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第二部 一話再誕

この迷宮都市で金や銀の髪を持ち、耳が長くヒスイの目をした人間がいれば、それはエルフです

此処にはさまざまな人種が居ますが、エルフはそうそう見かけません、だから彼らが必死になるのも無理も無いのかも知れません、はっきり言って凄く迷惑ですが


「なあなあ、ちょっとぐらいいいだろ?」

「そうそう、俺達と遊ぼうぜ」


彼らは自身がエリートであることを隠そうともせずに、ここいらでは有名な「私立」の制服を、お洒落だとでも思っているのか大胆に着崩し、にやにや笑いながら私に聞いて来ます、気持ち悪い


「すみません、時間が無いので其処を通してくれませんか」


それでも私は礼儀正しくお願いしました、たかがナンパに誘われたからと言ってむやみやたらに力を使えば、私の所属する学園「私立グランド学園」の看板に泥を塗ってしまいます、ですが彼らは私が下出に出たと思ったのか、ますます勢いを増してしまいました


「ちょっとぐらい良いじゃない、俺らエリートだし奢るぜ」

「もちろんその代わり今日は一日中付き合ってもらうけどな」


そう言ってぎゃはははと笑います、私はだんだんムカムカしてきました、どうして私がこんな奴らにと思っていると、一人の男の子がこちらにやってきます


「クズが路地裏で下らねえことやってやがるな」


その少年は二人に向かってそんな言葉を投げかけました、その言葉を聞いた二人は顔を赤くし少年のほうを見ました、よく見ると少年は黒目黒髪でとても可愛らしい顔をしていました、ですが来ている制服は「国立」の物でそれに気づいた二人は見下したような顔をして少年に言いました


「おいおい、国立の貧乏人が俺達に何の用だ?」

「金でも恵んでほしいのかよ、とっとと失せな」


その言葉を聞いた少年は二ヤリと壮絶な笑みを浮かべると一瞬で二人に近づき、蹴り飛ばしました


「ケンカを売るときゃ相手を見ろよ、クズが!」


私立のエリートを一瞬で倒した、うそ、ありえない事態に私が混乱していると、少年は満足したのか裏路地のさらに奥へと去っていきました


これがエルフである私ティナと黒井零との最初の出会いでした







この世界で強くなるには金が必要だ、レベルアップにも金、ジョブに付くのも金、更には加護や祝福を得るのにも金、世知辛いがこれが真実だ、そんな世界で俺は生きている、クロウに裏切られ、シェリーを失っても俺は生き続けていた、この学園迷宮都市で。


路地裏に入り何時もの道具屋に向かう途中奥から声が聞こえてきた

気になって覗いてみると一人のエルフが二人の男にナンパされていた、、、助けるか

俺はまず声をかけ注目を集めた後一瞬で倒した、近くでエルフの女が何か呟いていたが、気にせずに当初の目的道理道具屋に向かう、と、エルフの女が話しかけてきた


「あ、あの、助けてくれて有難うございます、正直杖も持ってなかったし助かりました」

俺は億劫そうに顔を向け気にするなといった

「い、いえ、そういう訳にはいきません!あ、あの、お名前は?あッ私はティナっていいます」

名前、名前か、、、

「黒井零、好きに呼べばいい」









俺が道具屋に入り必要なものを購入した後店を出ると其処にはさっきのエルフ、、、たしかティナ?が立っていた

よく見ると彼女の顔はとても整っていた

銀色の長い髪にヒスイの大きな目、そしてエルフには珍しい抜群のプロポーション

その彼女がジッとこちらを見ている


「何か用か?」

そう言うと彼女はビックっとした後顔を赤く染めモジモジしながら桜色のきれいな口を開いた

「あ、あの、黒井君は「国立」の生徒よね」

「ああ」

「どうしてあんなに強いの?あの二人性格は最悪だけど実力は本物なのよ」


彼女がここまでこだわるのには理由がある、この街には「私立」「都立」「国立」があり、順に高い、普通、無料となっている当然受けられる授業内容も違う、ほとんどの者が都立に行き金を持ってる商人や貴族は私立にいく、そして俺のような孤児は金のかからない国立にいく

