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ハイスピード・アナリシス ~異世界で解析しまくる男。  作者: 愛野万之介
第一部 知は愛、愛は知。
8/162

第8話 チリツモ大作戦。



(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)




アリスの蒼い目がすぐそばにあった。



どきり。



俺は、オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)から戻ると、毎度のように情報収集(データコレクション)し、解析(アナリシス)をする。


何故なら、オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)発動中、俺は意識がない。


誰でも、考え事に没頭していたら、時間がものすごく過ぎていたという経験はあるだろう。


俺はその上位変異版。


思考に没頭中、俺は完全に外界の全てをシャットアウトし、その間は無意識で簡単な会話や移動を行う。


目が覚めると、ここはどこ?

何してるの俺は?という状態になる。


おまけに今回から、取り憑いた悪霊とお話が出来るようになった!???



ただ、いまいち、あのシャドウ(謎X)は、現実か、妄想なのか確実ではない。


なにしろ、脳内の話だ。

俺が勝手に作り上げた人格の可能性も否定できない。

解離性同一性障害──いわゆる多重人格なのかもしれない。

それにしては……。


おっと!

今は目の前の情報収集(データコレクション)だ!



すぐに、気がつくのは、騒がしい喧騒。


さっきまで俺とアリスだけの食堂は、大勢の客で賑わっていた。

その殆どが甲冑姿のターミナルゲートの門にいた兵士らしき人達だ。


オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)が発動中の無意識の俺は、あきれるほど、アリスと長話をしていたようだ。


残念ながら、その間の記憶はない。



「美味しいでしょ? そのジュース」



ん?

目の前のアリスに言われて、俺は右手の木のコップを見る。

そして口の中には、ドロリとした何か。


!!!

俺の舌が、得体の知れない味を感知!


思わず反射的に口のものを吹き出そうとするのを、俺は意思の力で止める。


……けれどそれは無駄な努力に終わった。



クソマズー!!!



「私の特別なジュースなんだけど、その、リョウスケにも是非、き、きゃーっ!!!」



アリスの悲鳴。


ジュースと呼ばれていたおぞましい液体は、俺の口から吹き出して、アリスを頭から濡れ濡れにさせた。


固まる俺と、ワナワナと震えるアリス!



「す、すまない!!!」



俺は慌てて立ち上がる。



「な、な、なんで、突然?! ヒドイ!!」



アリスが、青い眼を吊り上げて俺を睨む。



タイミングが悪すぎた。

しかも、ジュースだと???

舌が痺れるほどに不味い!

この世界の味覚は、やはり変なのか!?



「本当にすまん!」



……しかし、ただでさえ面積の小さな衣装が、ピッタリと肌に張り付いていて、目のやり場に困る。


な、何か拭くものがいる、な。



その瞬間、俺は閃いた。


床に置いた鞄に、確か厚手のハンドタオルがあったはずだ。

ワイシャツのポッケにはハンカチもある。


……が、俺は席から離れながら、言った。



「ちょっと、タオルを持って来る!」



アリスの目が驚きで見開かれる。



「カワル? タワリ? 何?! あ、ちょっ、どこにいくの?!」



この世界にはタオルという言葉はないようだ。


だが、俺は振り返らずに、食事を作っている調理場のあるカウンターへと向かう。


マジですまん。

ちょっと待っていてくれ!



かなりの広さの食堂だ。

拭くものを借りてきて、ここに戻るまでモタモタと10分程度は許されるか?


全身を濡らして、涙目になっているアリスを放置するのは、俺って最低野郎的な行為だか、思わぬ時間が確保出来た。

アリスには悪いが、見られるわけにはいかない。



そう、試験突破の準備。

すでに、かなりの時間が過ぎている。

急がなくては。



俺は沢山のテーブルの間を突き進む。


食堂の座席は、ほぼ満席だ。


ざっと500人。

やはり、人間か動物か、見た目も体格もおかしい連中ばかりだ。

警備をしている兵士が多いのか、西洋鎧を身に付けている人が多い。

剣や槍が、壁にかけられていて物騒だ。


この人達は、全員がカンパニーの社員なんだろうが、果たして社員ってなんなのだろう。

これは社員というより、軍隊……。



早歩きしながら、テーブルの上をさっと見る。


様々な食べ物が木製の食器に入れられて並んでいる。

すでに食事を終えて語らう連中もいる。


やはり、ランチタイムがはじまってから、大分経過しているのだ。

残された時間は少ない。



掻き分けるように進む途中、何人かから、魔力風を感じる。


だがそういう連中は、やはり身に付けている衣装や鎧が高級そうだ。

実力主義、というか魔力主義とは本当のようだ。


そちらを見ていると、なぜか向こうも俺を見てくる。

俺をなめ回すような強い視線。

俺のスーツ姿が珍しいのかもしれない。



カウンターは食堂の入口にある。


ここは、食堂と言うだけあって、セルフサービス。

注文したものを、自分でカウンターで受け取り、空になった食器を返す、社員食堂らしいシステムだ。



俺は、その前にオンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)で、シャドウが言っていた事を確認しなくてはと立ち止まる。


鑑定石とそれらに関わる知識を進呈しよう、とか言っていたが?


