浩介 1
仮に 水戸 浩介 とこの男を呼ぼう。
母が亡くなってから・・・1年後・・・
浩介は「人,星,地,天」の神殿のうち,家からそんなに遠くなかった天の神殿で暮らしていた。ここでの暮らしも悪くない。母親はすでにいないし,父親も近くにいないが,時々は会いに来てくれる。食べ物も美味しいし,何より一人じゃない。
浩介は,神殿の中で今日も他の小さい子ども達と遊んでいた。
鬼ごっこ・・・ボール遊び・・・たわいもない遊びだが,みんな真剣に遊ぶのだ。遊びの時間は決められていて,それ以外は祈りと勉強の時間だ。だから子ども達にとっては,少ない遊びの時間は本当に貴重だった。
周りの子ども達は,親が早くに亡くなってしまい,育てる人がいない,またはいても,浩介のように,忙しくて家に帰ってこられないなどの事情で預けられている者ばかりだった。だからなのか,みんな驚くほど仲が良かった。ここで仲良くしなければひとりぼっちだ。ひとりぼっちは嫌だ。おそらくみんなそう思っていたのに違いない。
そんな中,浩介はいつものように鬼ごっこに興じていたのだが・・
「浩介君。」
神官の一人に呼ばれた浩介は,渋々遊びをやめて側に行った。そこで6歳になったばかりの浩介が聞かされたのは,父親の訃報だった。
呆然としてただただ立ち尽くすばかりの,まだ6歳の子どもには,死因も,どこで亡くなったのかもはっきり知らせてもらえなかった。
ただ,もう葬式は済んだということ,浩介には全く身寄りがいなくなったことを知らされただけだった。
そして神官は,浩介に父の形見を渡してこう言った。
「これから君はこの神殿を出ることになる。
心配するな。お父上の上司の方が君を引き取ってくださるそうだ。
そこで,幸せになるんだよ。」
神官は,浩介に荷物をまとめるために部屋に行くように言った。
のろのろと部屋に向かいながら,・・・でも・・浩介はどうしていいか分からなかった。
部屋の中に入ったとたん座り込んでしまった浩介・・・
・・・涙も出ない・・・悲しいと言うより途方に暮れている・・そんな感じだったのに違いない。
・・・どのくらいぼんやり座っていただろう。不意に4人部屋の戸が開き,一人の男が入ってきた。誰だ?
入ってきたのは灰色の髪,鋭い目つき,がっちりした体つきの男だった。
これが浩介と養父になる局長との出会いだった。
次回は明日です。




