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各自応戦中②

 ハヅキノ之月、3節目の始まり。


 エダン山脈の西側――ダンケルク側では、ドワーフ達がエルタニア進軍のための障害となる地雷地帯の打開策を求めていた。地雷となる物体は発見する事が難しく、一撃でレベル50越えのドワーフすら殺傷する破壊力から、彼等は無用な犠牲を避けるために打開策を求めた。


 精霊とドワーフ達はエダン山脈街道の地雷設置区画から大きく北側を迂回する進路を提案し、大型ロボットのキャタピラが機動できる程々の広さの道路新設が計画された。

 ドワーフ達は土木作業にも優れている種族である。



 邪魔な岩を砕いたり、退かしたりというのもお手の物である。ドワーフ等は文句一つ言わずに、精霊達の提案に従って北からの迂回路を作り始めた。



 だが、そんな彼等を目撃してしまった人物がエルタニア側に一人居た。

 空中を常に飛び回っていた鳥獣族のアモンだ。


 彼は雲がかかる程の高度でドワーフ達の行動を遠目で観察し、次なる敵の動きを確実に察知していた。


 アモンがエルタニア本陣に戻ると、武器開発にテコ入れされて、暇を持て余した見た目は小人のドワーフ族の錬金術師、オルレ庵がコレに対処する。



 オルレ庵はロン丼の提案の元、エダン山脈の中でも一番高い岩山を目指し、行動を開始する。絶壁の如く聳え立つ岩山を目指して登攀していた。そして一日掛けて頂上へと到着すると、オルレ庵は大きく膨れ上がったカバンの中から、小さな粉と、魔法水の入った試験管を取り出した。



『オルレ、準備はいい?』

「は、はい。……でも、その……本当にこんな事をしても、大丈夫なんでしょうか?」

『大丈夫ダイジョーブ! ちょっと山の形が変わるくらいなんて事ないわよ!』

「この毒、つかっちゃいけないって言われた事についてなんですが……」

『問題は味方が感染したらって話だったでしょう? その心配がなければ問題なーし!』

「う、うん。でもやっぱり、怖いなぁ。後で怒られちゃうのかなぁって思って」

『ああ! ブラックさんに怒られそうでビクビクするオルレ、激カワ……おっと、鼻血が……』



 オルレ庵はロン丼の反応を知って何事もなかったように作業を開始し、石化状態異常を引き起こす紫色の魔毒水を作り続けた。

 そして出来上がった魔毒水はガラス瓶に詰め込まれ、簡単に揮発してビン内の空気部分に紫色の煙を漂わせている。


 それを岩山の天辺に設置し、オルレ庵は頂上から少し降りた所で待機し、土魔法で徐々に岩の状態を砂へと変化させていく。魔毒水を設置した岩山の天辺が、徐々にバランスを崩していき、西のダンケルク側へと一本の岩となった頂上が倒壊して土砂崩れを引き起こした。


 同時に紫色の煙も頂上から吹き降りる風に乗って、下へ、下へと流されていく。



『さ、これで道路整備しているドワーフ達も動けなくなるわ。帰って報告しましょ』

「……うん」



 この時、オルレ庵は黙っていたが、ほんの少しだけ悩んでいた。


 同じドワーフを、それも同郷の者たちに対して、攻撃をしたことを……。


 自分の意志もあまり見せず、ただ空気と流れに身を任せてきたのだけれど、本当にこんな事をしてもよかったのだろうか、と。



 一方のロン丼は、そんな事を露とも思わなかった。




 ・・・・・・・・・




「暇だ……」

『暇って良い事ですよね』

『スノーちゃんの言うとおりだ』

『平和とは、そういうものだ』



 一方、シターニア大森林側の二人組と十数名のプレイヤー達は暇を持て余らせていた。


 ダンケルク国はどうやらシターニアを標的とは考えておらず、直接にエルタニアを目指して攻撃するつもりであったらしい。

 閑古鳥でも鳴くように、シターニア側の戦線は暇であった。


「……平和とかどうでもいいよ。そもそも活躍できない左遷組みたいな状況じゃね?」

『ゼタっち、今は我慢する時だ。その内、ドワーフ達もシターニア大森林に押し寄せてくるさ』

「その根拠はなんだよぉ」


 善太郎はやさぐれたように口を悪くしていったが、対する小田は冷静にこれまでの二週間の分析を行なっていた。


『多分だけど、あのダンケルクを仕切ってるダークブラックスミスって連中は、離反組の制裁をしてるんじゃないかな?』

「離反組の制裁? なんだ、その話」

『よくあるじゃん、自分の言う事聞かない連中を先に戦わせて無駄死にさせるって作戦。思ったよりも一気に攻め込んでこないからさ、多分そういう事だと思うんだよなぁ』

「連中はそこまで賢いのか? バッハさんを知ってると、全然そうとは思えん」

『利己主義な発想の持ち主なら、割と簡単に思いつくと思うんだけどねぇ。自分の意志にそぐわない奴は制裁するってさ』

「まるで独裁者だな」

『独裁者でしょ? ただチームが仕切ってるってなだけ、対して変わらんっしょ?』


 善太郎は馬鹿にした風に溜息を吐いて頭をかいていた。そしてそれも終わると、ついつい続けて質問を投じた。



「まあ、相手が仲間割れみたいな事してるってのはわかったけどさ、結局のところ、俺達の出番って何時になるんだよ……」



 結局、彼等はハヅキノ之月の三節目の終わりまで、戦闘という戦闘はしなかった。


遅くなりました。申し訳ございません。1月1日の分でございます。


もちろん今夜も投稿します。

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