第二部 六話 教師
大体六時位だろうか、日の出と共に目が覚めた、俺は簡単な朝食を作り、食べながら、今日はどんな事を生徒たちに教えようか考えていた、やはり基礎体力などはレベルが上がれば自然と付いて来るので、足運びや、体重移動の感覚などを伝えようか、・・・だが俺に上手く教えられるだろうか・・・
ラウルに呼び出されてから一ヶ月が経っていた、俺は学園の教師というポジションに何とか慣れ始めてきていた、こんな平和で穏やかな生活も悪くはないと思った、しかし、やはり前の世界で起こった悲劇が忘れられず、心のどこかでは暗い炎がチリチリと今なおくすぶり続けている、だがシェリーのことを忘れる位ならこの体全てを燃やし尽くした方がまだましなのだった
グランド学園
「先生!、おはようございまーす」
「あッ黒井先生だ、今日はどんな授業ですか?」
通学路を歩いていると色々と声を掛けられる、俺はその一つ一つを丁寧に無視しながら職員室まで歩いていく、
職員室に着くと、柳先生が俺を待っていた、何でも今日の訓練は俺達戦士クラスと合同で行いたいのだそうだ、俺は別に構わないと言って、横をすり抜け様としたが腕を掴まれてしまう
「・・・何だ?・・・」
きつい眼差しで問うと、柳先生は歯切れの悪い顔をして聞いてきた
「黒井先生、君は最近魔法クラスと戦士クラスの仲が悪くなっているのを知っているか?」
「そうなのか?、俺は戦士クラスしか受け持っていないからよく分からんな」
「そうなんだ、戦士クラスは他のクラスを見下しているというのが魔法クラスの言い分で、実際戦士クラスの生徒たちはそういう態度をとっている、困った事に、君のせいというかお陰で実力は上がっている、それを責める気はないが、このままではいづれ他のクラスとも仲が拗れるだろう、・・・黒井先生、何とかならないか?」
「・・・要するに、調子に乗ったひよっ子共の鼻っ柱を折れば良いのか?」
「出来れば、合同訓練の最中に・・・」
そういう事か、OK、わかったよ、俺も勘違いしている馬鹿は好きじゃないしな
柳先生に全て了解したと告げ、俺は職員室に入っていった、さて、あの未熟者たちをどうしてくれようか
訓練場
訓練場に着くと生徒たちが整列していた、俺はさっき言われたことを聞いてみる事にした
「調子乗ってるんだって?、殻を割ったばかりのひよこが武の頂に立ったつもりか?、てめえら戦士は魔法使いや神官の盾だって事忘れてないか?」
そう言うと生徒たちは不満げに此方を睨んでくる
「お言葉ですが、僕たちは十分強いです、脆弱な魔法使い達に足を引っ張られたくありません」
「後衛職が脆いのは当然だろ、そんな彼らを守るのがお前らの仕事なんじゃねえの?」
「僕たちが言いたいのは、怠け者に足を引っ張られたくないということです、魔法使いたちは僕達ほど訓練してるんですか?」
「怠け者・・・俺が教えるまでステータスに頼り切った戦い方をしていたお前らはそれとは違うのか、それに、後衛職は後衛職で訓練してるさ、それを認めないなら、武術を齧った程度のお前らを俺は少しも認めない・・・・・・・・というのは嘘だ」
「・・・は?」
「別にお前らが誰を見下そうがどうでも良い、孤立でも何でもすればいいさ、どっちにしろ俺は認めないし助けないんだから」
「なッそんな、あなたは教師でしょう?!生徒を守る義務があるはずだ!」
「甘えんな、それと知ったことか、成りたくて成った訳じゃ無いんだよ、残念ながらな」
そうはき捨てると、話していた生徒は悔しそうに顔を歪めた、誰かに守って貰わないと戦えないなら、こんな学校来なけりゃいいのに、
「最後に一つ忠告してやる、仲間を蔑ろにする奴は、大抵碌な最後を迎えない、逆に仲間に蔑ろにされるからだ、最後の最後で裏切られるぜ」
俺の言葉を聞いた生徒たちは顔を真っ青にして俯いている、此処はもう一押しか
「此処で顔を青くするなら、魔法クラスに言って頭の一つでも下げて来い、今ならまだ許してくれるだろう」
一人が行き二人が行き、最終的には全員が謝りに行った、俺の中で意外だったのはステラも謝りに言った事だった、彼女も他のクラスを見下していたのだろうか?だがまあ、この一件は終わりでいいだろう、無駄な体力使わせやがってと、俺は心の中でため息をついた
ステラ 視点
黒井先生の言うとおりだ、私は何を勘違いしてたのだろう、顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる、凄く恥ずかしいし、ティナや他の子たちに申し訳ない、すぐに魔法クラスに行ってティナを見つけて、今までの行いを謝った、許してくれるだろうか?
「分かってくれたならいいよ、でもこんな事はこれっきりだよ?」
その最後の台詞の一刺しに私は怯え、何度も謝った、ティナは怒らせるとかなり長引くという事を改めて分かった
仲間の皆から許しを得た私は、先ず黒井先生に告げに行った、なぜかティナも着いてきたけど、理由は大体分かってる、彼女も黒井先生の事が好きなんだ、きっと、路地裏で助けてもらったその時から、でも、どうしよう、負けたくない、ティナだけでなく、他の誰にも、それは、きっと黒井先生のことを知りたい・・・ちがう、それだけじゃなくて、黒井先生の事が好きだから、その事をハッキリと自分自身で認められたから
だから嫉妬してる、私、最低だ・・・
ステラ 視点終了
ステラが初めての恋に怯え、嫉妬し、自己嫌悪している一方その頃、ティナも苦悩していた
ティナ 視点
ステラが謝ってくれた、それは嬉しいんだけど、許されたことを一々黒井君に伝えに行くのは・・・うん、気に入らない、何でかな?、なんて、卑怯な私、本当は理由も分かってる、私は黒井君が好きで、同じ様に黒井君を好きなステラが気に入らないだけ、彼女のことを許すって言ったのも真っ赤な嘘、本当はもっと苦しんで欲しかった、でも、そんな事を思ってる私が一番苦しめばいい、何でこんな汚い気持ちになるんだろう?ステラは親友だったのに・・・




