第14食目:メゾアビレスのステーキ
翌日、学園で私は囲まれた。
「ルピアと昨日誰とあったの?」
ルピアはルピアで囲まれている。
「はい!エウロバさんという方に街の屋台の案内をしていました!」
「エウロバ……?」
「とっても楽しかったですよ!イモの塩かけとかを美味しく頂いていました!」
周りが困惑している。
そうこうしていると
「みんな、静まれ。席に着け」
あ、カリスナダさん。
みんな静かに座る。
「昨日の件で騒ぎになっているが、私の故郷の客人の案内で、同世代で食事好きなミルティアを選んだ。ルピアはミルティアが、変なものを食べさせないかの監視人だ」
「……あくまでも、案内人はミルティアでしたのね?」
「ああ、ルピアは途中で引き上げた」
周りは明らかにホッとしていた。
トイレなう。
「別に解説いりませんよ。要は、ルピアが特別な客人をもてなしたとなれば、ルピアがやっぱり最有力候補では?と思われたのでしょう?でも私らしいから、別件かなと」
「……なんか、たまにムカつくんだけど」
ルピア。
「まあ良いじゃないですか。マークされないのが一番ですよ」
学園の生徒、特に誰かの取り巻きには近づかないようにしていた。
有力候補と呼ばれる5人。ルピアを除いた4人と話したが、有力候補にふさわしい人格の持ち主だ。
要注意と言われたヤファさんもそう。
問題は取り巻きだ。
彼女たちこそが、転生体の幾末に人生がかかっているのだから。
でも今日は捕まった。
「貴女、来たばかりなのに生意気ね」
「すみませんです」
マイセクローラさんの取り巻きに囲まれる。
金の髪留めにいちゃもんを付けられたのだ。
あの人と同じ髪留めを付けていると。
「いい、転生体は特別なの。あの方と同じ物を付けるなんて恐れ多いわ」
まだ決まってないだろ、とか、あれは元々私が先に買ったんだ、とか思うが、反論はしない。
「気をつけますです」
そうこうしているうちに、マイセクローラさんが教室に戻る。
すると取り巻きの皆さんは一斉にいないくなる。
ヤファさんと違い、マイセクローラさんは、取り巻きの動きをよく思っていない。
バレたら注意するからだろう。
「滑稽ですね。でもずっとこんな所に閉じ込められて、候補生がどうこう言われたら、こうなるのかもです」
貴族もそうだった。
私は両親から無視をされ続けていた。
両親は領地のある貴族。
そこに仕える貴族もいた。
その連中は、仕える貴族の顔色をうかがいながら、誰に付くか、誰にのるか、そんな事しか考えていなかった。
それこそが貴族の生きる道だからだ。
負け組に乗れば、どんなに優秀でも冷遇される。
勝ち組に乗れば、どんな人格だろうが、無能だろうが、領地がもらえる。
結局、学園生もそう。
自分達が頂点に立てないと自覚すれば、誰につくか、甘い汁を吸うかしか考えない。
「どうせ甘い汁なら、私は蜜を飲みたいですね」
「……本当に、食べ物の事ばかり……」
教室に戻ってきたルピアがため息をつく。
「ルピア、私も色々考えているんですよ」
「素晴らしい事だわ。ちなみに今考えていることを教えて欲しいんだけど」
「蜜を如何に効率的に集めるかという議題をですね」
「……聞いたわたしがバカだった」
その日の夜、お出かけしました。
「まあ、ご苦労様会というかな」
おばあちゃんは相変わらずお酒。
「わたしは、結局なにもしてないですよ」
苦笑いするルピア。
「あれが最良なんだ。ミルティアみたいなのしかいないと思われても困る。というか、ルピアとエウロバは必ず顔合わせさせたかったしな」
「なんでですか?」
「ミルはもう気付いていたみたいだがな。エウロバは帝国でクーデターを起こす気だ。帝位簒奪を狙っている。帝国の次はアイツだ。ルピア、お前ともやり合う事になるからな」
「……ていい、さんだつ」
「今の皇帝と兄弟にロクなのがいない。なによりも深刻なのが今の皇帝に子が産まれないんだ」
「でも、その道のりは大変な筈です」
「単純にな、かつての帝国の制度の復活をさせればいい。元の帝国は公国の選挙で皇帝を選んでいたんだ」
