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イマジナリーフレンドですが、異世界で実体化しました。〜偽物だった俺たちが、本物になるまで〜  作者: 老狼肉


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第0話 さよなら、世界

「はっはー!覚えておきな!

 俺が……孤高の!ガァンマン!

 双葉ふたば 檄哲げきてつ 様だ!」


年下の小学生達相手に、

BB弾を撃ちながら、

恥ずかしい口上を叫ぶ。

これが中学生の時の僕だった。


今思えば、普通に警察沙汰だ。

女の子が男の子たちにいじめられていた。

それを助けるためとはいえ、

BB弾を人に向けて撃っていい理由にはならない。

 

ぶかぶかのウェスタンハット。

似合わない革製のベルト。

プラスチックのリボルバー。

当時の僕はこの世界の主人公だと思ってた。

好きなガンアクション漫画の影響を受け、

見事に厨二病を発症していた。

気づけば二十歳になった今でも、

厨二病を少し引きずり、

モデルガンを作る会社で働いている。

おかげで銃の構造については詳しくなった。

もっとも、

この平和な日本じゃ、何の役にも立たないけど。


「はぁ……友達、欲しいなぁ……」

 厨二病を引きずっている影響か、

 未だにまともな友人のいない僕は、

 1人きりのオフィスでつぶやく。


{今更無理だろ。

 同窓会にだって呼ばれてないんだぜ?

 そんな虚しいこと言ってないで、

 さっさと帰ろうぜ。}


1人しかいないはずのオフィスで声が聞こえる。

この声の出所は、僕の頭の中からだ。


「無理だよ。

 明日までにこの企画書を完成させとかないと。」

 

 僕は頭の中の声に言い返す。

 

{いいじゃねぇか。サボって帰ろうぜ。

 俺らなら、きっとなんとかなるさ。}


 こいつの名前は、セカイ。

 僕のイマジナリーフレンドだ。


{ほら、帰ろうぜ。たまにくらい、いいだろ?

 俺も明日一緒に謝ってやるからさ!}


 まぁ、こんな風に僕に

 甘い言葉をささやいてくる悪魔ともいえる。

 空想上の存在がどうやって

 上司に謝意を伝えるのか気になるが……

 たまには、こいつの誘いにのっちゃうか。

 社会人初のさぼりだ。


 帰宅の準備をすすめていると、

 携帯の通知が鳴る。

 ナニシッター……SNSアプリからの通知だ。

 メッセージが来たらしい。


 メッセージにはこう書かれていた。


 「こんにちは。双葉さん。

 私、にのまえ あいです。

 小学生の時、あなたに助けてもらったんですけど、

 覚えてますか?」


 もしかして、あの時のいじめられてた少女だろうか?

 当時は助けた後に

「名乗るほどのものじゃない……」

 とかっこつけ、

 その場を後にしたから少女の名前は聞いていない。

 家に帰ってから、

 男子たちに思いきり名乗っていたのを思い返し

 布団で丸まったのも今ではいい思い出だ。


「覚えてます!あの、いじめられてた子ですよね?」


「はい……そうです……」


 しまった。


{ひでぇ聞き方。相手は忘れたいことだろうに。

 だーから、友達出来ねぇんだよな。俺以外の。}


 セカイのいう通りだ。


「あ、すみません。

 えっと、僕に何か用が?」


 慌てて話題を変えようとする。


「あの時のお礼がしたくて……

 今、○○駅前にいるので来てくれませんか?」


 そこは、偶然にも会社の最寄り駅だった。


「あっ、じゃあ今から行きます。

 着いたらまた連絡します」


 僕は即、返信をした。

 

 {おい!やめとけよ!絶対怪しいって!

 なんでたまたま最寄り駅なんかにいるんだよ!}

 

 セカイの言葉を無視して荷物を急いでまとめる。

 確かにかなり怪しいが、

 あの時の僕を見て、

 話したいと思ってくれるのがうれしかった。

 もしかしたら良い友人になってくれるかも。

 それに本当に待っているなら、

 この辺は人気が少なく少し治安が悪いので心配だ。

 最悪、何かあっても僕には「秘密兵器」がある。

 腰のベルトに秘密兵器を差し、上着で隠すと、

 期待と不安を胸に駅へと走った。


 {あーあ。変なことに巻き込むのだけは、

  勘弁してくれよな。}


 駅前に着くとそれらしき女性が一人で佇んでいる。

 パーカーにジーンズと、かなりシンプルな服装だが、

 彼女のスタイルの良さと

 綺麗な黒髪がそれを気にさせない。

 僕が声をかけようか迷っていると、

 相手の方から話しかけてきた。


「双葉さん!!会いたかった……」

 

 彼女は、嬉しそうな笑みを僕に向ける。

 その可愛い笑顔に、僕の心臓は高鳴った。


 {チョロいな……}


 頭の中でセカイにうるさいと言い、

 僕は口を開く。


「どうやって、僕のアカウントを?

 それになんで今更……」


 質問を投げかけると、

 彼女は笑顔のまま、答える。


「アカウントはたまたま見つけて……

 少し前の投稿で黒歴史ノートって

 あげてましたよね!

 それをみて、あの時の双葉さんだって、

 確信しました!」

 

 そういえば、

 少し前に中学の時に書いた設定ノートを投稿した。

 誰からも反応がなくて、

 逆に恥ずかしくなったんだよなぁ。

 

 「あの時のお礼をしたいと、

 ずっと思ってたんです!

