とつぜんのメール
当たり前なんだけど、予告なしにメールが届けられた。
「いまから、会えないかな?」
もちろん僕の頭の中を駆け巡っている。
どこ落ち着かない様子の彼女のくちから告げられた。
体を揺らしながら、少しモジモジというかソワソワしながら、
「会えないかな・・・」
うん、これは無い。と声を大にして言える。
だって彼女は中指を立てて言うだろうから・・・。
さて、どんな文章で返信したら良いのだろうか?
彼女の姿を思い浮かべてみる。
「君から、メールが来るのを、ずっと、ずっと、待っていた。今か、今かと、
心待ちにしていたら、この思いが、君に届いたんだね、
誘ってくれて、ありがとう」と返信したら・・・
間違えなくこんなメールが返信されてくるだろう・・・。
「いい健児?待つてるだけでは、なにも変わらないし、なにも起こらないんだよ・・・」
言われそうだ・・・かなりの確率で言われそうだ・・・。
映画のタイトルのような文面を送ってしまった・・・いわゆるパクリってやつです。
「いまから、会いに行きます・・・」
「じゃぁ、◯◯学園前で、落ち合おうよ」とツッコミは無しなので、
僕も普通に返信を行う。
「駅構内? それとも、外で落ち合う?」
「どこでも、好きなとこで、待ってなさい・・・」
うわっ、今まで黙っていた事を謝らないといけません・・・
僕は知ったかぶりしてました・・・◯◯学園前駅なんて知らないのです。
それがまんまと裏目に出た・・・。
頭の中で、ガーーン!という音が鳴り響きそうだったが、
「待ってなさい」という不思議な文が書いてあるから、
駅を知らないことなんかより、そちらの方が気になっていた。
駅なんて駅に行って調べれば分かるものだからね。
まぁ、取り敢えず、なんとかなるだろう。
意味は分からないけど、何かが心のなかで燃えているように感じていた。
決して萌えではない・・・と思われる。
取り敢えず、◯◯学園前駅でも探すか・・・。
路線図で調べてみると、簡単に見つかってしまった。
取り敢えず通学で使っている路線を確認してみると、見つかってしまった。
しかも、この駅から3駅しか離れていなかった・・・。
まぁ、反対方向だから、知らなかっただけだけど・・・。
僕は乗りなれた筈の、列車に乗り込むが、行き先が逆方向なので、
なんとなく落ち着かなかったけど、
もしかして、彼女は事前に、し、ら、べ、て、い、た?
ぼ、く、と、あ、う、た、め、に?
という考えを頭の中に、浮かんできていた・・・。
彼女なら在り得るかも知れない・・・。
そんな事を思っていたからだろうか、あっと言う間に到着していた。
列車から外へ、足を一歩前へと踏み出す。一歩一歩前へ進みながら、
勝手がわからない駅を見渡しながら歩いて行く、
我先へと階段に群がる、乗客たちを避けるように、
行列が出来ている階段に、背を向けるように歩いている。
歩くたびに、ジーンズの右ポケットがブルブルと震えるので歩きにくい。
バイブに同調してなのか、歩幅まで変な感じになる。
僕は携帯をチェックした。
「意外と、近かったでしょ?」と意味深なメールにより、
先ほどの僕の考えに、間違えでは無かった事を知る。
彼女は、人の立場になって考えるから、彼女は考えてから行動を起こす。
そんな彼女の事が・・・気になっています。
そんな姿を気付かれないように行動しているつもりだろうけど、
隙間が空き放題だから、すぐボロが出る彼女のことが・・・ずっと気になっていた。あの日からずっと・・・・・・。
とりあえず、この駅に馴染むことから始める。彼女を探すことは、それからでも良いだろう。
そして意気揚々と、自らの意思で遠ざかった階段へ向かうために振り返った。
いきなり意気消沈・・・。あろうことか、僕の視線の先には、
在り得ない人が立っていたから・・・。
ほんと、彼女には、驚かされっぱなしだ・・・。
このような行為は、ペナルティーもんだよ・・・。
階段の登り口で、僕のことを見ている。
彼女は階段を独占していた。
列車が出発したばかりなので、乗客は殆どいうか誰もいない。
そして、彼女の耳には、ヘッドフォンがはめらている。
ギターを抱くようにして立っている彼女の姿に、最初の出会いを思い出す。
