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それから。

本日3回目の更新。

久しぶりに頑張りました。


前半はアイラ、後半はリュシン視点です!

あれから、お城の中はちょっとした騒動が起こっているらしい。

あの傲慢騎士の計画に協力したのはあのメイドさんだけじゃなかったようで、協力者全員の処罰と、私の世話をするメイドさんや部屋の周りを警護する騎士様などの人員の、厳しい見直しがされる事になった。

しばらく騒がしくなるからと、私は休養を兼ねて旅行に行く事になった。

行き先は極々一部の人だけが知る、極秘扱いの旅行らしい。

費用は全て、宰相様が出して下さった。

宰相様は、傲慢騎士の計画とは無関係だった。

けれど元々、彼を推挙し私に引き合わせたのは自分だからと、その事に物凄く責任を感じて、深く謝罪してくれた。

王様にも、自ら一年の減給と休暇の返上を申し出て、今まで以上に身を粉にして働く覚悟だそうだ。

……減給申し出たのに旅行の費用全額負担なんて、いいのかな、とちょっと思う。

まあ、宰相って高給取りだろうし……旅行の一回くらい、大丈夫なのかな?

高級そうなホテルの、豪華な一室を見渡しながら、そんな事を心配する庶民な私である。

今いるのは、かつてリュシンさんに借りて見た"カストール王国名所百選"に載っていた海辺の街だ。

この街の海と砂浜は、どこまでも広がるコバルトブルーと、キラキラと輝く金色のコントラストがとても綺麗だと、それはもう有名らしい。

そして……。

そのすぐ近くにある、海と砂浜が一望できる灯台には、これまた有名なジンクスがあるらしく……。

朝、太陽が海から顔を出したその時に、異性に告白すると成就する、らしいのだ。

何がどうしてそんなジンクスができたのかは知らない。

知らない、けど…………そんなジンクスに、背中を押してもらうのは、悪い事ではない、と、思う。

リュシンさんは、既に誘った。

誘ってしまった。

あとは、明日の朝、件の灯台で、ジンクスを信じて勇気を出すだけ。

断られる要素も、考えつく限りない。

ない………………はず。

うん、大丈夫、大丈夫……。


「ああ、もう、これ以上考えてても不安になるだけだ、ちょっと早いけどもう寝ちゃおう! うん、そうしよう!」


緊張で眠れない危険がある事は、十分にわかっている。

だから、対策もバッチリだ。

フェイさんにお願いして、ベッドに入ったらすぐに眠れる魔法と、明日の朝寝過ごさず起きれる魔法も、かけて貰った。

勝負は明日。

頑張って、勇気を出すんだ。

そんな決意を胸に、私はベッドに潜り込んだ。


★  ☆  ★  ☆  ★


「ん……? ……リュシン? どこ行くんだ?」

「ああ、起こしたか。悪いフェイ。二人でちょっと出かけてくる」


早朝、着替えていると、動く気配を感じたのか、フェイが目を擦りながら起き上がって声をかけてきた。

できるだけ音は立てないようにしていたが、気配を消す事はしなかったから、やっぱり起こしてしまったらしい。

俺は目線だけをフェイに向け、謝罪と外出する事を告げた。

するとフェイは僅かに眉を寄せ、怪訝な眼差しを向けてきた。


「出かける? ……ああ、そういえば、アイラさんから朝早く起きれるように魔法をって頼まれたっけ。あれって出かけるからだったのか。けど、何で二人で? 僕も行くよ。すぐ支度するからちょっと待って。二人の世界作りたいなら、ある程度離れてれば問題ないだろ?」


そう言って、フェイはベッドを出て、俺のいるクローゼットの前へ向かって歩いて来た。

俺達は護衛だ。

アイラさんを助けられる距離に常にいるのがその仕事。

まして、あんな事があったすぐ後では、離れるわけにはいかないだろう。

あれは、夜間に部屋の前に立つ近衛騎士を過信し離れた、俺達の失態だったのだから。

けれど、今回は、それに頷くわけにはいかない。


「いや、二人で行く。……誘われたのは、灯台なんだ。アイラさんは、俺が責任もって守るから、二人で行かせてくれ」

「灯台? 灯台って……ああ、なるほど。けどなぁ……ん~……。……わかった、なら留守番してるよ。けど、今の言葉、絶対に守れよ?」

「ああ。悪いな、感謝する」


溜め息を吐きながら渋々承諾し、その代わりとばかりに念を押すフェイに、苦笑しつつ礼を返した。

するとフェイはその話は終わりだとでも言うように

表情を一変させ、誇らしげに胸を張った。


「けど、そうか、灯台か。あそこのジンクスは本当だぞ~。何しろ経験者がここにいるんだからなっ」

「そうみたいだな」


何を言うかと思えば、その話か。

当時、ジンクスを信じて告白を決意し、リリーを誘ったものの、当日まで延々と不安だなんだとグチグチとフェイの気持ちの吐露につき合わされた事を思い出す。

あの時のフェイに比べたら、俺は恵まれているな。

何しろ、フラれる心配なんて皆無だ。


「で? リュシン。誘われたって事は、アイラさんに言わせるわけ?」

「まさか。俺は、そんな根性なしじゃない」

「そ。じゃ、僕はもう一度寝直すから。行ってらっしゃい、ごゆっくり~」

「ああ。行ってくる」


俺の返事に満足げに頷き、ベッドに戻りながらヒラヒラと手を振るフェイに背を向け、俺は部屋を後にした。

これにて完結です。

最後までお読み戴き、ありがとうございました!

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