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第二部二話 達人対魔人

初めに静寂を破ったのは深紅の剣を持った魔人シュタラムだった

奴は高速で俺に近づき剣を振るう

俺はその姿を無感動な目で見ていた


その程度なら飽きるほど居たよ、俺はカウンターで奴の頬を薄く切り裂く

奴は一瞬何が起こったか分からないと云う顔をしてゆっくりと自分の頬を触る

その時初めて自分が切られたことを自覚したようだ


シュタラムはその秀麗な顔を憤怒に歪め、再度突進してきた

だが、感情に任せての攻撃など俺に当たるわけがない

俺は十分な余裕をもって、奴の攻撃をかわし、今度は逆の頬を切り裂いた


両頬を切られたシュタラムはその瞳に憎悪を滾らせ俺を睨んでくる


「情けのつもりかい?君は二度僕を殺すことができた、あんまり余裕ぶってると足元をすくわれるよ」

「・・・いや、ただ伯爵級の力を試したかっただけだ、それに、お前程度に足元をすくわれた所で、俺を超えられると思っているのか?」

「クッ減らず口を!」


奴は地上に降り改まって剣を構えた、だが俺にとってその構えは発展途上もいいとこで、はっきり言ってしまえば隙だらけだった

俺と奴との距離は恐らく五メートル前後、普通に走れば三歩で行ける距離だが縮地を使い一息で接近する


「なッ」


奴の顔が驚愕に染まる、次に苦痛に歪んだ、俺の持っている鋼の剣が深々と胸に突き刺さっていたからだ、

剣を抜くと大量の血飛沫が出てきたので後ろに後退、服を汚したくない

シュタラムは地面に倒れ、二度と動くことはなかった




柳先生Side


私は今物凄いプレッシャーと戦っている、あの紅蓮の髪を持った魔人が現れてから体が異様な緊張感に包まれ指先一つ動かせないでいた、だが私が恐怖や不安に苛まれることはなかった、魔人が主にプレッシャーを与えていたのは、私から遠く離れた位置にいる黒目黒髪の十四歳位の少年だったからだ

その少年は異様だった、魔人に睨まれていると云うのに眉一つ動かさず平然としている

魔人がその少年のことをマスタークラスと言っていた、だが、たかが武術を極めただけであそこまで余裕の態度をとれるものなのか、素人目には爵位持ちの魔人にたった一人の人間が戦いを挑むのは無謀に過ぎると思うのだが、、、もしも少年が戦いで苦戦するようなら教道官として援護しなければならない、だがこの絶望的なプレッシャーの中でそれができるとは思わなかった

私は少年の無事をただ祈っていた






私の予想を裏切り、少年は勝ってしまった、しかも終始余裕そうだった

しかし最後に見せたあの高速の移動術、あれはまさか伝説の縮地ではないだろうか?

スキルは金さえ積めばなんでも取得できるというものではない、レベル制限が有るし、発現条件を満たさなければならないスキルもある、そして全てのマスタークラスが殺された為に発動条件が全く分からない

ロストスキルと云う物まであるのだ、

縮地と言うのは五百年以上前にマスタークラスが使っていたというロストスキルだ

それをなぜあの少年は使えるのか

唯一残った達人の後継者か?それとも私が知らないだけで達人は結構いるのか?どちらにせよあれだけの戦闘力を持った剣士が国立に居るのはもったいない、、、何とかしてみるか



