第20話 「海底に眠る謎の階段状巨石構造」――与那国島海底遺跡(Yonaguni Monument)
沖縄県の最西端、台湾から約110kmの位置に浮かぶ与那国島。その南東沖合、水深5〜40mの海底に、巨大で不可解な岩の構造物が広がっています。これが1990年代以降、世界中で大きな論争を呼んでいる与那国島海底遺跡です。
1986年、地元与那国島のダイバー新嵩喜八郎氏が、魚を探している最中に偶然発見しました。当初は「ただの奇妙な岩場」と思われていましたが、1990年代に海底考古学者の木村政昭教授(当時琉球大学)が本格調査を開始したことで、世界的な注目を集めました。
構造物の驚異的な特徴
海底に沈む主構造物は、長さ約150m、幅約40m、高さ約25mにも及ぶ巨大な岩塊です。主な特徴は以下の通りです:
•階段状のテラス構造:規則的な階段が何段にもわたって続いている
•直角の角と平坦な表面:90度に近い正確な直角が多く見られ、人工的に加工されたように見える
•溝や通路:平行に走る溝や、トンネル状の穴
•巨石のブロック:一部がまるで切り出されたような形状
•道路のような構造:長い直線状の「道」が続いている部分
特に「メイン・モニュメント」と呼ばれる部分は、巨大な階段状ピラミッドのようにも見え、水深約25mの場所に鎮座しています。周辺には複数の同様の構造物が点在しており、総面積はかなり広範囲にわたります。
(与那国島海底遺跡の水中写真。階段状の巨石構造がはっきり確認できる実写 画像は全てinstagramの画像置き場に置きました。https://www.instagram.com/p/DaHqm9LFJGY/?igsh=bnM1MzFjamF3cWN6)
人工説 vs 自然説の激しい論争
この遺跡をめぐっては、20年以上にわたり激しい議論が続いています。
人工説の主な主張(木村政昭教授ら):
•直角や平行な溝は自然の浸食では説明しにくい
•階段の規則性と対称性
•巨石に工具で削ったような跡
•周辺から出土した石器や火山灰層の年代が約1万年前を示す
•海面上昇により約1万年前に水没した可能性(最終氷期末の海面上昇)
自然説の主流意見(地質学者ら):
•砂岩(ミクナイト砂岩)の自然な割れ目と波による浸食で形成されたもの
•似た地形は世界各地(例:オーストラリアなど)にも存在
•人工的な加工跡とされる部分も、砂岩の層理と風化で説明可能
•決定的な人工物(道具、文字、住居跡など)が発見されていない
木村教授は長年の調査で「少なくとも一部は人工的に加工された」と主張し続けていますが、国際的な考古学界の主流は「自然地形」とする見解が優勢です。
(水中から撮影された直角の角と階段部分のクローズアップ写真)
時代背景とロマン
与那国島周辺は、最終氷期には台湾や大陸と陸続きだった可能性が高く、約1万2千〜1万年前に海面上昇で水没したとされます。もしこの構造物が人工物だとしたら、縄文時代よりもさらに古い「未知の海洋文明」が存在したことになります。
現地与那国島には、古くから「海底に神の宮殿がある」という伝説が残っており、発見後も地元では「神の遺産」として語り継がれています。
現在もダイビングツアーで一般観光客が見学可能ですが、潮流が強く、潜るには高い技術が必要です。気候変動によるサンゴの影響や、海底侵食も懸念されています。
与那国島海底遺跡は、「人類の歴史は、まだ海底に多くの秘密を隠している」という強烈なメッセージを、私たちに投げかけ続けています。
小さな島の沖合に沈む巨石の階段は、1万年前の人々が海と大地とを繋ごうとした、壮大な夢の残骸なのか——それとも、ただの自然の造形物なのか。
答えはまだ、透明な沖縄の海の中に静かに眠っています。




