表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

エピローグ

あれから、クラスは平穏を取り戻していた。


これまで見て見ぬふりをしていた生徒たちも、一人ずつレンジのもとへ謝りに来た。


「今まで、ごめん」


「見て見ぬふりして、ごめんね」


レンジは誰も責めなかった。


「しかたないよ」


そう言って、いつも穏やかに笑った。


教室には怒鳴り声も、誰かを嘲笑う声も聞こえない。


クラスには、穏やかな時間が流れるようになっていた。



朝。


レンジが校門を通る。


そのすぐ後ろを、ショウがぴったりとついて歩いていた。


「レンジ、放課後どうする?」


「特に決めてない」


「じゃあ、よかったらうちに来いよ」


「まあ、考えておくよ」


「……うん」


ショウは笑顔を作り、再びレンジの半歩後ろを歩く。


かつてダイチの隣にいたときと、ほとんど同じだった。



その日のホームルーム。


担任が連絡事項を読み上げている途中で、教室の一番後ろから手が上がった。


「どうした、レンジ」


指名されたレンジは、ゆっくりと立ち上がる。


「校庭の花壇なんですけど、少し汚れていました」


担任が不思議そうな顔をした。


「花壇?」


「雑草も増えていたし、ペットボトルも落ちていました」


それだけ言って、レンジは席へ座る。


教室に短い沈黙が流れた。


すぐにショウが立ち上がる。


「じゃあさ、放課後にみんなできれいにしようぜ」


誰も返事をしない。


ショウは教室を見回し、少し声を大きくした。


「なあ、そうしようぜ」


一人の生徒が拍手をした。


続いて、別の生徒も手を叩く。


やがて拍手は教室全体へ広がっていった。


担任も戸惑いながら頷く。


「そうだな。みんなでやれば、すぐに終わるだろう」


レンジは一番後ろの座席から一人一人の顔を見ていた。



放課後。


クラスメイトたちは校庭へ集まり、花壇の掃除を始めた。


軍手をつけて雑草を抜く者。


落ちているゴミを拾う者。


土をならし、水をまく者。


ショウは誰よりも大きな声を出していた。


「そっち、まだ草残ってるぞ!」


「ペットボトルは袋に入れて!」


誰も文句を言わない。


誰一人として、帰ろうともしなかった。


部活動がある生徒も、塾の時間が迫っている生徒も、黙々と手を動かしている。


なぜ自分たちまで掃除をしなければならないのか。


誰が決めたのか。


そんな疑問を口にする者はいなかった。


教室の窓際には、レンジが一人で立っていた。


窓枠へ手をつき、花壇で働くクラスメイトたちを見下ろしている。


やがて一人の生徒が顔を上げた。


レンジと目が合う。


レンジは笑顔で手を振った。


生徒も慌てて手を振り返し、すぐに作業へ戻る。


「ははっ」


誰もいない教室に、レンジの笑い声が響いた。


「あいつら、本当にやってるよ」


その顔には、心の底から満足したような笑みが浮かんでいた。


その日から。


レンジが校内の汚れを見つけるたび、クラス全員で掃除をする習慣が始まった。


レンジが一言告げるだけで、放課後には全員が集まった。


命令されたわけではない。


強制されたわけでもない。


それでも、断る者は一人もいなかった。


意味があるのか、ないのか。


誰にも分からないこの美化活動は、卒業式の直前まで続けられた。


---


僕をいじめた四人が消えるまで [ 完 ]


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