柳先生Side終了





辺りは静寂に包まれていた、魔人を殺したことがそんなにショックだったのか?周りは畏怖と恐怖、そして憧憬に満ち溢れていた

俺は近くの教道官にボスモンスターであるサイクロプスのドロップアイテムを見せて課題終了の手続きをした


「これがボスのドロップアイテムです」

「へ?、あ、ああ、見せてくれ・・・確かにサイクロプスのドロップアイテムだ、課題は終了とする」


教道官は少し戸惑っていたが律儀に仕事を果たした、これでもうやることは無くなった、、、、家に帰ろう

俺が家路に帰ろうとすると一人の教道官が立ちふさがった


「待て、少年、その武術、誰から習った?」


話しかけてきたのは私立の教道官だった

ショートの黒髪、目は鋭くきつい印象を与えるが十分に美人といえる、プロポーションも抜群で教道官と云うよりモデルみたいな女だった


「・・・お前誰だ?」

「うッ、失礼した、私は柳夕子、私立の教道官をしている、君の使った戦闘術に興味が有る、良ければ教えてもらえないか?」

「・・・メンドイ」

「いや、そんなこと言わずに、頼む」


そう言って彼女は頭を下げた、だが、俺は誰にも「武蔵流」を教えるつもりはなかった


「・・・・無理だ、諦めてくれ」

「そう言わずに、是非」


困ったな、彼女だけでなく周りの人間も聞き耳を立てている、俺はさりげなく周りを見渡し人並の少ないところを探し出した


「あんたの熱意は買うが、俺は誰にも武蔵流を伝える気はない、もう一度言うが諦めてくれ」


そう言って俺は彼女から離れ人波を突破した


人波を突破した俺は家へと帰り、寝室の中に入り布団をかぶって眠った

久々にぐっすり眠れた、、、悪夢は見たが










零!シェリーを殺して、今すぐに!

満身創痍のルーが叫ぶ

や・・めて


クロウが俺の体を操り呟く

これが嬢ちゃんの望みだよ

・・てくれ



さよなら、私のヒーロー

突き刺したクロウに殺されながら、シェリーが、、、、微笑んだ

やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお



「ぐううああああ!」


絶叫とともに目が覚める、、、、またあの夢だ、時計を見るとそろそろ起きなければ為らない時刻だった

俺は汗まみれのパジャマを脱ぎ洗濯機に入れると風呂場でシャワーを浴びる

風呂場で体を洗い、出てくると朝食の準備を始める、と言ってもパンを焼くだけだ

トーストを食べ国立の制服に着替えると部屋を後にした





学園に着くと至る所から視線を感じた、その視線には恐怖や好奇心が多分に含まれており、ウザったかった

校舎に入り教室のドアを開けると生徒たちが一斉に俺を見て何やらコソコソ小声で話し合う

俺はその視線全てを無視して自分の机に着き眠る体制をとった、と、誰かが話しかけてきた


「お、おはよう黒井君、昨日は凄かったね」


俺は顔だけ上げてそいつを見る、

何処にでも居そうな平凡な女の子だ、、、何の用だろう?


「・・・何か用?」


目を見てそう言うと、彼女は視線をウロウロさせ俯いてしまったが、やがて決意を決めた顔をして言った


「昨日のスタンビート、生き残れたのは黒井君のおかげだと思う、本当にありがとう」


そう言って頭を下げた後、そそくさと自分の机に戻って行った

彼女の名前が全く思い出せないが(失礼)、如何やら俺に感謝しているらしい、俺にとってはスタンビートを止めたのも魔人を殺したのも全て気まぐれだったのだが、それを伝えるのは面倒くさいし、伝えたら伝えたで何やら一悶着ありそうなので、無視して眠ることにした








全ての授業が終わり、帰り支度をして校門に向かうと、そこには見知った顔があった

黒髪をショートにし鋭い美貌に眼鏡を掛けたクールそうな女、ステラだった

彼女は俺を見つけると目の前まで歩いてきた


「こんにちは黒井君、早速だけど頼みがあるの」

「武術を教えろ・・・か?」

「話が早いわね・・・ダメかしら?」

「駄目だ」


彼女は断られることを予想していたのか、余りショックを受けた顔はしていない


ステラは俺の目を真っ直ぐに見て、問いただしてくる


「何故か、理由を聞いても?」

「・・・話して聞かせる義理はない」

「それでは納得できない、せめて何故教えてくれないのか、理由を聞かせて」

「あんたが納得するとかしないとか、俺には関係ない話だ、だが、まあいいさ、理由は時間的な物だ」

「時間的?」

「ああ、こんなことはあり得ないと思うが、何かの間違いであんたが人類最高の才能を持っていたとしても、武術を極めるのには数年じゃ済まない、少なくても数十年掛かる、その間俺はあんたに拘束される、俺はマゾじゃないんでね、縛られて喜ぶ趣味はない」

「じゃ、じゃあ基本的なことでも・・・」

「教えろってか?、ッたく、教えて教えてうるせー女だ、何で俺がそんなことしなきゃならねえんだよ、

俺はあんたのパパじゃ無いんだけど、」


そう言うと、ステラは悔しそうな顔をした


「お金には興味なさそうね、じゃあ、権力に訴えると云うのはどう?」


ステラは勝ち誇ったように言うが、間髪入れず、俺が返した


「権力や暴力に屈する位なら始めから武術なんぞやってない、話は終わりか?、なら俺は帰らせてもらう」


俺は彼女の脇を通り抜け、帰路に着いた、彼女は茫然とした顔で此方を見ているだけだった






家に着き、ドアの鍵を開ける、、、?、鍵が開いている!