例えば私立の生徒一人に勝とうと思ったら国立の生徒五人は必要だ、それくらい金を持ってる奴が優遇されるのだが、何事にも例外は存在する


「俺はこの世界のルールに則って強くなったそれだけだ、時間が無いんで帰らせてくれ」

「えッで、でも!」

俺はため息を一つつくと彼女に言った

「時間が無いとナンパを断ったあんたが、時間の無い俺の邪魔をするのか?」

彼女はうッと言葉を詰まらせた、その隙をついて自然に、だが絶対に捕らえられない速度で脇をすり抜ける

「じゃあな」

それだけ言って彼女と別れた





翌朝

目覚ましとともに目が覚める、俺は手早く顔を洗い国立の学ランを着ると部屋を後にした

学校に付く前にこの世界のことを説明しよう、この世界の名は金満世界ゼニゲールド、殆ど全てのことが金で解決できる世界だ、強くなるにも金、幸せに成るかどうかも金、そして、人を殺したとしても金を出せば罪を免除される、まあ後二つはともかく、強くなるのになぜ金が必要かというと、この世界では敵を倒しても自動的にレベルアップしないのだ、ちゃんとレベル屋に行って金を払いレベルアップしなければならない、スキルも同様、ただスキルにはレベル制限があり適したレベルでないと取得できない、例えば「鬼神の才能」というスキルがある、これはレベルアップのたびに高まるステータスにボーナスが付くというものだが、レベル5までにしか取得できない、レベル5といったら駆け出しもいいとこだ、普通は高すぎて取得できない、だが貴族や王族は違う、彼らはその有り余る財力によって、自分の子供たちにスキルを与える

この時点で圧倒的なアドバンテージを得るのだ、この世界がどれだけ金に重きを置いているか分るだろう

また学校もそうだ、金を持ってるエリート野郎の「私立」、中流家庭の「都立」、貧乏な「国立」これらは徹底的に区別される、授業内容も違うし、得られる知識も違う、噂では私立の生徒は毎日のようにダンジョンに潜り、レベルを上げ、好きなスキルをとっている、ジョブに関してもそうなのだろう。

国立ではそんなことできない、まず金が無い、スキルもジョブも取れない、レベルもなかなか上げられない、戦闘技術も教師が弱いため上げにくい、そんな中でなぜ俺がトップクラスの力を持っているかというと、アビリティー「アイテム空間」が関係している、以前の世界で獲得した貴重な素材や武器を売りさばいたのだ、それらの武器や素材は非常に高値で売ることができた、よって、俺はこの世界では五本の指に入る実力者になった、なぜ私立に入らなかったのか、それは、奴らのにじみ出る傲慢オーラに耐えられなかったからだ、ではなぜ国立かというと、まず金がかからない(無料)第二に授業をさっぼってもお咎めなし、更に三年で卒業でき、冒険者資格がもらえるからだ、以上説明終わり






校門を抜け校舎に入り教室のドアを開ける、今日の授業は何だったか、確かどこかの学園との合同演習だった気がする、面倒だな、寝ちまうか、

俺が机に顔を埋めた時、一部の男子たちが騒ぎ始めた


「おいおい、今日は待ちに待った合同演習の日だぜ!私立のお嬢様と知り合える大チャンス!、どんな子が来るのかなあ」

「きっと礼儀作法もしっかりしたきれいな子に違いないぜ、どうしよう、「あなたをお慕いしています」とか言われたら僕どうしよう」


男子たちが騒ぎ始める、それを見て女子たちが反論する


「たとえどんなに綺麗でも、国立を見下す人ばっかりだよ、間違ってもあんた達には惚れないから」

「ッていうか国立にもあんた達に惚れる奴いないから」


俺は五月蠅そうに眼を閉じる、暫くすると担任の先生がやってきた


「はーい、これから合同演習なので皆さんグランドに行ってください」


その声を聴き数名の男子が待ってましたとばかりに教室を出ていく、俺はゆっくりと立ち上がりグラウンドを目指す

グラウンドに着き眠い眼を擦っていると、不意に横から声をかけられた


「あ、あの!黒井君だよね、私のこと覚えてる?」


声のかけられたほうを見ると一人の美しいエルフが立っていた、、、誰だっけ?

