燃えよ新世界
しばらくして、中山は戻ってきた。
平然としているが「うん、学年主任がね。」
中山が決めていい事もないだろう、と
バンドみんなで決めればいいんじゃないか、と。
たかたか先生も、今からじゃ
間に合わないだろう、って。
それは正論だ。
そうだけど。僕らは
中山の気持ちを知りたかった。
「なあ、中山さ、なんでクラシックじゃない
曲がやりたいの?」と、僕が聞くと
中山は、坊主頭を撫でて「うん。思い出があるんだ。jesus christ を見に行ったんだ。小さい頃。感動したよ。音楽って自由なんだよ。
こんなに。普段聞いてるクラシックと違って。
」と、中山は言った。
ずっと優等生で、お寺のお坊さんがおじいちゃん。
ちょっと堅苦しいのに、少年らしい
反発も感じていたのかもしれない。
「俺は、別にクラシックが好きでもないけど
たまたま、音楽が向いてるって言われてから
ずっと音楽をやらされてきた。本当は
そうじゃない。自由な音楽をやりたいんだ!
大きな事をして、みんなを驚かせて。
感動してほしいんだ!」
普段[僕]と言う中山は
俺
と言う。これが本音かな。
僕は、ちょっといたずら心を出して。
「中山、じゃ、こういうのは?」と
アルトリコーダで、[燃えよドラゴン]を
イントロ吹いて。
その後[新世界から]をワンフレーズ。
また、[燃えよドラゴン]をワンフレーズ。
交互に
繰り返す(笑)。
しんちゃんも、初美ちゃんも大笑い。
中山も「面白い!」
僕は吹き終えて「これなら新世界から、だよね」
朋ちゃんは拍手して「おもしろーい。なんで?
そんな事出来るの?」
「なんでかわからないけど」と、僕は言った。
なんとなく、くっつけたら面白そうだな、と
思ったんだ。
中山は笑って「よし。譜面は任せとけ。ブラスバンドのみんなも楽しいだろ」と。
中山は力強く、僕に握手した。
たけちゃんは真面目なので「大丈夫かなぁ」と
心配。
僕も半分冗談だったので、中山が
本当にこれを実行するとは思わなかったし
練習の間に、先生にばれるだろう。とか
ブラスバンドのみんなが乗ってくれるかな、
なんて風にも思った。
僕は、しんちゃんが恋に悩まないで
気が紛れればいいだけ、だから
笑ってるしんちゃんを見て、満足だった。