俺はドアを蹴り開け室内を見渡す、そこにはビックリしているエルフが居た、、、確かティナとか言うエルフだ、、、玄関開けたら二秒でエルフ、、、どういう状況?

俺が突っ立って居るとティナは慌てて立ち上がり、頭を下げた


「勝手に入っちゃってごめんなさい、外で待ってようと思ったんだけど、管理人の人が中で待ってなさいって鍵を開けてくれたの、それで、その、とにかくごめんなさい、、、」

「・・・俺の家をどうやって調べた!此処に来た目的は何だ!」


俺の怒鳴り声を聞き、彼女は更に頭を下げる


「本当に御免なさい、此処の場所はステラが調べてくれて、、、いきなりお邪魔するのは迷惑かなって思ったんだけど、どうしてもお礼を言いたくて」


またあの女か、ッていうかステラも俺の棲み処知ってんのか?、引っ越す必要があるようだ


「お礼ってスタンビートの件か?」

「うん!、あの時は助けてくれてありがとう、すっごく助かりました」


彼女はニコニコ笑いながら話しかけてきた

礼を言いに?それだけの理由で俺の家に勝手に入り、俺のソファーに勝手に座っていたのか?

俺は猛烈な怒りを抑えながら、彼女を睨む、この怒りをぶつけようとした時、来客を告げるチャイムが鳴った

お次は誰だ!


「鍵は開いている!勝手に入ってこい!」

「・・・邪魔をする」


来たのは昨日演習から帰るのを邪魔した、確か柳夕子とかいう女だった、柳とティナが対面する


「あッ柳先生!どうして此処に?」

「ん?ティナ三回生か?君こそどうして此処に?」


ティナは柳に此処に来た理由を説明する、、、余所でやれよ!