ぶつかりそうになった瞬間、ギターを大事に抱える姿を・・・。
ギターケースの底部分を地面に触れては居らず、
足の上に乗っけている姿に驚かされた。
彼女はというと、ギターを両腕で抱きかかえる格好で、
僕に向けて微笑みかけているから可愛く見えた・・・一応は。
なぜかって?期待を裏切らず、中指が立っているからです・・・。
でも、まぁ、あれですよ。人は身なりで判断するな!なんて言いますけどね、
中指を立てて来る人は、危ないでしょうし、近寄りたくないでしょう・・・。
どうみても100%危険人物だし、普通なら目を合わせないように、
こっそり、ひっそりと横をすり抜けるだろうけど、
その格好が当たり前になっている今では、
当然のように彼女に歩みよっていく。
「久しぶりだね、健児。ってどうしたの? テンション低いよ」
「いや・・・ちょっと出鼻くじかれたもので・・・」
「まぁ、あれだ。出る鼻は、叩かれる。なんていうから、気をつけろよ」
「それをいうなら、杭だよ! 鼻を叩かれたら、涙が出て止まらないからね!」
「うん、そうだね」なぜか彼女は、楽しそうに鼻歌交じりで、
ヘッドフォンを外している。
「ん!」と告げられている?のは、彼女の口からかなのか、
鼻からなのかは分からないけど、出会ったあの日を思い出した。
きっと物を渡す時の癖なのだろう。
携帯バイブの真似をしながら、ヘッドフォンを渡そうとしているので、
彼女と目を合わせられなかった・・・。
だって面白可笑しくて、少し可愛くて、だから少しだけ意地悪をして、
ヘッドフォンを、中々受け取ろうとしなかった。
「ん!ん!ん! 早く手に取れ!」と頬を少し赤くさせている、
可愛いさといったら・・・。
余り待たせるのも悪いので、ヘッドフォンを受け取り、
耳へとはめてみた。耳パットという名称で合っているのかな?
フカフカしていて、とても気持良かった。
まぁ夏は暑そうで大変そうだけど・・・。
しかし、こんな人通りの多い場所では、ヘッドフォンって、
かなり目立つ物なんだね。そろそろ次の列車が到着するのか、
階段を使用する、人たちが徐々に増えて来ているように思えた。
チラ見して通り過ぎる姿に、少し恥ずかしかったから、
と彼女の表情を伺っていると、
「人も多くなってきた事だし、あっち行こ、ベンチ在るから」
そう言うなり、不意に手を握られると、迷子の子供ように連れて行かれる。
ベンチに向かうことは、僕のことを気遣ってくれたようだったけど、
手を握られているという事は、どういうことだろう・・・。
いや、多分、全然、深い意味なんて、無いのだろうけど、
ただ僕を引き連れて、ベンチへ向かっているだけなのだろう。
彼女の後ろ姿を見ていると、只前進在るのみ!全体進め!と行進曲が
流れていてもおかしくないというか、とにかく意気揚々として進んでいる。
彼女に引かれる感じで歩く自分は、彼女より三歩下がって歩いてように思え、
僕はさながら、大和撫子ならぬ大和男子?
全然上手くないけど、情けないやら、恥ずかしいやら何ともいえない、
感覚を覚えたけど、どこか気分は高揚しているから不思議だ。
「じゃ、健児は、そっちに座って」
と普通のヘッドフォンをはめていたら、外の音が少し遮断され、
聞き取りにくいはずだけど、開放式だからなのだろう、
彼女のクリヤーボイスは、僕の耳へとはっきり聞こえていた。
それよりも気になっていたのが・・・。
彼女が連れてきたベンチは、三人がけか、
もしくは四人がけの、何処にでもあるベンチだけど、
僕は言われたとおりに、右端へと腰を下ろした。
すると彼女も隣に腰を下ろす。まぁ、これも普通の光景だと思うけど、
僕と彼女の隙間は、数センチ有るか無いかだから、かなり接近というか、
密着している。そのお陰で、僕の心臓バクバクしていた。
もしも、彼女の手が、少しでも僕に触れたりすると、
「そんなに、緊張して、初デートでも、あるまいし・・・」
って、ばっちりと緊張と動揺と心音まで伝わっていたようだ・・・・・・。
「うそ・・・えっ、なに、これって、デートじゃないの?」
すると彼女は僕の顔をマジマジと見つめている。まるで何冗談いってるの?
