end
「ゆいちゃん……」
歩み寄ると、先輩は足が立たないながらも手で這って逃げようとする。もちろんそんなの無駄な抵抗で、私はあっさりと彼に追いつき、その眼前に生首をつきだしてみせた。
「ゆるしてくれ、ユイちゃん……」
「ゆるす?」
それは、今まで私に付きまとっていたことか。それともうっかり殺してしまったことか。あるいは、私の身体をばらばらにしてしまったことか。
不思議と、自分を殺した人を目の前にしても、憎しみなんて感じなかった。
パズルは完成しなかったものの、自分のことを知ることができた。そして事実を知ってしまった今、私にはもうやるべきことがないように思われる。
生きていたらあれがしたかった。これがしたかった。でも、もう遅い。今の私に、できることなんてかぎられる。
恐怖に焦るあまり、手をすべらせ床にはいつくばる先輩。私はただ、それをだまって見ていた。哀れみとか、そういうものを感じるわけでもない。ただ、見つめても彼に対する思いは無だった。それは生前となんら変わりなかった。
ひぃひぃとなさけない泣き顔で許しを請う先輩の前に、私は自分の首を置く。パズルはもう完成しない。ならばもう、このピースに用はない。私はここを去ることにした。
玄関の戸が開く音がする。
私はミクリヤユイの失踪が、ようやく解決することを悟った。
『――行方不明になっていたミクリヤユイさんの遺体が、同じアルバイト先の男子大学生のアパートで発見されました。警察はミクリヤさんがこの大学生にしつこく言い寄られていたことから捜査し、自宅でミクリヤさんの切断された頭部を発見。十九歳の少年を逮捕しました。その後の調べにより、少年は殺害したミクリヤさんの遺体を細かく切断し、生ゴミとして捨てたほか、トイレに流すなどして処分したと供述。警察は押収した配管を調べるなどして、ミクリヤさんの遺体を捜索中です……』
END