10.チート能力を魔王に説明。そして修行の決意
隠されていた真の能力を一通り把握してから、
俺は今日行わなければならない2つの計画を立てていた。
①サタンに自分の本当の能力を打ち明けること
②剣の師匠を紹介して欲しいと頼み込むこと。
うーん。単純明快でよろしい!
ようは、剣を扱える有能な師匠をつけてほしいという旨をやんわりと伝えればいいのだ。
サタンも俺の要件を快く承諾してくれるだろう。
向こうからしてみても、俺が強くなって損はない。
むしろ願ったりかなったりの展開だ。
「よし……そうと決まれば早速サタンのところへ行くか!」
※
「ゾーマ、どうしたんじゃ?」
「父様……どうしたんですか、そのお顔」
サタンの顔はとても憔悴しきっていた。
目もクマだらけだし、何より表情に生気が感じられなかった。
「……お前を一人前の魔族にするためには、どうすれば良いかを考えてたんじゃ……」
サタンの周りには、沢山の本がバラバラに並べられていた。
主な本の種類は、魔法の教育本や、1から魔力を鍛える本や、魔力が無くなる病気についての本。
これら全ての本を、俺のためにわざわざ用意して、この時間になるまで読んでくれていたのか。
感謝の気持ちが溢れてくる。
でも、もうそんなに苦しまなくてもいいんだぞ。
何故かって?
俺には全属性持ちのサタンよりもチートスキルが宿っているんだからな!
「お父様、これを見てください」
俺はついさっき見つけた黄金の水晶をサタンに渡す。
「お前これ、どこで見つけた――な、何じゃこのスキルは!」
水晶の中を見るや否や、
サタンの表情は先程までの疲れ切った顔から激変し、驚愕の物になっていた。
「レア度SSが5つもあるじゃと……信じられん。レア度SSは歴代の魔王でも誰一人として持ち合わせていない、超レアなスキルじゃぞ? 魔界の歴史の中でも【剣聖】しか宿していなかった幻のスキルじゃぞ?」
まだ信じられないのか、サタンは俺の水晶を交互に見ては驚声をあげていた。
「これだけのスキルがあれば、例え魔法が使えなくても、何かの戦術を限界まで心得れば十分強くなれると思います」
「そ、そうじゃな! これらのスキルを上手く活用すれば、お前は魔王に相応しい存在になれる!」
ここまでは計画通りだ。
あとは、俺に優秀な剣の師匠を付けてくださいと頼むだけ。
「弓、剣、拳、槍、斧。この世界には沢山の戦術がありますが、僕はその中でも剣術を極めたいと思います。そのためには、優秀な師匠が必要です。
お父様の知り合いに、そう言った方はおりませんか?」
サタンは数秒ほど思案顔をし、答えた
「いるぞ! 立派な適任者が! 」
「いるんですか!」
やっぱりいたか!
流石サタンだ。その人望の厚さと人脈の広さ、魔王の名は伊達じゃない!
「そいつは剣技においては魔界最強と謡われた女騎士じゃ。お前さんを立派な剣士として導いてくれるじゃろう」
しかも女の子なのか!
「その女性は可愛いですか?」
「おお! レイナスの次に美人じゃな!」
おお! これはもしかして、ピンク色の展開もあるんじゃないのか?
剣の師匠を貰っただけじゃなく、その師匠も美人だなんて。
致せりつくせりとはこの事だな。
「じゃが、あまり浮かれるなよ。お前さんには剣術だけじゃなく、勉強や格闘術もきっちりと叩き込んでやる!」
「か、格闘術もですか?」
「おう。吾輩が直々に稽古をつけてやるぞ!」
サタンは鬼畜な笑みを浮かべてから、俺の背中をバンバンと叩いた。
鉄鋼ですら砕くと言われているサタンの腕力に、
俺はこれから毎日挑まないとならないのか……
まあ、これで強くなれるなら良いけど、何ていうか、怖い。
「さあ、そろそろ昼飯の時間じゃ。リビングへ行こう」
これからやってくる恐怖に震えている俺をよそに、サタンは席を立ち、散らばった本を整頓しはじめた。
当然、俺も手伝う。
「ゾーマよ……確かに、お前は凄いスキルを持ったが、それでもこれから進む道は険しい物じゃぞ」
「そうですね……」
サタンの言う通りだ。
恵まれたスキルを持ったとはいえ、それでも魔法が使えないという弱点は大きな問題だ。
魔法は便利だ。
簡単に火や氷を出せるし、邪魔な障害があれば風を起こして吹き飛ばせばいい。
怪我だって治癒魔法で治せるし、移動したければ転移魔法でどこでも行けてしまう。
それに対して、俺はただ相手の攻撃を打ち消して、攻撃するだけだ。
戦かい方は物凄く限られているし、
それが本当に並み居る魔法使いに通用するかわからない。
例え結果を出せたとしても、魔法主義である魔界では認められず、心無い非難をされてしまう可能性だってある。
特にサタンの第二、第三夫人の奴等は、
俺を魔王後継者の座から蹴落とすため色々画策してくるかもしれない。
「魔法至上主義のこの世界で、魔法が使えないお前が生きていくのはとても辛いと思う。吾輩はお前に似た境遇で生きていた女を知っている。彼女も生涯をかけて魔法至上主義と戦ったが沢山傷付き、最後には人の道からも外れてしまった。吾輩はお前がそうなってしまうのでは無いかと思うと・・・不安なのじゃ」
サタンは陰りのある表情を浮かべながら、頬にある傷をそっと撫でる。
この傷がいったい何の傷なのか、
誰に付けられたのかはわからない。
きっと、その彼女に付けられたものなのだろう。
その彼女も誰かは存じないが、俺はその人と同じ末路は辿らない。
「心配いりませんよ。僕はこの身1つで強くなってみせます。そして約束通り王学で首席合格を勝ち取り、この世界の魔法至上主義という風潮をひっくり返してみせますよ!」
確かに俺がこれから歩む道は途方もなく長く、険しい道だ。
それでも、俺の進む先はこの茨の道しかない。
なら、進むしかないのだ
他の奴等が歩んでいる道よりも過酷な道だが、
歩き終えた時、俺は他の奴等よりもきっと強くなっているはずだ。
「そうか・・・魔法至上主義のこの世界じゃが、才能や身分などを無視した実力主義を謳っている王学なら、もしかしたら頂点になれるかもしれんの・・・そこでお前の力が認められれば、吾輩は満足じゃ」
俺の覚悟が伝わったのか、サタンは快活に笑った。
「その逆境にもめげない心強さ、流石吾輩の息子じゃ。安心しろ、お前ならきっと強い魔族を目指せる! だってお前は、吾輩とレイナスの子でもあり、この世界の新たな王なのじゃからな!」
「お父様……」
『お前さんに、魔界の半分、いや全てをやろう!』
俺は何故か、かつてのサタンの言葉を思い出していた。
サタンはあの頃と変わらず、今でも俺に魔界全てを与える気でいてくれている。
魔力も、魔法もない俺に対し、サタンはまだ俺を信じ、期待してくれているのだ。
それがとても嬉しかった。
「ハイ! 絶対に立派な魔王になって見せます!」
勇者が魔界を襲ってくるまであと5年。
その年月は、長いようであっという間に過ぎていく。
5年後の俺は、魔王に貰ったこの世界の全てを、
ちゃんと守り切れているのだろうか?
その結論は、今の俺にはまだわからない。
しかし、答えを出すのはこれからの俺だ。
ーー勇者が来るまで、あと5年