俺は取り敢えず当たり障りのない言葉を掛けた


「えっと、痩せましたよね?」

「?いえ、あまり体重は変わってませんけれど」

「髪切った?」

「いいえ、切ってません」


めんどくさいな、もういいや


「、、、あんた誰、、、?」


俺がそう言うと、彼女はショックを受けた顔になった


「昨日、路地裏で黒井君に助けてもらった、えと、ティナです」


昨日?路地裏?、、、、ああ、あの時の!


「思い出した、で、そのティナさんが俺に何の用だ?」

「、、、、(ほんとに忘れてたんだ)、、、あの、黒井君も合同演習するんだよね?だ、だったら私と一緒にやってくれない?」

「嫌です」

「え!?だ、駄目?」


彼女は明らかにがっかりしていた、だが、俺は彼女と組んで演習する気はない、というか、ソロで行くつもりだった、けれども彼女はしつこく俺を誘ってくる


「今日は装備もちゃんとしてるし、絶対足手まといにはならないから、お願いできないかな?勿論私の仲間にもちゃんと紹介するよ、ね、お願い、絶対後悔させないから」

「嫌です」

「ええ!な、何でなのかな、私嫌われてる?」


俺はため息を一つつくと彼女にパーティーを組めない理由を説明した


「別に君が嫌いとかじゃない、ただ俺はソロで行きたいから、、、、」


その言葉を聞いた瞬間、何か思うところがあったのだろう猛然と反論してきた


「ソロなんて危険だよ!これは演習とはいえ(ダンジョンに潜り指定されたボスを倒す)毎年死者も出てるんだよ、悪いことは言わないからお姉さんとパーティー組みましょ」


俺がどう断ろうかと考えていると、一人の女性が近づいてきた、眼鏡を掛けたクールそうな女だ、が声を掛けてきた


「一人でどこに行ったかと思えば、年下の男を誘っているとはね、しかも振られている」

「ッちょっとステラ、誤解を招くようなこと言わないでよ」

「ずいぶん必死に粉掛けてたみたいだけど、誤解なの?ていうか、かわいい子ね名前は?」

「えッ?、えっと、彼は黒井君、昨日話した私を助けてくれた人よ、黒井君、彼女はステラ私の仲間」

「、、、黒井零、」

「ステラよ、よろしく、それで、何を騒いでいたの?」


ティナが事情を説明すると、ステラの顔が険しくなった、ステラは俺の目を見て忠告してくる


「黒井君、君がどれだけ強いか私は知らない、だけど迷宮では何が起こるかわからないわ、なるべくならソロはやめなさい」

「断る」

「そう、分かったわ、ティナ、行くわよ」

「え?ちょ、ちょっと待ってよ彼をこのままにしていいの?あなたも言ったけど迷宮では何が起こるか分からないのよ、パーティーに入れてあげましょうよ」

「、、、たぶん彼はソロでいることの危険性を十分に分かったうえで一人でいることを選択してるわ、だったら部外者である私たちが何を言っても意味がないでしょう、パーティーに入るか入らないか結局決めるのは黒井君なのだから」


