第1話 俺にはふたつの前世がある
新作投稿でーす!!
気がついたら、思い出していた。今思うと、それがしっくり来るんじゃないかってくらいには自覚している。
俺、リアンにはちょいと他所では言い難い『秘密』がある。子供にもだけど大人に話したところでバカにされると思うんだよなあ?
前世の記憶があること。
これは、まあ、嘘でもあるんじゃないかとは思われるだろうけど。
『二つの前世』を覚えているとかは、絶対絶対馬鹿にされるから……親にも言ったことがない。
しかも、それが奇妙なことに。
男だったことも。
女だったことも経験しているのだなんて……最高のほら吹きとか絶対言われる。だから、今まで誰にも言ったことがない。
けど、代わりに生活には大いに役立っているんだよな?
「よーし! 今日の任務おーわり!!」
14で自立するために、冒険者試験を受けて。16にはソロで活動できるようになってきた。最初パーティーにも誘われたりしたが、うっかりで俺の秘密をぽろっと聞かれるんじゃと……まだガキのガキだったから、びくびくしてたんだよな? 今は別に楽だから合同任務以外で行動することはないけど。
採取と討伐の任務を終えた今日は、野営に使ってる仮拠点に戻ってから夕飯の支度をする。前世の女の方の言葉で言うなら『アウトドア』。男の方はもっと古い時代だったんだけど、冒険者というよりかは用心棒?、浪人?、いや……女の時代にもあった言葉だと『忍者』って仕事をしてたんだと思う。殺伐とした戦場の中で情報収集とか汚れ仕事なんでもござれなことしてたけどな?
女の方は、平和だった。
戦への恐怖も、死への近道もほとんどない。仕事忙殺以外は平和な時代。
そこで、たしか料理の道を歩んでいたんだ。ごく普通の家庭で母親とかの手伝いをしながら、学校とかにちゃんと通って専門学校とかにも行った。仕事にも就けたけど……忍者の前世の時とはまた違った意味での忙殺地獄。下っ端の仕事から、それなりの地位に就くまで男たちを押しのけて副料理長とかまで頑張っていた。
が、電車って乗り物の交通事故であっけなくぽっくりと。
忍者のときは、たしか流れ弓矢とかが当たったせいだったかな?
とにかく、今いる生活から考えらない二つの『前世』を誰かに話したところで信じてもらえないだろう。
(でも、冒険者として生活していくスキルには役立つんだよな?)
偵察に必要な、身のこなしとか。
自炊するのに必要な、料理の作法とか諸々。
男だった~、とか。女だった~、とかで中身が大混乱していた時期もそりゃあったさ? だけど、今は『リアン』としてちゃんと男の方で生活できている。女の方で、もし結婚とか子ども育てていた記憶があったら色々違ってたかもしんないけど……独り身で死んだから、そんな恋愛感情は男に抱いたりはしなかった。なので、俺は男として女しかそんな感情は持たん!! 今んところ惚れた女とか特にいないけど。
「スープ出来た。ウサギで作ったソテー有り。パンは一昨日の残り。……うん、十分だろ」
けどまあ、今の生活に大いに役立ってくれているから。苦い記憶を思い出すことはあっても、自他ともに楽観的と認める自分にはちょうどよかった。独り立ちも早く出来たし、ノルマをこなせば日銭もそれなりに稼げる生活。
ランクも、今たしかCだったかな? あくせく活動していないから、職業も不人気の『アサシン』を選択した。偵察メインで、暗殺お手の物?じゃないけど、忍者の前世を持つから魔物への不意打ち攻撃は超得意。気配断ちとか、訓練し直したら出来たんだよな?
天才とか思ってないけど、BとかA以上のランクの冒険者を除けば……こんなスキル持っている奴はごろごろいるだろうし? とにかく、しがらみのない生活がしたかったから冒険者してるって程度だ。食事をしながらも、明日はギルドに戻って納品するとかを考えたりしてるだけ。
「は~。ごちそうさま」
女の方の料理スキルが、下手すると実家の母さん以上に出来るようになったから……野営で作る料理もマジで自画自賛したいくらい。合同のときに手伝いしたりはするけど、変な勧誘とか来そうだから基礎基本だけにしてほかは任せたりしていた。あれは……不味くもないって感じだったな。食べるなら自作の方がずっといい。
食休みのために、ごろんと横になると行儀が悪いとかいう奴らもいない。ソロ、マジで最高!
「……ん?」
茂みの方にたまたま視線が向いただけなんだけど……少し、下の方が動いた?
気配もなかったんで、魔物かと態勢を変えたが。がさごそと動く茂みから出てきたのは……汚れた、毛の塊に見える生き物だった。ウサギ型の魔物にしては大きい。犬にしては少し小さい。
そろ~っと、忍び足を活かして近づけば。塊はふるふると震えていただけだ。弱っているのか?
「……おい」
声をかけてみれば、音に反応してびくっとした。すると、顔を向けてきたのかで塊が動く。水の底みたいな深い蒼の二つの瞳と目が合う。これは、ひょっとしたら魔物じゃなくて聖獣なのかもしれない?? そんな、レアな出会い方ってあるかと信じられなかったが。
「……とりあえず。おいで、手当しようか?」
汚れ以外にも手入れしてやった方がいいと思って手を差し伸べれば、口辺りから小さい赤い舌が出てきてぺろぺろとグローブを舐めてきた。そこで、女としての感情がなんか蘇ったのかで、胸のあたりが『きゅん!』とときめいたんだけど!?
(もう、お姉さんちゃうから!!)
あの独特な話し方が久しぶりに浮かぶくらい焦ったが、そいつをまずは洗ってやることにした。前世のどっちにもなかった、『魔法』を使い、軽く水拭きと泡洗浄。ごしごし擦ってやると、黒くなる泡が出来るにつれて毛の方はツヤツヤとした銀色に変わっていく。
マジで、聖獣とかかこれ??
今日は二話まで




