第16話 「世界で最も謎の写本」――ヴォイニッチ手稿
1912年、ポーランド出身の古書商ウィルフリッド・ヴォイニッチは、イタリアの古書店で一冊の奇妙な写本を購入した。それが現在、世界で最も有名な未解読の謎の書物となったヴォイニッチ手稿である。
この写本は、15世紀初頭(おおよそ1404〜1438年)に作成されたとされる、羊皮紙でできた約240ページの冊子だ。現在はアメリカのイェール大学ビネック稀覯本図書館に所蔵されている。
最大の謎は文字にある。
•約25文字からなる未知の文字体系で全文が書かれている
•既知のどの言語とも一致しない
•単語の繰り返しや統計的特徴はあるが、意味は全く解読されていない
(ヴォイニッチ手稿の代表的なページ。高解像度で撮影された植物図と未知の文字が並ぶ実写 以下画像はinstagramの画像置き場をご参照ください。https://www.instagram.com/p/DY_MNcVlAPU/?igsh=bGhmbWVrbDFmOW9l)
内容はさらに不可解だ。
•植物篇:200点以上の奇妙な植物の精密な彩色画(現実には存在しない植物が多い)
•天文篇:円形の星座図や天体図
•生物篇:裸の女性たちが奇妙な浴槽や管の中で泳ぐような図
•薬草篇:容器に入った液体や根の図
•最後のページ:円形の星座図のようなものと、謎の文字
これらのイラストは当時のヨーロッパの知識とは大きく異なり、「未知の文明の知識」「幻覚植物の記録」「錬金術書」など様々な解釈を生んでいる。
これまで多くの暗号学者、言語学者、AI研究者が挑んだが、すべて失敗。カーボン年代測定では15世紀初頭、インクや絵具も同時代のものであることが確認されているため、後世の偽書説はほぼ否定されている。
(ヴォイニッチ手稿の有名な「女性の浴図」ページ。奇妙な管と浴槽の中で描かれた女性たち)
主な仮説
•暗号説:当時の貴族や科学者が秘密を記したもの
•人工言語説:全く新しい言語を創作した
•幻覚・薬草説:シャーマン的な植物知識の記録
•異星人・失われた文明説(オカルト寄り):地球外の知識や古代の高度文明の遺産
2020年代に入っても部分的な単語解読の報告はあるが、全体の意味は依然として謎に包まれている。この写本は「解読された瞬間に、人類の歴史観が変わるかもしれない」と言われ続けている。
ヴォイニッチ手稿は、羊皮紙の奥に静かに微笑みながら、600年以上もの間、私たちに「知らない世界」の扉を閉ざし続けている。
このエピソードはすべて実在の写本情報(イェール大学公式資料、科学的研究論文など)に基づいています。




