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影と呼ばれた男  作者:
第1章 出会い
3/18

浩介 2

 浩介が連れられて行ったところは,小高い丘の上に建つ白い家だった。

中に入ると,広間になっていて,左右にドアがあった。左のドアはクリーム色,右にあるドアは緑色だ。左右のドアの側に,階段が付いており,上の方で一つになっているようだった。浩介はまず,上の階に連れて行かれた。

「こっちがおまえの部屋だ。」

右側の階段を上ったところに付いているドアを示して男は言い,開けて見せた。


 薄い茶色に塗られた壁。少し濃い茶色のカバーが掛かったベッド。机と椅子,窓には薄い緑色のカーテンが揺れていた。部屋の中のドアを指さし,

「ここが風呂だ。」

ドアを開けると,トイレとシャワー付きのお風呂,洗面台が見えた。

「こっちがクローゼット。」

開けてみると,服がすでに掛かっていた。

「神官にサイズを聞いてそろえておいた。多分合うはずだ。」


「この家の中はどこでも開けては行っていいが,1階の右側のドアだけは,許しがなければ入ってはいけない。色が緑色のドアだから,すぐに分かるよ。

・・まあ。普段は鍵がかかっているけどな。」

それから,荷物を置いて出るように即された。二人一緒に部屋を出ると,浩介の部屋の反対側のドアを示して男は言った。

「こっちは俺の部屋だ。用があったらノックを3回して,入れと言われたときだけ入ってこい。」

「用があって,入れと言われなかったときは?どうしたらいいの?」

「おや。口がきけるのか。」

神殿からほとんど口を開かなかった浩介が,いきなり話したので,少し驚いたらしい男は,そんな冗談を言った。

「いないときは返事ができん。いても,手が離せないときは駄目だと言う。」

 なるほど。

 この家のルールをしっかり頭にたたき込め。そんな声なき声が聞こえるようだった。


・・・・・

 

 もう少しで学園に進む年だ。そう言った男は,浩介に字や計算などを教え始めた。毎日午前中,いろいろなことを勉強した。午後は運動だ。走ったり,格闘技のようなものを教えてもらったり・・・

きっと,男は長い休暇を取っているのに違いないと浩介は思っていた。男が仕事で出かけるのを見たことがなかったからだ。

 毎日の食事は,通いの家政婦さんが作り置いてくれていた。掃除や洗濯もその人がしてくれる。

 

 男と二人の生活は,のんびり続いた。午後の運動の時間は,時には厳しくつらいこともあったが,それなりに充実しており,逃げ出したいとか,寂しいとか感じることはなかった。

 浩介は,男をどう呼べばいいのか分からなかった。最初に会ったとき,多分,名乗ってくれたのだろうが,

「好きに呼べ」

などと言われて,呼び方に迷ってしまったからだ。だから浩介は,すみません。あのう。などと話しかけていた。これについても男は何も言わなかった。

 


やがて浩介は小学部に入学した。小学部は結構離れたところにあったので,毎日歩いては行けない。送迎用の車が毎日来るようになった。

 送り迎えは,いつも同じ人で,男のことを局長と呼んでいた。浩介も,気が付くと,男を局長と呼ぶようになっていた。最初の頃,男は浩介がそう呼ぶたびに苦笑いをしていたが,訂正することもなかった。



 浩介が中学園に進む頃,中都国に政変が起こった。5カ国が1つになるための布石と言われたその政変で,沢山の人が亡くなったらしい。局長の白い家にもいくつかの変化があった。

 ・・しばらくの間,局長が家に帰ってこなかったのだ。その間も,学園への送り迎えは続いていたし,家政婦さんは朝晩の食事を作り置いてくれたし,掃除も洗濯もしてもらってはいたが・・・夜は誰もいない家に一人でいなければならなかった。

 

政変が落ち着いてしばらくたった頃,ようやく局長が帰ってきた。局長はかなり疲れている様子だった。

 次の日は休みの日で,二人で久しぶりに寝坊をした。ようやく起き出してきた局長に向かって,話があると言ってきた通いの家政婦さんと局長はしばらく話をしていた。ううん。とうなる声がした。何が起きたんだろう。

 不意に局長が朝食を摂っている浩介の方を向いて言った。

「今度からおまえが飯を作れ。」


 家政婦さんの家の事情で,1日に通える時間が限られてしまったらしい。ずっと言いたかったが,局長が帰ってこなかったので,朝晩,無理をして来ていたようだった。

「今更別の人間を雇うのも面倒だ。掃除と洗濯だけ頼んで,飯はおまえの担当だ。」


・・・・・


 局長に言われて浩介は料理の本を買い込んできた。

浩介が本を見ながら作った食事は,焦げていたり,見栄えが良くなかったりしたが,局長は文句も言わず食べていた。


 浩介はもう,15になろうとしていた。もうじき高学園だ。高学園に上がるとき,自分の守りがなんなのかはっきりする。15を過ぎるまでは,漠然としか自分の持っている力を知らないこの国の子ども達は,高学園に上がる年に神殿や学園で自分の持っている属性ををはっきりさせる検査を受ける。大体は,それを元に高学園からの学習が組まれるのだ。属性とは「人,星,地,天」の力のことだ。

 人は薬学や癒やしの力を持ち,

 星は占い・予知・予言などの力を 

 地は実りの力を

 天は滅多に現れない特性で,すべてを凌駕する力を持つらしい。

『天の力だといいな。』

漠然とした思いだが,浩介は何か出来る力が欲しいと思っていた。誰かのために使える力。


 この国の子ども達は,多かれ少なかれ4つの属性のどれかの力を持ち,言霊の守りを持つ。言霊の守りは,常に側にあるのだが,浩介の言霊がなんなのか・・・実は浩介は知らなかった。


 この国の子ども達は言霊の守りについては小さい頃から知っている。言霊から話しかけてくることもあるからだし,自然に分かってくることも多いからだ。

 しかし,浩介には言霊が話しかけては来なかったのだ。それが浩介の悩みだった。他の子ども達は自分の言霊がなんなのか知っている。言霊と会話も交わせる者さえいる。

 局長は自分の言霊が何かを神官に聞いて知っているのだろうか。浩介には分からなかった。自分でも分からない,自分の言霊を・・・局長は知っているのだろうか。



よく分からない表記がある場合,「金色の 菜の花畑の 向こうから」でお確かめください。

偶に矛盾もあるかと思いますが・・・

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