23.ロビン・スティーブンス『お嬢さま学校にはふさわしくない死体: 英国少女探偵の事件簿』(2014)
またまたご無沙汰しております。
異世界恋愛ミステリ推進協議会事務局、琥珀でございます。
みんな大好き、女子バディ物ミステリのおもろいのめっけたー!ということでご紹介なのです。
例によって乱文お許しくださいませ…
★『お嬢さま学校にはふさわしくない死体』
1934年のイギリス。
香港の銀行家の娘、ヘイゼル・ウォン(13歳)は遠路はるばるイギリスの女子寄宿学校に編入してきます。
息子はとにかく、娘をほいほい海外留学させる時代ではないのですが、知り合いが娘をカイロの寄宿学校に入れたので、うちの賢いヘイゼルならイギリス留学いけるぞーい!とパパが吹き上がってもうたのです。
パパ自身、3作目でイートン出身だと記述があり、もともとイギリス風の洋館で暮らして、英語もばっちり教え込まれていたという事情もありで。
なにぶん、時代が時代なので、ヘイゼルは唯一の東洋人生徒。
良い子にしていれば褒められていた香港とは違い、大人に従順=クソつまんねーヤツと舐められていまう学校文化の違いに戸惑いつつ、陰に陽に中国人disくらったりもしつつ、なんとかかんとか適応していきます。
特に仲良くなったのが、金髪の貴族のお嬢様デイジー・ウェルズ。
ミステリが大好きなデイジーは、ラクロスで無双キメたりする、私が一番!私が正義!私ってサイコー!な一軍女子系なのですが(ヘイゼルは完全インドア派なので、ラクロスの授業は秒で沈没)、探偵活動に興味津々。
デイジーはヘイゼルを引き込んで探偵倶楽部を結成、自分は会長、ヘイゼルを書記として、おやつが消えた!とか身近な謎を解決していたのですが……
新任男性教師のせいで、先生達が、三角関係というか四角関係というか、どえらいこじれ方し始めたー!と思っていたら、ヘイゼルがなにやら死体発見!!!
というわけで、猪突猛進なデイジーはゴリゴリ捜査開始、ヘイゼルは「いやコレ、殺人事件やぞ?? 普通に危険やんけ??」とびびりつつも引きずられ〜というお話です。
作品自体は、ヘイゼルの手記という体裁。
これが第一作。
正直この第一作は、寄宿学校という舞台柄、登場人物が多くてごちゃごちゃしてる感があり、探偵活動のしょっぱなに、自分の好きな先生は容疑者リストから外そうとしてしまうデイジーの独善的な面が陰キャ気質の自分にはちょっとしんどいな…となったのですが、第二作『貴族屋敷の嘘つきなお茶会』からぐっと面白くなってきます。
★『貴族屋敷の嘘つきなお茶会』
1935年のイースター休暇、デイジーの誕生日会もあるしとデイジーの実家のフォーリンフォード邸に招かれたヘイゼル。
ついでに、デイジーにもツッコミ入れてくる強気女子キティと泣き虫のビーニーも招待されています。
んが、デイジーのママが顔はいいけどどうも詐欺師くさいカーティス氏を招待していて、なにやらいかがわしい雰囲気を漂わせており、呑気者のデイジーのパパもさすがにキレかけているところ。
デイジーの兄は、ママが顔だけ男に引っかかりがちなアホ女であることを既に知っていて、両親に冷笑的。
デイジーは、パパのことはなんだかんだで大好きだし、ママだってそんな悪い母親だと思いたくはないのですが、このママ結構やべーぞというのがどんどん友達の目にも明らかになってくると言う……
デイジーの誕生日会なのに、つらすぎるだろこれ!
どーすんだよ……ってなってたら、当然出てしまう死人。
しかも、状況からして一番怪しいの、デイジーパパやんけ!?