と最初はそのような表情に見えたけど、自然に困った顔を見せ始めた。
「・・・まぁ、健児が、そう思いたいのなら、良いよ・・・」
と彼女の沈黙は意外と威力高めで、
その気が無かったわけでも無かったのかな?なんて事を考えていると、
とつぜん彼女は近づいてきた。
そして彼女の手が、L側のヘッドフォンに触れるというよりは、
掴まれたという感覚の方が強い。彼女の顔が正面にあるというよりは、
少し右方向を向いていた。でもかなり接近している。
そしてR側のヘッドフォンを掴み軽く持ち上げた。
この時はじめて、L側を掴んでいる意味を知る。
耳とヘッドフォンの間に隙間が出来ると、優しく耳元に語りかけてきた。
でもゾクゾクなんて事はない。・・・・・・。
「えっと、ちょっと聴いて貰いたい、曲が在るんだけど、聴いてもらってもいいかな?」
彼女の姿から感じたのは、少し照れくさそうでもあり、
少し恥じらっていうようでもあり、少し嬉しそうでもあった。
そんな姿を魅せられて断れないだろうし、聴かないわけにはいかないだろう。
彼女が初めて進めてくれる音楽なんだから・・・。
まぁ、もし断りでもしたら、耳ががら空きになっている今は考えたくもない・・・。
「よろこんで、聴かせてもらうよ」
「そんなに、喜ばなくてもいいけど、聴いてみて」
彼女の指が、スタートボタンに触れる瞬間で止まっていた。
そして1人で納得しているのだろう。なにやら頷いていた。
先ほどと同じような格好で、近づいてくると、
相撲でいうところの、合掌捻りのような格好で、
R側のヘッドフォンを軽く持ち上げると要点を伝えてきた。
「もし、音が大きくて、ボリューム下げたい時は、
こうやって伝えて・・・」と身振り手振りで上げ下げの方法を教え終わると、
「その時は、逆のことをして上げるから」と締めくくる。
「あいよ」と口にだすと共に、決して真似したわけではないけど、
身振り手振りを交えながら、スタートボタンを押すことの許可を下す。
カッコイイこといってるけど、実際の権利は彼女にあるので、
全権限を彼女に明け渡した。
「じゃ、始めるね」と役目を終えた彼女の視線は、
僕の右側を直視しているようで、その視線がR側から入り込むと、
L側で留まっている。
だが決して折り返してR側から出ることはない。
顔を背けるのも、何だか、おかしいので瞳だけがキョロキョロと
動き回っていた。
そんなこんなで音楽が再生されると、思ったよりも大きい音で、
一瞬身振り手振りでボリュームを下げて・・・と言おうと思ったけど、
慣れてくると、耳鳴りもなく、耳に圧力がかかることもなく、
僕の耳を通り越すと、脳内には、女性ヴォーカルの美声を聴かせてくれた。
ヴォーカルは何かを、必死に伝えたようとしているようだった。
ギターは、エフェクターで音を歪ませているが、
音の1粒、1粒が、ハッキリ綺麗に聞こえてくるので、
きっと耳が良い人が弾いているだろうか?・・・、
なんて音楽に詳しくないのに、と勝手に語っている。
でも僕の耳には、そうやって聞こえるので仕方がない。
こんな事を言えたのも、このヘッドフォンだったからではないか?
