですからね!!」

「あはは。ごめんな、美凪」


 美凪の言葉の通り、俺が購入したプロポーズリングはしっかりと彼女の左手の薬指に嵌めることが出来た。


「綺麗です……」

「喜んで貰えて嬉しいよ」


 俺がそう言うと、美凪は少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべながら俺に言ってきた。


「本当に……私ばかりが貴方からいっぱい貰って……返しきれないじゃないですか……」

「俺もお前から貰ってるからおあいこだよ。と言ってもお前は納得しないよな?」


「はい。そうですね」

「なら……身体で払って貰おうかな?」

「…………え?」


 初めて俺と美凪が会った時に、俺が言った言葉。

 その意味を知って、美凪は頬を赤く染める。


「目を閉じろよ、優花」

「…………っ!!」


 俺がそう言うと、彼女は顔を真っ赤にしながら目を閉じる。


「俺がお前を絶対に幸せにする。約束するよ、優花」

「はい。これからもよろしくお願いします。凛太郎さん」



 夜の公園。月明かりに照らされて、俺と優花は初めての口付けをした。


 兄妹では無く、夫婦としての家族になる。


 その第一歩を、俺と優花は踏み出した。




 最終話 ~失意のお嬢様へプロポーズをした件~



 ~完~



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