6.悪魔令嬢は、魔法を練習する
よろしくお願いします
あの後、私とネモフィラちゃんの距離は無事開いた。喜ばしいことではないのかもしれないが、心底ほっとしている。クローバ様もその時のネモフィラちゃんに興味を持ったのかよく話しかけている
おかげで、私がかばった相手に婚約者をとられかけている悲劇のヒロインだ
「アザミーナ様。あの元平民の態度許せません。ここで注意しましょう」
「あの方、クローバ様だけでなくアドニス様とも親しくしているらしいわよ」
私はその発言を聞き流した。物語上いじめなくてはならないだろうが、乗り気にはならない。直接決別しているのだから必要ないだろう
「ほいほい、いじめの相談は先生のいないところでしなさい。アザミーナ様クロッカス侯爵から連絡が来たから来てくれ」
「グロニオサ先生、分かりました」
グロニオサ先生の後について廊下を歩く。二人で歩いているはずなのに自分の足音が孤独に聞こえてしかたない
「……何の用で呼んだかわかるか」
「さあ、さっぱり」
「数日前のことは忘れてしまったかい。魔法を教えるって言っただろう」
すっかり忘れていた。ずっと同じ問題ばかりに気をとられていて暗殺者に命を狙われていたことなどすっかり忘れていた。これから向かうのは、前世で言う職員室だ。ただ、一人一部屋与えられているところが違う
「もう、慣れてきただろうし。そろそろ次の月の新入生もくる」
「そんな時期でしたのね」
先生の部屋は意外にも片付いていた。茶色にまとめられている部屋の机の上には紫色のふわふわとした髪の毛を持った女の子の写真があった。柔らかそうで笑顔は癒される優しさを持っていた
「この子。きれいな子ね」
「そうか?」
きれいなのは容姿でなく、周りを包み込むようなどこまでも澄んだ雰囲気だ
もっとよく見てみようとするとその写真は伏せられた
「あんま、人の部屋じろじろ見ないの。さて基本は薬師魔法を扱うときと同じだ。魔法陣に魔力を流し込んで」
「魔力ってどうやって流すのかしら?」
「いつもやっているように注げばいい」
「いつも注いでなんていませんわよ」
話がかみ合わず、おかしいということになり試しに薬師魔法を使って見せることになった。いつも通りハンカチを用意して気持ちが安らぐ香りのする香油を作った。薬の応用だから難しいものでもない
「ちゃんと、魔法陣に魔力を注いでいるようだね…うーん、弱った」
「物心つく前からやっていたので理論なんて知らないですわ」
生まれたときから物心ついていたことはトップシークレットだ
先生は薬師魔法では使わない魔方陣を引き出しから迷うことなく取り出した
「この魔法陣で薬作ってみて」
「はい。できました…きゃぁ!」
確認するように顔を上げて先生を見ると殴りかかってきていた。顔をかばうように腕を出すが、それにさえ彼の手は届かずに止まった
「何だ、バリア発動しているじゃないか」
「先生!びっくりしたじゃないですの」
「だってぇ試せないでしょう」
「だってぇ、じゃありません」
こっちは心臓が飛び出すかと思うくらいびっくりしたのだ。殴り掛からなくても、軽く叩くだけでいいのではないのだろうか。おかげで先生の手は腫れている。塗り薬を合成して手を取る
「さわるな」
「先生。毒ではありませんほら手を出してくださいませ」
強引に手を取って薬を塗ってやる。薬に拒絶を示す人間がこの世界には多すぎないだろうか。いちいち説明するのも面倒くさい
先生はおとなしく薬を塗らせてくれた
「さて、次はどうするのかしら?」
読んでくださった方ありがとうございます
明日は午前8時に次話投稿します