「ほう、スタンビートの件で礼を言いに、相変わらず律儀だな」

「そうですか?ところで先生はなぜ此処に?」

「それは・・・黒井君、君に話があって来た」


柳は恐らくティナが俺の家に無断侵入していることを知らないのであろう、知っていながら律儀とか言っているならこの女もそうとうヤバイ


「・・・何の用だ?」

「うむ、実はな、君を私立グランド学園に迎え入りたいと思っている、そこで君の意見を聞きたい」

「断る」


俺が断ると、柳の顔は驚愕に変わった


「何故だ、授業内容も設備も全てにおいて我が学園のほうが優れている、君は強くなりたくないのか?」

「・・・あんたらに教わることなど無いし、設備も興味無い、それよりも三年で冒険者資格が取れる国立の方が魅力的だ、大体金は如何する?俺から絞り取るのか?」


そう言って反論すると、柳は微笑をたたえながら答えた


「金は問題ない、君は特待生として学園に来てもらう、勿論他の生徒と変わりなく設備も使えるし、寮にも入れる、金は一切かからない」


ドヤ顔で言ってるが、俺の話を聞いていなかったのだろうか、設備も指導も要らないと言ったんだが、、

そこにティナが割り込んできた


「私立で特待生なんて凄いわ、それに黒井君が来てくれれば皆のスキルアップにも繋がると思うし」


どいつもこいつも勝手なことばかり言いやがって、俺は興味無いって言ってるだろうが!少し意地悪してやるか


「私立に行ってもいい、、、」

「「本当か!」」

「だが条件がある、」

「じょ、条件?」

「俺を一年で卒業させろ、つまり、一年で冒険者資格を寄越せ」


俺がそう言うと柳は渋い顔をした、目論見が崩れ去ったからだろう、しきりに爪を噛んでいる


「結論から言えばそれは出来ない、少なくとも私一人では決められない、この話は一度持ち帰らせてもらえないだろうか」

「好きにしてくれ」


そう言うと柳は帰って行った、ティナは未だに居る、さっさと帰れよ


「あの、黒井君、さっきの話断っちゃうの?」

「・・・あんたには関係ない、と云うか、いつまでいる気だ?」

「あ、うん、じゃあ、帰るね、昨日は本当にありがとう、またね」


ティナが帰って行く、彼女は扉の前で一度止まり、振り返って深々と頭を下げ、出ていく


ふう、やっと帰ったか、だが安心は出来ない彼女たちは俺の家を知っているのだから、早々に引っ越さなければ

一人に成った自分の家で、俺は引っ越しの段取りを立てていた








次の日、俺は眠たい目を擦りながら学校に行き、教室に入る、教室には半分くらいの生徒が先に来ていて自由にお喋りしていたが、俺が入って来たとたん一斉に俺を見て、直後に視線をそらした

俺は自分の席に着き眠る態勢を取る、最近、学校に授業を受けに来ているのか、それとも眠りに来ているのか分からない今日この頃だった


それは午前の授業が終わり昼飯を食べているときに起こった


「連絡します、一年三組黒井零君、至急学園長室まで来てください」


・・・何か悪いことしたっけ、まあ、行けば分かるか

この時はそんな軽い気持ちでいたが、大間違いだった、もっと考えるべきだった





学園長室


コンコン


「はいりなさい」

「失礼します」


中に入るとそこには三人の人がいた

一人は勿論学園長、俺をこの部屋に呼んだ人だ、名前は確かシークとかだったはず

もう一人は柳夕子、、、、何で居んの?

最後の一人は全く面識のない人だった


俺が最後の一人を観察していると、シーク学園長が話しかけてきた


「黒井君、紹介しよう、彼女は柳先生、私立グランド学園の教師をしている、そして隣に居るのがグランド学園の学園長、ダット・ノルゲン学園長だ、挨拶しなさい」

「・・・黒井です」

「柳夕子です、二度目ですね黒井君」

「ダット・ノルゲンだ」


ダット・ノルゲンと名乗った男は一目で戦闘者と分かる体つきをしていた、身体中傷だらけで筋肉だらけだ、そして何故か俺を睨んでいる


「今日お二人が来たのは、黒井君、君の転校についてだ、なんでも君を引き抜きたいとか」


シーク学園長がもみ手でもしそうな勢いで、ダットにへりくだりながら話す、ここら辺が国立のつらい所か

そのダットは相変わらず俺を睨みながら(恐らく俺の出した条件が原因だろう)口を開いた


「黒井と言ったか?貴様のことは聞いている、なんでもたった一人でスタンビートを止め、伯爵級の魔人を倒したとか、その力が本物なら是非うちに来てほしい、が、何やら条件があるとか・・・」

「一年です」

「何?」

「一年で卒業させてくれるのなら、転校します」

「・・・そんなことは前代未聞だ、ふざけているとしか思えん、そんな条件は呑めん!大体たかが国立の生徒が我々私立に条件など出すな!どうしてもその条件を呑ませたいなら実力を示せ!」

「実力を示す?どうやって?」

「わしと勝負しろ、勝てたなら一年で卒業させてやる、だが、負けたなら転校の話は無しだ!」

「なッ、待ってください、学園長自ら戦わなくても・・・黒井君、君も意地を張らないで素直に転校・・・」

「いいよ、勝負しよう、ルールは如何する?」

「・・・・降参するか、気絶するまでだ」

「OK、安心しろよ、殺しはしない」


そう言うとダットは俺を一睨みした後、鼻を鳴らして立ち上がった


「シーク学園長、演習場を借りるぞ、国立にだってあるんだろう?演習場くらい?」

「えッあ、ハイ、此方です」


そう言って案内するシーク学園長、、、切なすぎる






演習場


ダットSide


わしは拳を演習用のグローブに包み開始の合図を待っていた、黒井とか云うガキは片手で木剣を持ち肩に担ぐという余裕の態度をしていた、若造が!舐めおって!


「双方とも準備はよろしいですね?」


柳教道官が聞いてくる、わしは頷くことで答え、黒井も無言で頷く


「それでは、、、、始め!」


開始の合図と共にわしは気功術でステータスを高め、ステップを踏みながら黒井に近づく、ある程度距離が縮まった所で一気に近づき拳の連打を放つ!


所で、全てのマスタークラスが殺されてから五百年、人類は本当に何の武術も生み出さなかったのであろうか?

