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神代の魔導具士 豊穣の女神  作者: 黒猫ミー助
降り積もる雪
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◆5-34 いつかだれかの記憶




 とても大変な一日でした。人死にまで出るし…。

 騎士は主を護ってならば本望…なんて事は無く……

 他国で亡くなったので、賠償問題に発展しちゃう。


 不幸中の幸いとしては、相手が魔獣だったこと。

 魔獣に国境は無く、魔獣は誰にも従わない。

 魔獣に因る被害は発生国の責にならず、あくまで天災扱い。

 だからといって、完全に免責されるかというと…そうでもない。

 今度は、魔獣を放置した事に対して非難される。

 慰問金として被害国に支払い、遺族基金に充填する…という回りくどい手続きが必要。


 金額に関して多少は紛糾するでしょうが、上手く収まるでしょう。

 聖教国とは仲良いし。表向きも内実も。

 …政治的な事を、子供の私がどうこう考えても仕方ないわね。

 お父様達が話し合いで決める事ですし。


 兎に角、お祖父様もお父様も無事。それだけで満足。

 エレノアお姉様の素晴らしい勇姿も拝見できて、お父様のつくる『巫女様』も見れた。

 幾つかの腑に落ちない点はあるけれど、終わり良ければ何とやらよね。


 そうそう…その腑に落ちない点について、ガラティアお姉ちゃんに訊こうと思っていたの。でも…

 ガラティアお姉ちゃんは昼間の銃撃で疲れたのか、あの後ずっと眠ってる。

 葬送中も起きなかった。

 今年こそ一緒に『精霊送り』が見られる…と思っていたのに…残念ね…。

 でも、何でも知ってるお姉ちゃんと一緒だと、『精霊送り』の原理を逐一解説されてしまうかも?

 …それは…なんとも。

 興醒めになっていたかもしれない。


 あれ…?そういえば…昨年、一緒に見なかった?

 見たような見てないような…?

 …そもそも、お姉ちゃんと…私、いつから一緒に…過ごしていたの…?

 ()()のが当たり前過ぎて…疑問にも…。

 …霞が…かかって……邪…魔…。


 …………………………あれ?

 今、私は何を考えていたんだっけ?

 …まぁ、いいや。

 思い出せない事は、大した事じゃない証拠。



 私は湯浴みをし、カーラに魔術式で髪を乾かしてもらい、用意された綿の布団に包まった。

 「今日は大変でしたね、姫様。

 ゆっくりとお休み下さいませ」

 「ありがとう、カーラ。また明日…」

 カーラは軽く頭を下げて、側仕え用の部屋へと入って行った。


 …ぬくぬく。

 お城よりは暖かいけれど、まだまだ冷えるこの地方。

 綿布団の魔力には抗えない。


 目の前には、木炭を使ったランタンの熾火(おきび)

 チロチロと小さく残る灯火が、部屋の寒さを僅かに和らげてくれている様な…。

 目を閉じると、瞼の裏に投影された『精霊送り』の光景がクルクルと回り、自分の息が子守唄となって眠りに誘う。

 昼の疲れもあって瞼は重く、落ちていく誘惑に抗えない。

 …お休みなさい…。そう一人呟き、私は深い夜へと堕ちて行った。



 木漏れ日が(まだら)に挿し込む。その木陰を歩く()()()

 直ぐ隣には、優しげな微笑で私を見下ろす赤眼黒髪の美しい女性。

 お母様ではない。私に姉は居ない。誰かしら?


 …ああ、私のお姉様だわ。何故忘れていたのでしょう?


 彼女に手を握られながら歩いている。

 青い湖から碧い山へと流れる風が、通りすがりに私の頬を撫でていく。暖かくて涼しい。心地良い。


 ふと、自分の指に目を遣る。

 「あたしの指…こんなに短かったっけ?」

 「短✗て当た✗前よ。だって✗✗✗✗……」

 思った事が無意識に声に出た。それも二人分。

 隣の女性は、何も言わずに微笑みで応えた。


 私は足下を見た。

 小さな靴が狭い歩幅で動いている。

 「あたし…こんなに足が小さかった…?」

 「だっ✗、貴女✗✗✗✗…なの…」

 再度、軽く考えた事が口をついた。また二人分。

 隣の女性は、愛おしそうに私を見下ろしていた。


 「○○○○……。貴女は、○○○○に……」

 隣の女性が話し掛けてきた。

 でも彼女の声にはノイズが走り、何を言っているのか解らない。

 「え?何?聴こえないよ?○○○お姉ちゃん…」

 …?