いいぞ、クール眼鏡、もっと行け


ステラのその言葉を聞いてもティナは納得できないのかこっちをチラチラ見ている、これはもうひと押し必要かな


「俺はどこの誰とも仲間にはならない、一人で生きると、そう決めた」


その言葉が切っ掛けになったのか彼女は諦めたように肩を落とし去っていった

だが、いつの間にかできていた人だかりの連中は唖然としたまま動かない、、、邪魔だな


「おい、あいつ私立の生徒の誘いを蹴ったぜ」

「しかもあの人銀髪のティナさんじゃねえか、すげえ綺麗だったよな」

「あんな綺麗な人の誘い断るとか、何者だあいつ!」


周囲が騒がしい、さっさとダンジョンに向かおう

俺は周囲の人だかりを無視して一人歩き始めた



ダンジョン最終階層ボスの間


ステラSide


今私の目の前には馬鹿でかい巨体をした一つ目の巨人、サイクロプスがいた

サイクロプスは一つしかない瞳を狂気に滾らせ私達を睨んでいる、本来なら陣形を組み素早く戦闘態勢に入らなければ為らないのだが、私達にそんな余裕はなかった


「う、うそでしょ、サイクロプスはランクAAのモンスター、何でこんな初心者のダンジョンに居るのよッ」

「わ、解らないけど、とにかく逃げないと」


私が震えながら絞り出すようにそれだけ言うとジリジリと仲間達が下がり始める

タンク(壁役)のエミリー、女のドワーフで何時も冷静にチームのことを見ている彼女が震えながらも殿となってサイクロプスを睨みつけている

ヒーラー(回復役)のアマンダは床にへたり込みそうになるのを必死にこらえ、少しずつボス部屋から移動しようとしていた(ボスはボス部屋から出られない)

マジシャン(後方攻撃役)のティナは既にボス部屋から出ていて此方を心配そうに見ている

私は深く深呼吸をしてみんなにそっと告げた


「いい?私達では勝ち目がないわ、なるべく刺激しないようにそっと此処から出るのよ、そしてこの事態を教道官に知らせないと、、、」

「分かったわ」「わ、分かりました」

「わ、私はどうすればいいの?」


ティナが聞いてくる、私達の中では唯一安全圏に居る、そのことに猛烈な羨ましさと少しの苛立ちを感じながら、私は言った


「ティナはもしもの時のために撹乱用の魔術を準備しておいて!」


ティナが頷くのを確認してから私はこの中で一番プレッシャーが懸かっているエミリーを見た

彼女は一目見て衰弱していることが分かる様な状態だったが、それでも足取りはしっかりとしていて、数十秒後には全員がボスの間から脱出できた


私達は全員の無事を確認しその奇跡に感謝していたが、本当の地獄はここからだった






「早くこの事を伝えないと、ティナ全員を転移させて!」


ティナは分かったと頷いて転移魔法の準備に取り掛かった


「どの位で行ける?」

「十分、いいえ五分でやって見せる、皆近づいて!」


私達がティナを中心に集まると、とんでもないことが起こった


「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオガアアアアアアアアアアアア」


なんと、サイクロプスがこっちに向かってけたたましく雄たけびを上げながら走ってきたのだ

だが、問題はないはず、ボスはボスの間から出られない、恐らく通路とボスの間の間で止まるだろうと思った、とんだ勘違いだった


「うそッ」

「そんな」

「な、何で!?」


サイクロプスは居た、ボスの間を飛び出し、堂々と通路に侵入していていた


まさか、、、、、、、、スタンビート(大暴走)

私は、スタンビートについて思い出す、数日前に授業で習ったばかりだ


スタンビート


スタンビートに陥ったモンスター達は皆狂暴化して本来のランクより一つか二つ危険度が増す

スタンビートに陥ったモンスター達は本来出られないはずのダンジョンから出て近くの町や都市を襲う

そして、、、そしてスタンビート中は「ボスもボス部屋から出ることができる」


最悪だ、私達は此処で死ぬ、サイクロプスに一撃で殺されてしまう、私にとってその結末は神が定めた運命のように感じた、だがそうは為らなかった、一筋の黒い稲妻が私の横を通り過ぎた、その稲妻は死の運命など知ったことかと言わんばかりにサイクロプスに突っ込んでいった

そして稲妻はサイクロプスのこん棒の一撃を楽々躱すと、逆に片腕を切り飛ばした



「ギャアアアアアアアアアアア」


サイクロプスが悲鳴を上げる、あの巨大で強靭なサイクロプスの肉体に、決して高価な剣でない只の鋼の剣でサイクロプスにクリティカルな一撃を加えたのだ、私はマナー違反と知りながらその稲妻にスキル、鑑定(対象の情報を読み取る、人に使うのはマナー違反)を使っていた



名前 黒井零 職業 剣士 剣豪 剣聖 称号 武を極めた者 加護 無し レベル78


HP 82000 MP45000 SP79000


STR 1255 力の強さ、装備出来る種類と攻撃力に関係がある

ViT 1200 HPと防御力に関係がある

AGi 1000 素早さに関係がある

iNT 650 魔法攻撃力に関係がある

MiN 550 魔法防御力に関係がある

DEX 9999 器用さ、スキルの熟練度に関係がある※※の効果により最大値に為っている

LUⅭ 9999 運の強さ、クリティカルの発生に関係がある※※の効果により最大値に為っている


スキル

鬼神の才能 剣の理 カウンター スラッシュ 見切り 竜神の才能 怪力 鉄壁 神速 気功術 戦魔術 索敵 サーチトラップ 罠解除 剣技 明鏡止水 威圧 スカイウォーク 縮地 スニーキング