答えは否である、ある者は古い文献を漁り、またある者は山に篭った、そうして積み重ねた五百年、その何月は例え黒井が本物の達人であったとしても馬鹿には出来ないはずだ、


この五百年は無駄では無かった、わしはそう思っとった


脇をしっかりと締め、拳に体重を乗せながら素早い拳打を何十と繰り出す、だが、黒井には一撃も入らない、あのガキは相変わらず木剣を肩に担いだまま、空いているほうの腕でわしの攻撃を捌き、いなし切ったのだ!

その技量の高さに戦慄する、一体どれ程の修業を積めばその域にたどり着けるのか、今のわしには想像もつかないがこのままただで負ける訳にはいかなかった


わしは奥義である雷化を発動する、これは戦魔術の一種で自身の纏う魔力(MPのこと)を電気に変え、AGIを雷速まで高める文字道理人類が積み重ねた五百年の努力の結晶である、また、身体中を雷電で覆っているため、攻撃時や防御時に相手に感電のバットステータスを与えることができる


これならあのガキにも一泡吹かせられるだろう、わしはわざと全力では動かず、ゆっくりと(あくまでわしの主観では)サイドステップを繰り返し、黒井が此方の動きを目で追っているのを確認すると、一気に速度を上げ、背後に回り込んだ



こんなことはあり得ない、わしは今黒井の背中を見ているはずだ、雷速で背後に回り込んだのだから当然だ、だが、実際には、わしと黒井は正面に向き合っており、ニタァと嗤う黒井と目が合っていた


「ば、馬鹿な!」


一瞬の隙、その意識の合間を縫うように黒井は空いている手をわしの胸に置いた、次の瞬間、スパアアンと云う音が体の中から聞こえ、まるで自分自身が爆発したかのような衝撃が走った


「ガッゴフ、ゴフ」


わしの口から大量の血が吐き出され、身体中から力が抜ける、一体何が起こったのか、何も分からないままわしの意識は暗黒に染まった




黒井零Side


「そ、それまで、勝負あり!」


柳が戦闘終了の合図を出す、俺は残心しながらそれを聞いていた

暫らく動かないダットを見ていたが柳が近づいてきたので話しかける


「このおっさん、すぐに治療しないと死ぬぜ」


それを聞いた柳は青い顔に成り、すぐに治療魔法を掛ける

俺はそれを横目で見ながら演習場を後にしようとした、が、ダットが息を吹き返し(タフだな)俺に疑問をぶつけてきた


「き、貴様、最後のあれは何だ!?それに、どうして感電しないんだ!」


無視しても良かったが、別段隠す事でもないため教えてやることにした


「あれは、浸透勁、体内に直接ダメージを与える技法だ」

「体内に、直接だと!、じゃ、じゃあ感電しなかったのは?」

「俺も戦魔術は使える、俺の魔力資質は無効化、簡単に言えばあんたの戦魔術は俺の戦魔術で無効化されたのさ」


俺の話を聞いたダットは信じられないと云った顔をして呆然としていた、そんなダットに俺は畳みかけるように告げる


「じゃ、一年で卒業の件、よろしく」


俺はそう言って演習場を後にした





午後の授業が終わり帰るために教室を出て校門に向かうと、昨日と同じ場所にまたステラが居た

またかよとうんざりする、だが人違いと云う可能性もある、どちらにしろ家に帰るには校門を抜ける必要があるため俺とステラの距離は縮まって行った


「こんにちは黒井君、今日はまた違ったお願いをしに来たの」

「違った?」

「ええ、君のことをお父様に話したら是非会いたいと仰って貴方の都合も考えず此処で待ってたの」

「俺は別に会いたくないけど?」

「そんなこと言わないで、是非来てほしいわ、じゃないと後悔するかもしれない」

「どういうことだ?、俺的には顔も知らないおっさんに会わなかったからと云って後悔する理由がない」


するとステラは、薄く嗤ってやっぱり気づいてなかったのねと言った

気づいてない?何に?