ううん、このヘッドフォン無しでは、在り得なかった。
と言い切れる。自分の持っているイヤフォンだとしたら、
確実にこんなに語ってないと思う。
ドラムの音って時々、ズンズンズンズン鳴り過ぎて、
ちょっと耳障りな時が在ったりするけど、
このヘッドフォンでは、全然感じることはなかった。
重低音は出ているけど、耳障なんて飛んでもなかった。
自分が持っている安物イヤフォンと比べると、怒られそうだけど、
完全に隠れて姿を消されているベースの音だけど、
凄いテクニックなのかまでは、分からないけど、
手の動きまで分かるような感じがした。
帰ったらゴミ箱行きかな・・・僕の1000円のイヤフォン・・・。
このヘッドフォンの値段は知らないけど、きっと高いんだろうなぁ・・・。
耳パットも気持ち良いもんなぁ・・・。
でも、1000円でも、
勿体無いから捨てられないだろうな・・・はっきりいって貧乏性だ。
彼女はこんな音を聴いていたのか。
こんな良い音を聴いていたのか・・・と思うと、
少し悔しいと思う、一方で、もし彼女に出会わなかったとしたら、
ヘッドフォンなんて、どれでも同じ物だろ・・・と思っていたと思うから、
彼女に感謝しなきゃいけない。
こんなふうに真剣に、音楽を聴く事もなかっただろうし、
こうやって楽しむ事も出来なかっただろう。
そんな思いで、彼女にたいして頷きかける。
別に深い意味なんて無かったけど、ただ、ありがとうが、
伝えたくて・・・。
彼女の口の形が、なに?という言葉を作ったように感じた。
そして首を傾げている姿が、とっても可愛かった。
ぼくは、その可愛い顔に向けて、べつに深い意味はないよ。と首を横に振る。
すると彼女は、アゴに拳を添えて、僕のことを見ている。
彼女は、右に傾げていた方向を、左へ変えると、右へ変えたりと、
何度か入れ替えながら、不思議そうに僕のことを見ていた。
こんな感じで、音楽を聴いていた筈なのに、
気がついたら体全身でリズムを取っていた。
そしてリズムに乗っかっている自分の姿に気がつき、
すこし恥ずかしくなっていた事実と、少しの間、
彼女の存在を忘れるほど、音楽に没頭した事実。
どうやら、僕は音にはまっているらしい。そして気づく。
もうすぐ終わりに近づいていると・・・僕の耳の中で、
鳴っていた音の終わりの余韻の音が、
微かな響きを残しながら徐々に小さくなっていき、最後には無音になっていった。
ぼくは彼女に返すために、ヘッドフォンに触れた瞬間に、
少し寂しいという思いにかられていた。
僕の耳から少し浮いて外れかかると、場内アナウンスが耳に入り込むと、
現実というか、元の世界へ連れ戻されたというべきか、
とりあえず、ヘッドフォンに感謝した。良い音を聴かせてくれて有難う。
「うん、よかったよ。格好良かったよ」
と、親指を立て、素直な気持ちを伝えると、彼女は少し微笑んでいた。
どこか、照れているようにも見えたけど、
やっぱり喜んでいるようにも見えた。
そして彼女にヘッドフォンを返すことにした。
「ん!ん!ん!」と渡したら、
「・・・・・・やなやつ!」と肘でこづかれた。
「なんか、元気貰った!」と言ったのは、こづかれたからではなく、
本当に感じたままを伝えた。
最初は嬉しそうに笑っていた彼女だったけど、
「ほんとに?」と告げられた時は、少し驚いた。
「ほんとって、どういう意味?」
「いや、健児って、優しいからさぁ・・・」
その、優しいという言葉の中に、色々と見え隠れしているようだった。
馬鹿な僕でも、本心を聞き出そうとしている事に気づく。
「・・・・・・・・・えっと」
「ごめん。ちょっと、わたし、うざかったよね・・・」
「いや、そんなことは、思ってないから・・・」
「・・・・・・・・・ごめんね」
「謝るのは、僕のほうさ、嘘なんて言いたくなかったから、
時間かかったけど、音楽とか詳しくないから、分かりにくいと思うけど、聞いてくれる?」
「うん、聞きたい」
泣いたカラスがもう笑った。という言葉は今この時の事を言うのか。と思った。
彼女の瞳は、キラキラと輝くと、知りたくて、知りたくて、
本心を知りたくてウズウズしているように見えた。
そんな表情で見つめてくるから、たまらない・・・いろんな意味で・・・・・・。