装備


国立の制服

黒いレインコート

鋼の剣

黒いスニーカー




な、何これ、、、

そこに表示された出鱈目な数値に私は一瞬気が遠くなった

まず職業は最上位、そしてレベルも高い、これだけでSクラスの冒険者並みである、だが最も異常なのはステータスのDEXとLUCだ、何だ!最大値って、伝説に出てくる英雄や怪物たちでさえ基本的なステータスの数値は2000から3000、一番高いものでも4500位なのに、スキルもいろいろと凶悪な物が揃っている、逆に装備は平凡だ、伝説の剣を持っているとか、竜の鱗で作った鎧を着ているとかではない、、、、黒井零、、貴方はいったい何者なの!?





私が思考に没頭している間に稲妻改め黒井君は、既にサイクロプスを片付けてしまっていた

私達がいる通路には、四肢を切断されたサイクロプスが最後に首を跳ね飛ばされていた

周囲に立ち込める濃密な血の匂い、返り血一つ付かずに佇む黒井君、やがてボスモンスターは光の粒子となって消えていく、残されたのはドロップアイテムだけだった、黒井君はアイテムを拾うとボスの部屋を目指して歩き出す、恐らくボスが撃退された後にできる転移の魔方陣に向かっているのだろう


私は声を掛けるべきか迷っていたが、迷っている私をしりめにティナが声を掛けた


「待って、黒井君」







ティナSide


「待って、黒井君」


私は気が付くと声を掛けていた

黒井君はゆっくりと振り返ると、戦闘後だというのにとても落ち着いた瞳で私を見ます、まるで、こんなことは日常茶飯事だとでも言わんばかりです、その時私は彼との距離がとても離れていることを実感しました、


そうして黙っていると、黒井君は少し苛立った感じで転移魔方陣に向かって行ってしまいました


転移魔方陣が発動して黒井君の体がゆっくりと消えていきます、私達は消えていく彼をただ黙って見ているだけでした、、、やがて彼の姿が消え、辺りに静寂が戻るとステラがハッとしたように私に話しかけてきました


「ティナ、サイクロプスは居なくなったけどスタンビートが起こっているのは間違いないわ、早くダンジョンから出て教道官にこの事を伝えないと!」

「そ、そうだな、何はともあれ一度出よう、ティナならあたし達全員を転移させられるだろ?」


エミリーとステラがそう言って近づいてきました、アマンダもそれを見て近づいてきます


私は皆が傍に来たのを確認した後、転移魔法を発動させ演習用ダンジョンから脱出しました




この後更なる衝撃が私達を襲うなど、この時はまだ知りませんでした








演習用ダンジョン前広場



Sideステラ


目を開けると転移を指定した広場だった、素早く自分の身体に異常がないか確認した後、担当の教道官である柳先生を探す


「柳先生!、柳先生は居ませんか!」


私が叫ぶと大勢の人達の中から一人の女性が進み出てきた


「ステラ三回生か、大きな声を出してどうしたのだ」

「大変なんです!スタンビートが起こっています、直ぐに周辺校に連絡を!」


柳先生は私達の話を聞くと、険しい顔に為り詳細を話すようにと言ってきた


「ボスモンスターのサイクロプスが部屋から出てきたんです!味方が表れて助かりましたが、彼が居なければ私達は全滅していたでしょう」

「サイクロプスだと!此処のダンジョンのボスはゴブリンジェネラル(緑小鬼将軍)だったはずだぞ、それが何故、サイクロプスはAAクラスのモンスターだ、君達だけで倒したのか?いや、味方が表れたと言ったな、彼とは誰だ?」