俺が戸惑っていると、ステラは何を思ったか自己紹介を始めた


「私の名前はステラ・フォン・クロストリア、私の父はアルガ・フォン・クロストリア、この国の国王よ」


その言葉を聞いた瞬間、俺はあらゆるシュミレートを思考加速を使い行った

選択肢は二つ、王の招待を受けるか否か、それに伴うメリットデメリット、さて、どうするか


ステラは俺の返答をじっと待って居る、少し緊張しているのか、唇が震えている

俺とステラの間には緊迫した空気が漂っている、俺は一つ溜息を吐き体から力を抜く


「・・・良いよ、だけど俺は礼儀を知らない、普通に国王にタメ口きくけど、それでもいいなら・・・」


その言葉を聞いたステラは、パアっと顔を輝かせた、そして俺の手を取り早速王宮に向かいましょうと言った

俺は彼女に手を引かれ(まるで迷子になった子供みたいだ)、近くに止めてあった魔道自動車(ガソリンの代わりに魔力で動く自動車)に乗り込む

ブオンと云う車特有の駆動音と共に、運転手が車を発進させた、ステラは俺の隣に座り喋りかけてくる、最初のクールっぽい雰囲気はどこ行った


「私のお父様は、確かに国王だけどあまり礼儀には五月蝿くない人だから安心していいわよ、所で黒井君はいったい誰から武術を習ったの?」

「・・・宮本武蔵」

「ン?んーと、そう、その人は今何処に?」

「・・・死んだ」

「・・・御免なさい、不躾だったわ、」

「気にするな、あの人の武は、しっかりと俺に受け継がれている、寂しさや悲しみは無い」

「・・・・」


それからしばらく沈黙が続いた、俺は窓の外の流れる風景を眺めている、右手は相変わらずステラに握られていた、別に逃げないのでいい加減放してほしい


「あ、あの・・・・」

「ン?」

「黒井君は装備にお金を掛けてないみたいだけど何か理由があるの?」

「・・・いや、ただ装備に金を掛けるよりレベルやスキルを取るのを優先しただけだ、資金が潤沢にあるなら装備もそれなりの物にする」

「そ、そう、な、なら今度私がプレゼ・・・」

「王女様、王宮に着きました」


ステラが何か言いかけた時、運転手が車を止め話しかけてきた、如何やら王宮に着いたらしい

ステラは若干顔を赤く染め、固まっている


「行かないのか?」

「えッ、ええ、行きましょう・・・」


ステラに手を引かれながら王宮に向かう、門には何人もの衛兵がいたが彼女の顔を見ると敬礼をし、道を開ける


「お父様は執務室に居ると思うわ、広いから迷わないよにね」


手を握られているのに迷うも何も無いと思うが、ちなみに、ステラの身長は170センチ位で俺は150センチだ、、、別に悔しくはない


「アルガ・・・君の父親はどんな人なんだ?」

「お父様?、そうね、一言で言うなら、面白い人ね」

「面白い?」

「ええ、黒井君も会えばきっと気にいると思うわ」

「ふーん」


俺の中で面白い国王というのは想像できなかったが、堅苦しいタイプでないことだけは解った、それだけ分かっていれば俺にとっては十分だった


暫らく王宮の廊下を行ったり来たりしていたが、如何やら目的の執務室に着いたらしく、ステラが歴史の感じるドアをノックした


「ステラかい?」

「はい、お父様」

「お客人も一緒かな?」

「ええ、一緒です」

「それは良かった、入りなさい」


ステラがドアを開ける、中は結構な広さで、いろいろな書類がきちんと片付けられており、国王の人となりが現れていた、その国王は真ん中に置いてある机に座っておりこちらを興味深そうに見ている、国王のルックスはかなり良いと言えるだろう、灰色の長い髪を後ろで束ね、柔和そうな瞳に眼鏡を掛けている、何処か学者の様な雰囲気をしていた


「初めまして、黒井君、私がこの国の王、アルガ・フォン・クロストだ、先日のスタンビートでは娘が世話になった、改めて礼を言わせてくれ」

「気にしなくて良い、俺は俺の好きなように動いただけだ・・・です」

「あはは、無理に敬語を使わなくても構わないよ、私は何の努力もせずに王と云う者になった、逆に努力を積み重ねて達人になった君を尊敬しているくらいさ」

「お、お父様、王が個人を尊敬するのは・・・それにお父様は良き王足らんとして努力しているではないですか」

「ふむ、それは賛否分かれるところだね、所で黒井君、今日君に来てもらったのはちょっとしたお願いを聞いてもらいたいからなんだ」


国王のお願いか、いったいどんな物やら、俺は人知れず警戒心を上げていた

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