「そんなこと、可能なんですか」
「反対する公国がある。それをエウロバは潰していこうとしている。金と、軍でね」
「龍姫様も悩んでおられるの。今の皇族はもう限界。エウロバへの継承やむなしと判断している。でも問題は神教。神教は、今の皇族に保護されてきた。聖女信仰の強い国であるアラニアの娘が皇帝なんて認める訳がない。神教への信仰心が篤い龍姫様はそこで悩んでいる」カリスナダさん。
「神教も揉めているって言ってませんでしたっけ?」
「ええ。ドラゴンの取り扱いでね。昔は友好的だったのよ。神皇はともかく、実務の人達は龍姫様と仲良くしていた。でも今は、そう言った人達がいなくなってしまった。龍姫様は神教で孤立してしまっている。それだけならばともかく……」カリスナダさんは苦しそうな顔。
「龍姫のもたらす黄金で腐りきったんだよ、神教はな。今の神皇の乱脈ぶりは目を覆うほどだ。平然と肉を食い、女を囲う。そんな滅茶苦茶な奴に、敵扱いされながらも、懸命に守ろうとする龍姫に同情するよ」
おばあちゃんが、同情とか言いながら楽しそうにしゃべる。
「龍姫は黄金を産み出すのですか」
「鉄、銀、金。奴は金属を生み出せるんだ。聖女様の奇跡もないのに、帝国と神教が対抗出来たのは、龍姫の力のおかげ。ところが、その帝国の皇帝は自壊しそうになるし、神教は腐りきった」
おばあちゃんは酒を飲み干す。
「他人事じゃない。我々もだ。聖女様の奇跡に甘えすぎだ。カリスナダに来てもらったのは本当にありがたかったんだ。我々は努力をしない。すぐ聖女様におすがりする。その結果がどうだ!無策な王族!軟弱な貴族共!まともに武器も扱えない兵士!まだ私の頃は骨のある人物は多かったが、昨今は本当に酷い!」
おばあちゃん、悪い酔い方。
「後宮の主はな、本来は外相として、聖女様の意見を、他国に伝える役割をするんだ。それがどうだ!あの女!!!美少年抱えて乱交騒ぎ。今はセッ○スのしすぎで依存症のようになっている!」
「ジュブさん、お酒飲みすぎです」
カリスナダさんがお酒を取り上げる。
「もう時代は変わらないといけない。ミルティア、ルピア、あんたらならこの大陸を変えられる。帝国は変わろうとしている。フェルラインの手紙を読んで確信した。龍姫は今の皇帝と、神教の頂点である神皇を見放した。まあ、信仰までは変えないようだが」
「私達が、変える」
「そうだ、ルピア。もうこの大陸にはロクな人材がいないんだよ。あんたならうまくやれる」
「おばあちゃん、難しい話はもういいので、ご飯食べさせてください」
「これは失礼したな!そうだ!この店にした理由はな!最高級の肉を出してくれる店なんだ!」
「素晴らしい!いただきます!」
「さあ、注文しようか」
出てきたお肉なのですが
「これ、なんのお肉なのですか?」
「はい。こちらはメゾアビレスという貴重な生き物のお肉となります」
「メゾアビレス???」
なんですか?それ?
「王族のために、特別に太らせたコウホークのことなんだよ」
おばあちゃん
「ふえー。名前まで変わるのですか」
「本当は庶民が食べるのはダメなんだ。貴族も許可されない。今回は私が特別にお願いしたから許されたんだが」
取りあえず口に運ぶと
「!!!!!!???」
じゅうって口で溶けた。
お肉が、お口で溶けた。
脂の旨みが口全体に広がる。
目を見ひらいて私は言った。
「王族は馬鹿やろうですか!?なんでこんなうまいものを隠してるんですか!?」
「だろ?そう思うだろう?」
うんうんと頷くおばあちゃん。
「王族が腐りきっていたのはよく分かりましたよ!ルピア!この大陸を変えましょう!こんな横暴が許されていたなんて!!!許せません!」
「食で、世界を語るな……」
ルピアが頭を抱えていたけれども。
「別に不平等がダメだなんて言いません!でも、隠すのは無しですよ!私はこの大陸を変えます!エウロバさんと合わせて、世界も変えてやりますよ!!!」
お肉をほおばりながら、私は力こぶを作った。