というわけで、パパが殺人犯なのかも…ママはほんとは浮気女なのかも…と苦悩しつつ探偵活動をゴリゴリ頑張ろうとするデイジー。
デイジーを気遣い励ましながら、とっとと真犯人見つけたらんと!と推理を頑張るヘイゼル。
大団円のあと、色々と家族に傷が残ってる気もしますがががが……
特に兄。あの兄、誰かケアしてあげて……
★『オリエント急行はお嬢様の出番』
そして第三作『オリエント急行はお嬢様の出番』は、ヘイゼルパパ登板回。
夏休み、娘を淑女に育てよう思うて留学させたのに、なんで殺人事件の解決とかしとるんじゃーい!と香港からやってきたヘイゼルパパに連れられて、ヘイゼルとデイジーはオリエント急行に。
ちなみにヘイゼルパパ、イギリス貴族のデイジーパパよりお金持ちっぽいです。
ヘイゼルパパの目算としては、イギリスの投資案件をさばきつつ、ヘイゼル&デイジーを手元において淑女らしくないことをやらかさんように監視、ついでにヨーロッパの文化を学ばせようというところ。
ま、デイジーは『オリエント急行殺人事件』(1934)をちゃっかり持ち込んで来てるんですけどね。
というわけで乗り込みました、イスタンブール行きの一等車。
他の乗客といいますと…
・潰れかかっていたダイエット薬の会社の経営者と、その妻(めっちゃお金持ち)
・お金持ちな妻の弟(売れない犯罪小説書き)
・お金持ちな妻にくっついてる謎霊媒
・お金持ちな妻が所有しているネックレスは自分のものだと主張するロシア出身の伯爵夫人と、アメリカ育ちの孫
・ここ数年、休業中のイリュージョニスト
などなど、なかなか濃いめのメンツ。
案の定、雰囲気ギスギスですなぁ…と思ってたら、またまた大発生する殺人事件!
しかも今度は密室だ!
しかし、パパはヘイゼルに探偵活動をさせるつもりは1ミリもなく、がっつりガードの構え。
んが、テロで線路が爆破されたとかで、列車は中途半端なところで動けなくなり、警察も来てくれない。
おまけに仮の捜査官ということになった若い医者は、どう見てもポンコツ。
ここはうちらがなんとかするしかないでしょ!ということで、二人がかりでなんとかかんとかパパをだまくらかして頑張るのです。
今作で印象強いのはヘイゼルパパ。
ヘイゼル視点なのでパパの容貌描写はほとんどないのですが、このパパ、絶対かっちょいいよね??ってなる素敵紳士ぶり。
気がついたら、『ラスト・エンペラー』のジョン・ローンで脳内再生してしまいました\(^o^)/
第一作、第二作と違い、国際列車が舞台なので、この時期のヨーロッパの緊張関係も背景に描きこまれています。
ユダヤ人の迫害も、問題になってきてる頃なので……
あと数年したら、ヨーロッパでも極東でも地獄が始まる。
デイジーはまだ大丈夫だろうけど(ロンドン空襲とかに巻き込まれなければ)、ヘイゼルパパ、ヘイゼル、その他登場人物の皆さん大丈夫かな…と、つい心配してしまいました。
それだけ、各キャラクターが魅力的ということですね。
いずれにしてもこのシリーズ、かなりがっつり、クリスティへのオマージュにあふれています。
第一作、女子寄宿学校で教師が殺される話といえば『鳩のなかの猫』、第二作は、クリスティ定番のイギリスのお屋敷で毒殺大発生展開、第三作はもちろん『オリエント急行殺人事件』。
オマージュきめつつ、探偵役が13〜14歳の中国人少女なので、事件を見る視点がだいぶ違い、その違いが自然に独自性になってるのがよい感じです。
ミステリ読み慣れてる人間だったら、あれ?これおかしくね?てなるポイントを事件発生時にぽーんと出しておいて、最後に回収していく手際も私は好きです。
自分の創作への気付きとしては……
次作の異世界恋愛ミステリで、全寮制の貴族学院を舞台にしようと思っているので、登場人物をあまりごちゃつかせない方がいいな!くらいしかないですががががが。
あと、ミステリに限らないことですが、キャラの魅力、人間関係のバランスの取り方が大事ですよね。
1作目はデイジーが強すぎ、ヘイゼルが弱すぎであんまりバランス良くなかったのが、2作目でバランスが良くなって、3作目もいい感じに回っているように思います。
自分の「公爵令嬢カタリナ」シリーズも、カタリナは強者キャラだけどジュリエットが素でツッコミ入れたり、本人が高笑いでボケたりするので、なんとかなってる気がしてきました(今頃気づいた)。
強者キャラがただ強いってだけの話って、おもんねーわですし。
そんなこんなで、「クリスティが好きな人」「女子バディ物が好きな人」にはマジでオススメできるシリーズです。
ただ原著は12冊出てるのに、翻訳は3作目まで。
3作目の翻訳が出たのは、2018年なので、もしかしてこの後の作品は翻訳出ないヤツ??
もっと言うと、ヘイゼルの妹をヒロインに据えた、第二次世界大戦下のシリーズも3作出てるっぽく、そっちも読みたいんだけどなんとかならんのかしららららら……
とか言いつつ、よいお年をー!