「えっと、ヴォーカルも良かったし、ギターもカッコ良かった。そしてドラムも、ベースも良かったよ」
と僕が答えると、彼女がコケたように見えた。ギャグ漫画の1コマのように・・・。
「いや、いや、もっと伝えなきゃならない事が在るんだけど・・・」
「ううん、大丈夫。ううん、大丈夫?ごめん、ちょっと私が、
熱くなりすぎたみたいだから・・・」と答える彼女は、緩いウェーブの髪の毛をなぞるように、
人差し指を使い、ときおり、クルクルと髪の毛を巻いていた。
何かを必死に誤魔化すように・・・。
だから言葉を必死に探したし、色々と考えてもみた。
上手くまとめる時間なんて無いけど、早く伝えたくて、
ギターの音がどうとか、ベースのテクニックがどうとか、
思ったことを、そのまま喋っていた。
決して知ったかぶりではなく、彼女に出会ってから色々調べたお陰で、
自分でも上出来の出来栄えだったような気がする・・・。
僕は、一心不乱に伝え終わるなり、おもいっきり呼吸をして、
肺の中に酸素をとりこんだ。そう、急ぐ余り、
気がつくと自分の肺活量の限界値を超えていた。
ほんと情けない限りですけど、一息ついてから続けた。
「なんか、上手く伝えられなくてごめん。この音がどうとか、
このへんが、こうとか、言えないけど、聴きやすかったのも事実で、
楽しそうに感じたのも事実で、とにかく良かったです。そして好きです
好きになりました」
「・・・・・・あ、ありがとう。そっか、安心した。色々聞いちゃって、
ごめんね。でも、私も負けないくらい、好きだよ」
と、謝ったように見えて何処か嬉しそうにも見えた。
特に最後の4文字なんて、投げやりも投げやり、終わった瞬間から視線を外された。
そして、またしても人差し指で髪の毛をくるくる巻き巻きしているから驚いた。
なぜ驚いたかというと、くるくる巻き巻きスピードが、
先程より数段速くなっていたからだ。
そしてもうひとつ驚いた事がある。僕の口から勝手に出た言葉が、
「・・・・・・僕も好きだよ」
「・・・まさかとは思うけど・・・それって、告ってる?」
「は、はい!? 何いっちゃんてんのさ、告ってないですよ?」
「かなり動揺しているようだけど、気づかなかったの?
でも疑問形でいっても、可愛くないんだよ?」
「うむ、可愛くないなら、しかたないかな?とほほ・・・」
「そのリアクション・・・かなり古いけど・・・可愛くはないんだぞ?」
「恥ずかしい限りです。穴があったら入りたいです!」
「よ〜し!穴掘ってやるから、入れよ!絶対入れよ!」
「じゃぁ、掘ってもらいましょうか?ここに、さぁ、ここに掘ってよ」
「むっ・・・むみ!ねぇ、誤魔化そうとしているようだけど、無理だよ?」
「はいはい、わかりましたよ!」
「はい、は1回ですよ?」
「まぁ、実際の所、告ってません・・・けど・・・そのうち・・・そのつもりの予定でした!」
「・・・すげぇ、というか、ぱねぇ・・・そこまで、
ぶっちゃけられる人、初めて見た!天然記念物クラスだよ・・・」
「そう、やっぱり、天然記念物って、ちょっと嬉しいよ」
「天然ぱねぇ、ほめてねぇ〜〜〜から!」とこんな遣り取りが辞められなかった。
こんなに、楽しいと思ったのは、何年ぶりだろう。
もしかしたら、生まれてから、初めてかも知れない・・・こんな遣り取りが、
こんなにも楽しいなんて・・・知らなかった。
「話は変わるけど、さっき聴かせてもらった歌って、何て言うの?」
「なんで?」
「いや、なんで?って、知りたいからでしょ?」
「そ、そうだね、えっと、どうしよう・・・」
けたたましい音を鳴らして、快速列車の通過による、
アナウンスが放送されていた。
彼女はアナウンスに耳を傾けてる、隙を狙って話しかけた。
「ねぇ、ハナ、教えてよ?」と彼女の事を初めて名前で呼んでいた。
彼女は、僕から初めて名前で呼ばれたからか、少し驚いたような表情を浮かべていると、
急に微笑みを浮かべて、小さく頷いた。
「じゃ、教えてあげるから、ついて来なよ」と、
笑顔を見せたと思っていたら、既に歩き始めていた。
僕は行き先も聞けずに付いていくしか無かった。
彼女の背中を見失わないように歩いて行く。