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ハイスピード・アナリシス ~異世界で解析しまくる男。  作者: 愛野万之介
第五部 マジック・カンパニー
82/162

第82話 鎖で縛られた独裁国家だから。



(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)




「お前、女に!? ……あ、あれ???」




がばりと起き上がり見渡すと、そこは見知らぬ部屋の中だった。


質素だが、上品な寝室。

ベッドで仰向けで寝ていたところで、突然にオンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)が終わったらしい。


……悪い夢でも見ていた気分だ。

俺はため息を吐き、訳がわからんと呟く。



白い漆喰の壁に掛けられた大きな風景画、天井に吊るされた小ぶりのシャンデリア、窓には麻風のカーテン、木の床、木の家具……。


家具の隣には、ラックがあり、そこにはあの黒いローブと寝間着らしきものが何着か掛けられている。



ここは寝室、か。

牢屋ではないのは間違いない。

今がいつで、ここが何処なのか。

どれだけの時間が経過したのか。

もう、考えるのが面倒くさい。




“おはようにゃん。やっと目が覚めたにゃん?“



ベッドの脇で、黒い獣が姿を表す。



うお!

猫っ!

いたのか!?



“……やっぱりにゃん。ムイムキムードだったにゃん?“



え?

ムイムキ?

あ、ああ。無意識モードね。



“任命式の途中から、リョウスケの声が聞こえなくなったにゃん。そばにいても完全に無視にゃん“



そ、そうか。



“……なんか、吾輩分かってきたにゃん“



何が?



“リョウスケは、時々人形みたいになるにゃん。笑顔も浮かべるし、普通に動いてるにゃん。でも言葉を出さず、何も考えてないにゃん。それが、ムイシキムードにゃん?“



え?

ああ……。

きっと、そんな状態だろうが……。



“しかも、その間は記憶がないにゃん?“



な!?

な、な、な???

その通りだ!

猫!

よく分かったな!



“当たり前にゃん! ずっと繋がってるにゃん!“



猫が妙にお利口さんで気持ち悪い。

しかし、嬉しくなって頭をナデナデしてやる。

だが、ムイシキムードじゃなくて無意識モード、だぞ。



“にゃ。なんか吾輩が頭悪いみたいにゃ? 吾輩はリョウスケより遥かに歳上にゃん。……にゃんっ! いつまでも頭部を撫でるのはやめるにゃん!“



歳上?


俺は撫でる手は止めずに鼻で笑う。


確かに、猫は遥か過去に生まれた猫族の剣……。

なのにその精神年齢って、残念だな?



“にゃ? 残念にゃ? そうでもないにゃん……。ところでセーシン年齢ってなんにゃん?“



首をかしげる猫。

……本当に残念なやつ。

これでマンチカンなら癒されるのに……。


久しぶりに見る猫は、体格がよりガッシリして、肩の辺りも逞しくなっている。

成長してる、のだ。

やはり、元に戻る事はないのだ。

はぁ……。



あっ!

ハルカはどうしたんだ!

ハルカのそばにいろって言っておいた筈だぞ!



“ハルカは部屋に籠っちゃったにゃ。それに、吾輩はリョウスケからお願いされたにゃ“



お願いされた?

俺から?



“ムイシキモードになったら、全力で守れって言われたにゃ。だからずっとそばにいたにゃ。危ないことはなかったにゃんが……にゃ!???“



俺は思わず猫の首に抱きついていた。



“ど、どうしたにゃ!???“



な、何でもない……。

ただ、うれ……いや、何でもない……。

サンキューだ、猫。



“39ー? 意味がわからないにゃ。と、とにかく抱きつくのをやめるにゃ!“



俺は首をホールドしたままの姿勢で、尋ねる。


なぁ?

ところで、どういう理由で、ハルカは部屋に籠ってるんだ?

仕事が溜まってるのか?

キョッキも部屋の中にいるのか?



“今日は仕事を休んでるにゃ。騎士団の寮の自分の部屋にゃ。キョッキは男だから入れないにゃ“



……分かりにくいが、騎士団には男と女、別々の寮があるってことか。

……仕事を休んで寮の部屋に籠っている?

……何してんだ?


調子が悪いのか?

女子寮というのは非常に安心だが……。


……気になるな。


猫。

透明になって探ってこい。

情報収集だ。



“い、行く必要はないにゃ。ハルカはショックを受けて、落ち込んでいるだけにゃ“



ショック?



“リョウスケが、工場長になった事、みたいにゃ“



は?

なんで俺が工場長になると、ハルカは……。



……。

……。

そうだ。


俺は、ゆっくりと自分の目を見開く。


何を寝ぼけてんだ、俺は。

肝心な事を、無意識で無視しようとしていたのか。



俺は、工場長に、なったのだ。

夢でも、遊びでも、ビックリでもなく。


自分の首に恐る恐る手を伸ばすと、そこには、やはりあった。



『契約の鎖首輪(チェーンチョーカー)』。



夢ではなかった。

感じる。

重い繋がり。

外そうとしても、微動だしない。

肌に吸い付いつく冷たい感触……一ミリすらも離れない。


工場長の──証。



途端に……心と身体が重くなる。

胸一杯に嫌なものが膨らんでくる。



“大丈夫にゃん?“



……大丈夫じゃない。


信じられない。

なぜ仮社員から正式に社員になったと思ったら、工場長になってしまうのか。



──あの工場長代理の一存としか、思えない。


総理大臣を決めるように、投票も選挙も無さそうだし、この鎖首輪(チェーンチョーカー)の存在から考えても、民主主義なんてくそ食らえの独裁国家のなんだろう。


であれば、工場長不在の1000年を取り仕切っていたあの桃色工場長代理の独断任命としか……。



『囚われるな』



また、あの男の声が頭に浮かび、俺はそれを振り払うように頭を振る。

オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)の時もそうだが、何故俺は父を思い出す?

トラウマの根が深すぎる!



俺は大きく息を吸い込み、それをゆっくりと吐き出す。



落ち着いて、ベストな計画(プラン)を立てなくてはならない。


先ずはどうするか、を決める。


あとは、状況により微調整して、決めたゴールを目指して進めばいい。



俺は高速思考を開始。


……。


……結論(リゾルト)


……『カンパニーから、逃げる!』……しかないな。



“にゃ!? その結論はなんにゃ??? それ、ありなのにゃ!!!“



猫。

無理だ。

俺に工場長は無理。

そしてあの工場長代理に取消させるのも無理だ。


だから……逃げる!



“無理って、無理なのにゃ?”



無理だ。



”……本気にゃ?“



俺は頷き、親指を立てて見せる。



“その親指と、自信満々の表情の意味がわからないにゃ……“



とにかく逃げるために、必要なプランニングと準備をしていくぞ。

俺達なら、出来る!



”お、俺達って、吾輩は……”



俺はまたぎゅっと猫を抱き締める。



猫。

今の俺に必要な事は、とにかく情報だ。



基本は、情報収集(データコレクション)解析(アナリシス)


情報さえそろっていれば、俺は必ず逃げてみせる!



“す、すごい自信にゃ……“



この国から逃げられるのか、それが簡単なのか不可能なのか、難易度は不明。

この首輪も邪魔。


とにかく、俺には見える。

この首輪を頂点とする鎖で縛られた独裁国家の姿が。


悪魔の国は言い過ぎだが、人によってはその表現も有り得るのかもしれない。


こんな国で、最高責任者なんて、絶対に嫌だ!


だから、俺はこの国から逃げる事にする!



“にゃにゃ!???“



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