 私は何と言ったのかしら?

 ○○○って…だれ?

 「○○○は✗✗✗✗じ✗ない✗。覚えて✗✗の…?」 

 …私の声にもノイズが…?



 周りに見える世界の印象は広大な白。

 そこに建ち並ぶ墓石の様な建物群。こちらも白。

 私の着ている服も白。お姉様の纏う衣服も白。

 随分と背が伸びた。

 お姉様と並んでいても遜色無い。もう遅れる事はなくなった。


 そびえ立つ、一際大きな建物。

 私の目の前には大きくて気泡の無い、綺麗な一枚板のガラス扉。

 私が押さなくても、勝手に開いて私達を建物の中へと誘う。

 「何…!これは!?」

 「自✗ド✗✗✗ないの。✗言✗✗✗✗?」

 「自✗ド✗?」「✗✗✗✗……」

 頭の上から声がする。けど、何を言っているのか解らない。

 青い服を来たおじさんが、私達()()に笑いかけて来た。

 お姉様と私は、軽く手を振って返す。


 再び大きなガラス扉の前。

 私はお姉様の横に並び立つ。

 強い光が私達の身体を撫ぜる。

 次は顔。

 黒い板に向けて顔を近づけ、目を開く。

 「○○○○様…○○○様…。どうぞ、………さい」

 何処かから声が聞こえた。さっきのおじさんの声ではない。女性の声。

 「なに?人が居る様には見えなかったのに…一体何処から?」

 「自✗✗声の✗と✗✗✗…?本✗に…今✗は✗✗したの?」


 お姉様と()は、その声を不思議とは思わない。

 普通に歩き出し、普通に開いた扉を通り抜けた。

 「びっくりし過ぎて…何がなにやら…」

 「何✗、不✗議✗事✗✗あった✗?

 ま✗か、ト✗✗ル効果を現認✗✗✗✗?アハ✗!」

 私の中の声か隣の女性の声か、判然としない。


 「やあ!○○○○博士、○○○博士。

 ご安心を。経過は順調ですよ」

 白い部屋の中に居た白い服を着た男の人が、私達を出迎えてくれた。……誰だったかしら?


 目の前に広がる巨大な水槽と光る粒。

 これは、私達の創った○○○……



 何千、何万もの瞳が私達を見上げている。

 「……これが人類を、世界を……」

 大きな声が頭の上から響いてくる。

 …ああ…五月蝿い。

 私は…私達は、あなた達の為に開発したわけではないのよ。これは…


 崇敬、敬愛、熱狂、狂信…

 嫉妬、侮蔑、畏怖、憎悪… そして、殺意…

 …見える。人の✗✗が。

 目に埋め込んだ○○検知デバイスは正常に作動している。

 この実験も成功。これで幾つ目だったかしら?

 さてと…次は✗✗を創っ✗みようかな…♪


 突然の爆発。

 観客席が派手に吹き飛んだ。

 飛び散る()()


 私達の周りを屈強な男達と機械が取り囲み、手で指示を出す。

 壇上から素早く退避して、私は✗✗✗に乗り込んだ。



 私は反射的に飛び起きた。

 心音がけたたましく鳴り響く。

 滝のような汗が、私の寝間着を濡らしている。


 外はまだ暗い。

 カーラも起きていない。

 「今…何時頃かしら…時計は何処?」

 そう呟きながら台に手を伸ばす。

 …そして、首を傾げた。


 『時計』…?本の挿絵でなら見た事はあるけれど。

 私はまだ、実物を見た事がない。…帝国には有るらしいけれど…。

 なんで私、見た事のない『時計』を……

 動き方を…仕組みを…どの様な音が鳴るのかを…。

 そして、その感触までも知っている…?


 …私は…だれ?




 

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