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23.城塞都市の異常


 セガナドの壁内は、高低差のある街だった。


 古い砦をそのまま街に作り替えた故か、街路より高い位置に家屋や商店が並び立つ。

建物の外観も黄色い煉瓦のような材質に統一されており、まさに城塞都市の例にそぐわない、砦と一体化した街、という情景だ。


 ガイセルよりも入り組み、複雑な構造の街中を進み、俺達は早速遠距離転移水晶を管理している『転移場』へと足を運んだ。


 これでようやく、厄介なアンデッドを手放せる——なら良かったのだが。


「——臨時休業って、マジで言ってんのかよ……」


「まさか、運用の為の魔水晶が在庫切れとはな……」


 二人して、茜色の空を眺めながら、街路のベンチに腰掛け、項垂れる。


 結構大変な目に遭ってまでセガナドに辿り着いたってのに、肝心の目的が達成出来ないってのは、流石に精神に堪えるものだ。


「つか、魔水晶が在庫切れってなんだよ。膨大な魔力の塊である魔水晶が無くなるって、おかしくねえか?」


「そうか?魔水晶が内包する魔力に限りがあるなら、酷使していればいつかは枯渇するんじゃないか?」


「それはそうなんだけどよ……俺が言いたいのは……」


 俺は背もたれによりかけていた姿勢を直し、前屈みになる。


「アンタの話を聞く限り、セガナドにとって遠距離転移でやってくる観光客は都市の生命線になる収入源だ。だから、その心臓部である魔水晶の管理は、徹底されてたはず。少なくとも、在庫切れでしばらく運用出来なくなる、なんて自体になるほど放ってはおかないだろ」


 魔力資源と呼ばれる魔石や魔水晶が不足している、なんて話も聞かないし、この都市の発展具合を見るに、仕入れる事も無理な話ではないはずだ。


「それは確かにそうだが、現に今そうなっている訳だろう?」


「もし仮にだが、在庫として保管していた魔水晶を、誰かが盗んだとしたらどうだ?転売、もしくは魔法儀式の触媒として。この辺が妥当だろうよ」


 魔石とは比べ物にならない、膨大な魔力を内包した魔水晶の使い道なんて、いくらでもある。

実際、魔法師の多くは大規模な魔法儀式を施す際、魔水晶を使って不足分の魔力を補うらしい。


「つまり貴様は、魔水晶の在庫切れは、厳重に保管されていたであろうそれが何者かによって盗み出されたのが原因だ、そう言いたいのか?」


「そうじゃなきゃ、遠距離転移の使用停止なんてこの城塞都市の情勢に大打撃を与える真似、しないだろ」


 俺はリブの顔に向き、笑ってみせる。


「あくまで可能性の話だけど、結構良い線行ってんじゃねえか?」


 我ながら中々的を射た推理なんじゃないだろうか?


「ドヤ顔を浮かべているところ悪いが、その根拠は?」


「……あ?根拠?」


「どれだけ状況証拠で立派な仮説を並べ立てても、それを裏付ける根拠が無ければ、推理とは言わん。そんなもの、ただ貴様個人の妄想に過ぎない」


「ぐぬっ……」


「巷で流行っている推理文芸書の真似事がしたいなら、まずはその登場人物たちがどうやって事件を解決しているのか理解するところからだな。三流探偵どの」


 こ、このクソアンデッド……!

最近コイツ、俺が施法者だって忘れてるんじゃないだろうな!


「こ、こんなのあくまで仮の話だ!マジに受け止めんな!」


 生意気に正論をかますアンデッドから、俺は顔を逸らした。


「自分の不都合を指摘されてすぐ不貞腐れるのは、貴様の悪癖だな」


 リブは呆れたように言うと、立ち上がった。


「なら、調べてみようじゃないか。貴様の仮の話が妄想なのか、それとも名推理なのか」


「……は?なんで?」


 リブの提案に一瞬呆気に取られ、尋ね返す。

そんな探偵みたいな真似事、わざわざやる意味があるのか、と。


「このまま座して待っていても、遠距離転移の運用が再開するとも限らん。ならば、こちらで独自に動いてみるのも悪い考えではないだろう。原因がはっきり分かれば、こちらの待機時間も逆算しやすい」


 まぁ、確かに理には適っているが……


「そうは言っても、どうやって調べる気だ?此処に着いたばっかの俺達には、情報源どころか都市の現状すら頭に入ってねえんだぞ?」


「この都市で何かが起きているなら、そこに住む人間に聞くのが一番良い。都市の代表格や役人なんかを訪ねるのは難しいだろうが、地道に聞いていけば、有力な情報が得られるはずだ」


「……アンタって、基本パワープレイで解決しようとするよな」


 剣技に関しても「振れば当たる」なんて言い出す始末だし、なんて言うか、基本勢い任せな性分のようだ。


 するとリブは、口元をヘラッと歪めて見せた。


「少なくとも、根拠もなしに自分の妄想だけを並べ立てるよりかは、遥かにマシだと思うが?」


「あ?煽ってんのか?」


「私はただ思った事を述べたまでだが、おや、怒らせてしまったかな」


 俺を馬鹿にするような表情のまま、リブは更に煽ってくる。


 言わせておけば良い気になりやがって。


「上等だこの脳筋クソアンデッド!俺の仮説がどれだけ的を射ているか、証明してやろうじゃねえか!」


「フンッ、貴様のような外道に果たしてロクな調査が出来るのか、見ものだな」


「そこまで煽ったからには覚悟しとけよ!もし俺の仮説が正しければ、アンタは今後の旅路、二度と俺の命令に意見するな!」


「良いだろう!その代わり、貴様の仮説が何一つ的を射ていなければ、今後の旅路では私の指示に従ってもらう!」


「やってやろうじゃねえか!後で吠え面かいても知らねえからな!」


「それはこっちのセリフだ!」


 互いに睨み合い、火花を散らす俺とリブ。


 かくして、俺達の不毛な勝負が幕を開けた。

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