表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/48

①厳重な警備

****************


第3章では、構造が言葉として提示された。

それは説明ではなく、定義として与えられ、その場にいたすべての者に、疑問を持たれることなく共有された。


何が行われるのかではない。

何が存在しているのか。

その前提だけが、先に固定されている。


そしてその時点ですでに一つの段階は終わっていた。

残されていたのは、それを現実として成立させる工程だけである。


第4章では、その工程が実行される。

オープン式典という形式の中で、その構造は実際に起動され、社会の中へと接続されていく。

それは施設の完成ではない。

構造そのものが、現実として動き出す瞬間である。


****************

東京キッザニア内——

これからオープンを迎える、日本サイバーサイジング社パビリオン前。


その正面には、特設された式典スペースが広がっていた。

中央には、まっすぐに伸びるレッドカーペット。

その先に設けられたステージは、本日のために整えられた特別な舞台だった。


ステージ右側には、キッザニアのロゴが掲げられた演説台が設置されている。

その傍らに立つのは——

司会進行を務める、キッザニア東京・運営責任者の

水瀬みなせ 綾乃あやの


まだ開式前であるにもかかわらず、会場の空気はすでに張り詰めていた。


レッドカーペット周辺には、キッザニアの警備員が配置されている。

さらにその外側には、アダソン家のSP警備部、現地警察、そして現地の警護要員が重層的に展開し、周囲を取り囲んでいた。

その配置は明らかに厳重であり、この場に立つ人物が“通常の来賓ではない”ことを無言で示していた。


パビリオン前の広場には、多くの親子連れが集まっている。

開業を待ちわびた子どもたちの視線は、ステージとレッドカーペットの先へと向けられていた。

その背後には、報道関係者の一団。

肩にカメラを構え、あるいは三脚を据え、

いつでもその瞬間を捉えられるよう構えている。


フラッシュが断続的に光る。

シャッター音が重なり合い、空気に微かなざわめきを生んでいた。


しかし——

その賑わいの中にも、どこか一線を越えない緊張が存在していた。


「ねえ、なんでこんなに警備いるの?」


前列にいた一人の子どもが、小さな声でそうつぶやく。

隣にいた保護者は一瞬だけ言葉を探したが、すぐには答えが見つからなかった。


別の親子の間でも、小さな声が交わされる。


「今日、スペシャルサプライズゲスト来るって書いてあったよね……」

「でも、ここまでの警備って……」

「もしかして、かなりすごい人が来るのかも……」


パンフレットやイベントチラシには、確かに“スペシャルサプライズゲスト登壇”の記載があった。

だが、その詳細は一切明かされていない。

そのためか、会場のあちこちで、同じような“もしかすると”という予測が、静かに広がり始めていた。


期待と、わずかな不安が混じる。

報道関係者たちもまた、カメラを構えながら互いに視線を交わす。

事前に共有されている来賓情報の中に、これほどの警備を要する人物の記載はなかった。


だが、警備だけは——

明らかにそれを前提として配置されている。

これから登壇する存在を前に、すべてが、わずかに抑えられている。

静かに、しかし確実に。

会場全体の意識が、これから始まる“その瞬間”へと集まりつつあった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