柳先生が聞いてくる、私も当然の疑問だし時間があれば答えたかったが、今はそんなことをしている場合じゃない


「そんなことより連絡と応援を!今この瞬間にもモンスターが這い出てくるかもしれません!」


柳先生は少しの間迷っていたが、どうやら私達を信じてくれたようだ、他の教道官のところに行き、スタンビートが起こっている可能性があり、周辺の学校へ連絡し、避難と応援を頼んでくれた


一先ずこれで最悪の事態は避けられた、一息付いていると私の視界に漆黒のレインコートを着た彼が居ることに気が付いた

助けてもらったお礼をしなきゃと彼に近づいた、次の瞬間




うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお




地響きと雄叫びが同時にやってきた


モンスター達は始めダンジョンの入り口に張ってある結界にぶち当たったが、数秒もしないうちに結界を壊し外に溢れ出てきた


「柳先生!」

「分かっている!教道官は結界の回復を、生徒たちは避難しなさい!」


先生達がモンスターを押し止め、結界の修復をしている中、黒井君が弾丸のような速さでモンスターの群れに突っ込んでいった


「なッ、その生徒を止めろ、くッ数が多すぎる」


黒井君はモンスターの大群に対峙すると、腰から鋼の剣を取り出し構えた

大群の先頭を走っていたリザードマンが黒井君に襲い掛かる!

だが次の瞬間には四肢を切断されたリザードマンが最後に首をはねられていた


次々と襲い掛かるモンスターを時に荒々しく時に静かに倒していく

その姿は遥か昔に根絶した「武術」を用いているかのようだった








武術、それは人族の究極の戦闘術、特に優れた武術家はマスタークラス(達人)と呼ばれ、彼らは龍を殺し、魔王を倒し、神を下した


だが、彼らの栄華は長く続かなかった、その力を危険視した魔神が武術家を根絶やしにしたからだ

彼らは負けた、圧倒的な戦闘能力を持つマスタークラスと言えど数の暴力には敵わなかったのである

そして、多くの技術が失われた、一部の研究者は文献から過去の技術を学ぼうとしているが、余り成果は出ていない、後にこの戦いは魔神戦争と呼ばれ、人族の歴史は大きく後退することになる


だがここに、武術はあった、確かな理論と才能と、そして、奇跡のような努力の成果が黒井君の振るう剣には表れていた



・・・・・・美しい・・・


彼の振るう剣技はまさに完成された何かだった、無駄がなく、洗練され、見た者を魅了した


此処には多くの生徒が避難している、でも、誰も声を上げなかった、彼が振るう剣の一太刀をまるで熱病に着かれたように、ただ、見ていた、

黒井零・・・・彼は本物だった




やがて、モンスター達は勢いを失い完全に居なくなった、彼は相変わらず返り血一つ浴びていない

モンスターの死骸で埋め尽くされた広場で一人佇む黒井君は、何処となく孤独に見えた

私はそんな黒井君を見て胸が熱くなるのを感じていた







その黒井君が突如空を見上げた

そこには紅蓮の髪と病的な白い肌を持った「魔人」が居た



魔人・・・それは、人類の絶対的な敵対者、彼らは常に私達人類を根絶やしにしようと狙っている

しかも、あの宙に浮いている魔人は恐らく爵位持ちであろう、絶大なプレッシャーが降り注いでいる


「やれやれ、せっかくスタンビートを起こしたのに死者がゼロとはね、だが、マスタークラスが居るなら納得だ、これは如何やら僕自身が出るしかなさそうだ」

「・・・誰だ、お前」


爵位持ちの魔人が現れたと言うのに黒井君の態度は相変わらず不遜だ、まるで自分が負けることなどあり得ないと思っているようで、頼もしい


「ふむ、折角だし名乗っておこうか、僕は魔人シュタラム、伯爵級の魔人だよ」

「そうかい、俺は黒井零、只のしがない冒険者だ」

「ははは、只の冒険者が此れだけの戦闘力を持っているものか、君がマスタークラスなのは分かっているんだ、絶対逃がさない、僕に殺されてよ」

「・・・別に懸かってくるなら相手をしてやるが、死ぬのはお前のほうだぜ」


そう言って黒井君は安物の剣を構えた、視線は彼の魔人に固定されている

魔人の方も何処からか取り出した深紅の剣をダラリと下げている




戦いが始まる



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