各々応戦中①
『ハツギノ之月』の二節目の週。
精霊達の代理戦争とまで言われる今回の戦争は、極めて異端な戦争と呼ばれた。
一つ目の戦場はエルタニアとダンケルクの国境線上を別つのはシターニア大森林の『ルエ山脈』と連なる連山『エダン山脈』である。山は岩肌が多く、見た目は灰色と葉生い茂る岩山であるが、王都同士を結ぶ街道は急勾配もなく、なだらかなで幅広の道だ。
まだ精霊達が訪れる前まではエダン山脈街道がエルタニアとダンケルクとの貿易上での動脈だった。
しかしエダン山脈はこの戦争を機会に、戦争が終わった後もしばらくの間は完全封鎖される事となる。
「メロンソーダよ……仕掛け終わった後に聞くのもなんだが、この地雷は、やはり、その回収は不可能なのか?」
「そんなもの戦争が終わった後に考えればいーんじゃん?」
『……普通のゲームみたいに、時間経過で勝手に消える仕組みじゃあないんだね』
「そんなの再設置が面倒だろ?」
珍しくメロンソーダが微妙なやる気を持って外に出ていた。彼女の目的は単純に言えば地雷の試験記録だった。
そしてただの試作兵器だったことを、つい先程知らされたブラック・ラックとアリッサはどうしたものかと考えていた。
メロンソーダの作った地雷は符に魔法陣が描かれており、見た目は占いに使われるカードと同じ大きさのそれだ。
発動するのは簡単だ。ただ土の上で踏むだけでいい。
地雷は圧力を与える事で地脈より魔力を吸い上げ、地雷を中心に超重力圧縮空間を生み出す。圧縮された空間には周囲の物体が引き寄せられ、最後には魔法陣の描かれた符自体が崩壊し、今まで引き寄せていた物質が今度は反発しあうエネルギーに変化し、破壊的な現象を引き起こす。という代物だ。
つい先程、そうなってしまった大型ロボットに乗ったドワーフ4人がいた。
一人が一つの地雷を踏むと周囲のロボット達も引き寄せられ、最後には中の動力に亀裂が入り、最後には派手な爆発と共に全てが残骸となって岩と鉄屑のゴミの山が出来上がっていた。
「最高の結果だったな。やっぱ重力は偉大だな! じゃ、アタシは帰るから」
『……近いうちに解除できる魔法を今度作ってくれないかな?』
「気が向いたらな~」
メロンソーダは地雷の発動を確認すると満足して帰ってしまった。彼女には既に、地雷に関する興味はなくなっていた。
「おい、ラック。今のアレはやりそうにない反応だったぞ」
『……参ったな。これなら毒ガスの方が幾分かマシだった』
ちなみに今回、エダン山脈に仕掛けられた重力地雷の数は丁度100枚、今回の一年目戦争で消費された地雷の数は僅か11枚。
倒した大型ロボットの数は、30機を越えていたそうだ。
そしてメロンソーダも晴れて、異名“怠惰なる緑眼の魔女”を授かった。
・・・・・・・・・
同じく『ハツギノ之月』の二節目の週、その最終日であった。
エルタニア北部の辺境の地へ進軍するダンケルクのドワーフ兵達が確認されたそうだ。
北部で待ち構えているのは、吟遊詩人を自称する見た目がビジュアル系バンドのボーカルのような見た目の男性、奏だ。
彼は今、四つある黒い箱の一つに座って、眼前の敵を一人で眺めていた。
他の精霊付き(プレイヤー)はいない。孤軍奮闘どころか、孤独奮闘してくれという状態に、奏は不満を抱いていた。
「リト……あぁ、僕の友よ。一つ確認させてもらっても良いだろうか? 何故僕のところには仲間が一人もいないんだい?」
『そりゃあ、お前の戦闘スタイルが味方を巻き込むタイプだからよ』
「……聴き手がいないのにライブをするなんて、悲しすぎやしないかい?」
『観客ならいるだろう? 今まさに侵攻してきてる敵が観客さ』
奏は目の前に現れる大軍を見て、冷ややかな目になってぼやき始めた。
目前には、ドワーフがコックピットに搭乗している人型の大型ロボット数体と、無数に列を為した人型サイズのアンドロイド兵達。造形は単純で、棒人間のように四肢が細く、叩けば簡単に壊れてしまいそうな程に脆い、命なき兵隊だった。
武器は腕がそのまま銃口となっているようで、マガジンなどの交換もできない仕様となっている。
「アレはどうみても、彼等に僕のロックが理解できるとは思えないんだけど……」
『楽でいいじゃないか。ほら、早く演奏始めよう。やる前に殺されたんじゃあ、皆にどう顔向けしていいかわからないよ』
リトが一人でダウナー状態に入り込むと、奏が溜息を吐いてから、背中に担いだソレ――弦楽器を前に抱えて指の爪で弦を弾く体勢になる。
「……わかったよ。まあ要するに今回はオンリーワンマンライヴ、ノーギャラリーって事でいいなんでしょ。あーあ。やる気が欲しいなぁ」
『がんばって』
「応援が雑!! アーッチクショーッ!!」
奏が弦を弾くと、とてもこの世とは思えない……周囲を痺れさせる轟音を響かせた。
弦楽器には紫電が纏わりつき、今度は黒い箱から繋がる線に、弦楽器と繋いだ。オルレ庵が作った、奏専用に用意された戦略兵器である。
「俺の演奏で痺れなッ!!」




