第33話 外れるヘルメット――エル・ペル=ワカの王墓に並んだ、小さな戦士
グアテマラ北部、ペテンの密林。サン・ペドロ川のほとりに、マヤの都市エル・ペル=ワカがある。古典期の都で、紀元前500年頃から西暦800年頃まで栄えた。
2006年、考古学者ミシェル・リッチらの調査隊は、ピラミッドO14-04の中で封印された墓を開いた。埋葬39。石室が閉じられたのは、およそ西暦650年頃。今から約1400年前です。
王の足もとには、土偶が円を描くように23体、並べられていました。その中の一体が、ほかと違っていました。頭の兜が、外れるのです。
ぴったり合う、もう一つの頭
人形は粘土を型と手で成形し、焼いたものです。兜は別部品。顔の上にかぶせると、円い眼当てと開口部が重なり、まるで儀式用の防護面のようになります。外すと、下から別の顔が出る。遊びではなく、合わせ目が正確です。
この一体は、宮廷の小人を表していると考えられています。マヤの宮廷で小人は、道化ではありません。王の側近であり、霊的な仲介者でもありました。兜を着けた小人は、儀礼的な格闘、あるいは雨を呼ぶための戦いの準備をしている、という読みが有力です。
同じ円陣には、鹿の兜をかぶった小人、巻貝のラッパを持つ者、書記、貴婦人、恍惚の表情の女性シャーマンもいます。王の復活や、トウモロコシの再生を演じる宮廷劇を、土で固定した模型だ、と見る研究者がいます。
なぜ外れるのか
マヤの墓からは、着脱式の頭飾りを持つ土偶がほかにも出ます。カンペチェのハイナ島様式では、球戯者の羽根飾りが外れる例があります。ベラクルス沿岸のノピロアでも、ヘルメットが別部品の立像があります。
共通するのは、「完成した姿」と「素顔」を一つの人形が持てることです。祭りの最中、役者が仮面を外す瞬間を、焼き物が再現しているのかもしれません。あるいは、死後の儀礼で、被葬者の前で人形を動かして見せたのかもしれません。紐や革は残っていないので、動かし方までは分かりません。
テオティワカンにも、関節で手足が動く土偶や、兜をかぶった頭部はあります。都市の職人は、人体を部品に分けて作りました。ただし、今回話題になっている「外れるヘルメットの小人」は、太陽と月のピラミッドの下から出たものではありません。画像がテオティワカン付きで拡散しただけの、取り違えです。
墓の中の劇場
埋葬39の23体は、副葬品というより配役です。王が死んだあと、宮廷は一つの場面を土で残しました。
兜を外す。顔が現れる。雨を呼び、地下へ通じ、王を再生させる。
エル・ペル=ワカの小さな戦士は、こう残っています。
1500年前の宮廷は、仮面を「被るもの」だけでなく、「外して見せるもの」として設計していた、と。
※画像はInstagramに載せてあります。
https://www.instagram.com/p/DeD3yfun5Ji/?mdxt=MTlvYXB1NjRhemN5NA==