 もしよろしければ、

 私とお友達になってくれませんか?」


 友達……。

 

 {友達ねぇ……

 あんな痛いことしてたやつとか?}


 残念だけど、僕も同意見だ。


「あんな、痛々しいことをしてた僕と友達に?」


 僕の言葉に、彼女は優しい声色で答える。


「普通の人は笑うかもしれません。

 でも、私はあなたに助けられました。

 だから笑いません。」


 まっすぐできれいな瞳の前に

 僕は目をそらしながら答える

 

「僕なんかでよければ……」

 

 {なさけねぇ……

 そしてチョレェ……}


「やった!

 それじゃあ、早速飲みにでも行きません?

 もちろん、私の奢りで!」


 そういいながら、少し離れると、

 手招きをする。


 僕たち二人は居酒屋に向かって歩き出す。


「双葉さんって、今でも銃がお好きなんですか?」


「まぁ、一応そういう職ですから……」


 {無職だとしても、好きだけどな。}


 うるさい。

 邪魔しないで。


 {へいへい。}


「あの時の双葉さん。本当にかっこよかった。

 当時読んでた漫画の主人公みたいで!」


「それってもしかして……」


「おーい。愛。探したぜ?」


 突然、一さんのことを呼ぶ声がする。

 声の方を見ると、

 一人の男性が煙のように

 ゆらゆらとこちらに歩いてくる。

 男はタバコをくわえ、火をつけながら、

 ぶつぶつと何かを言っている。


「お前が、お前が悪いんだ……

 俺は、こんなに愛してるのに……

 そんな男と……」


 まともな人間でないのは

 火を見るより明らかだった。


 {見たとこ、ストーカーってとこか?

 くそっ。だから嫌だったんだ。

 おい!早く逃げるぞ!}

 

 一さんは、男を見て震えている。


「そ、そんな……緋噛ひがみ……どうやって……。

 た、助けて。双葉さん……」


 今にも泣きだしそうな目で僕見つめる。

 友達に助けを求められた。

 誰かに頼られるのは、

 初めてだったかもしれない。

 

「大丈夫。僕が時間を稼ぐから、君は逃げて、

 警察を呼んで。」

 

 カッコつけようとしたけど、声は震えていた。

 一さんは、涙を流しながら、

 ごめんなさいと言って、走り出した。

 

{無理だ!警察が来るまで早くても10分はかかるぞ!

 お前もさっさと逃げろ!}


 今、逃げたら、この男は一さんを追う。

 それはできない。

 

{別にいいじゃねぇか!

 なんで他人にそこまでしてやる義理がある!

 あいつが、ちゃんと警察に連絡する

 保証もねぇんだぞ!}


 そうだね。

 でも、あの子を、友達を信じたい。

 

 それに僕にはこれがある。

 

 僕は秘密兵器を男に向け構える。

 僕が大切にしてきた、傷ひとつないリボルバー。

 

 冷たいグリップを握る。

 指に馴染んだ感触。

 何度も漫画の主人公みたいに構える練習をした、

 僕だけのもう1つの相棒。


 {お前、バカか!?}


 わかっている。


「と、止まらないと……撃ちます。」


 さっきよりも震えた声で、

 僕は男に警告する。


「ヒヒヒ。

 かっこいいねぇ。

 主人公気取りかぁ?」

 緋噛は不気味に笑いながら、

 ナイフを取り出す。

 

 震える僕の握るリボルバーを見て、

 緋噛は笑顔をやめ、真顔になる。


「……お前、人殺したことねぇだろ?」

 

 ゆらゆらと歩いていた

 緋噛は突然、走り出す。

 

 突然の行動に驚きながらも、

 リボルバーの引き金を引くが、

 火薬の音と匂いがむなしく残るだけで、弾は出ない。

 当然だ。これはモデルガンなのだから。


 音を気にした様子もなく緋噛は

 ナイフを僕に突き立てる。

 モデルガンの音で少しはひるむと考えていた僕は

 うまく反撃できず、胸に鋭い痛みを受ける。

 全身から力が抜け、

 手を離れたモデルガンは、

 乾いた音を立てて転がった。

 僕はその場に倒れ込み、動けなくなる。

 

「ヒヒヒ。

 なーんだ。偽物じゃねぇか。」

 

 緋噛は、僕の顔の前に吸殻を捨て、

 一さんを追いかけていった。

 

 僕の目線の先には、

 ヒビが入ったモデルガンが転がっている。

 

 あぁ、ダサい人生だった。

 {そうかもな。}

 女の子1人守れない。

 ちょっとした非日常を前に、

 もしかしたら、自分は主人公になれる気でいた。

 偽物のおもちゃを握って、

 強くなった気がしていた。

 このモデルガンと同じだ。

 あいつの言う通り。

 僕もまた、偽物だった。

 {そうだな。その通り}

 孤独がなくなる予感がしたが、

 そんな機会も逃してしまった。

 {それは違うな。俺がいるだろ?}

 「はは。ごめん。セカイ。巻き込んじゃって……」

 {謝るなよ。俺たち、ずっと一緒だろ?

  最後まで付き合うぜ。}

 体がやけに寒い。

 今から死ぬという感覚を実感する。

 でも、今の僕は一人じゃない。

 僕たちはそっと目を閉じた。

 じゃあね。セカイ。

ここまで読んでいただき、

本当にありがとうございます!


この物語は、

“主人公になりたかった男”と、

そんな彼の隣にいた存在の物語です。


0話はかなり重たい内容になりましたが、

ここから少しずつ、

セカイと檄哲の物語が動き出していきます。


少しでも続きが気になった方は、

ブックマークや評価をしていただけると励みになります。


これからよろしくお願いします。

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