それに俺の思考は、シャドウ・P・Dを解析(アナリシス)していたはずだ。



それらは、多分、俺の頭脳の何処かにあるはずだ。

知識か、記憶か……。

思い出すように、シャドウを思い浮かべながら自分の頭脳をまさぐる。


高速で動き出す思考。

その瞬間、激しい頭痛に俺はよろめく。



くっ!

な、なんだ!


次いで、目の前が、激しく揺れる。

視界の中で火花がまい砂嵐が起きる。


目の奥が、熱い!


頭を抱えて瞼をとじる。



明らかな異常!


あいつか?

シャドウが、頭の中で何かしているのか!?


シャドウは答えない。


いや、分かってはいたが、アイツは俺の思考に捕らわれて、外界から遮断されている。

あいつは霊体なのだ。

俺がもしまたアイツと接触するとしたら、オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)が発動した時だけだろう。



「大丈夫か?!」



いつの間にか、俺の周囲に2人の鎧をきた男がいて、俺は床に倒れていた。

駆けつけてきたのは、近くのテーブルにいた兵士達。



……だが、俺は、それどころではなかった。


……頭痛は収まった。

……視界もクリアだ。


……だが、目の前に、文字か浮かんでいた。




ふわふわと浮かぶ小さな文字。


いや、意味のある言葉だ。

日本語、だ。


横書きの短冊みたいだが、一文字一文字が独立して動いている。



箇条書きされた何十もの言葉達は、勝手に視界の中を動き回っている。


俺が困惑しながらも目を凝らすと、ふいにそれらが、一斉に縦に並んびリストを作り出す!



その様子は、まるで、文字が生きていて泳いでいるようだ。


メダカ、だ。

まるでメダカの群れだ。



心配して覗きこむ兵士を無視して、その中の一匹に手を伸ばす。

ゆらゆらと震えるような文字。



その言葉は『魔力 (謎F)』。



指が触れた瞬間、頭に閃くように広がる情報。



『魔力。謎F。解析率2%。この世界の全てに存在する未知のエネルギー。魔力を使う事で、不可思議な現象を起こすことが可能、不明』



!!!


文字が広がり、頭の中に知識として広がるような、今まで感じたことのない奇妙な感覚があった。

な、なんだ、コレは!?



これは、シャドウの仕業か?



どうやったか知らないが、頭の中で何かしはじめたというのだろうか?


しかし、俺の視界に、文字を表示……だと?

それとも、これが魔法というやつなのか?

こんなことが、可能なのか?



……まてよ。


眼の網膜で見た情報は、視床を経由し、視覚野に送られ、ここで初めてイメージに変換される。

つまり、シャドウはその経路の何処かで、俺の思考の協力のもと、なんらかの細工をしていると考えるべきか?



俺は続いて、他のメダカのように漂う一匹、『ペーパー』という文字に手を伸ばす。

ペーパーは、マジック・カンパニーの商品。

魔力を貯めておけると聞いていたが、実はかなり気になっていたのだ。



『ペーパー。解析率5%。マジック・カンパニーの独占生産物の総称。幾つかの種類があるが、不明。魔石の代替品と言われ、希少な魔石にかわり世界中で使用されるようになった。魔石との違いは簡易さ。周囲の魔力を迅速に吸収し、使用されるまで蓄積しつづける。高価なペーパーほどその蓄積可能な量が大きく、レベル1~Xで価値を分けられて販売されている。使用法は、ペーパーに呪文あるいは魔方陣を描き、ペーパー内に蓄積された魔力を使用して魔法を発動する。これにより、大衆に生活魔法が普及された。使用後のペーパーは、再利用不可能』



情報の確認に1秒もかからない。

すごい便利機能である。


未知数とした謎の割り振りと解析率まであるとは。


解析率ということは、俺の思考の解析(アナリシス)の進行具合という事だろう。


情報の中に、明らかに俺の知らないシャドウの知識がはいっているから、これで奴が関わっている可能性は大だ。

知識を進呈とか、俺を補佐するとか言っていたが、まさか……これがそうなのだろうか。



それよりも。

ペーパーの情報だ。

俺が予想していた通りの物だ。

魔石の代替品か。

成る程、成る程。



他にも気になるワードとして『シャドウ・P・D』がある。

解析率も気になる。



だが、ずっとこの機能で遊んでいるわけにはいかない。


倒れた俺が、手を伸ばして怪しい動きをしているせいか、社員が助け起こそうとしてくれているのだ。



目の焦点をワード達から、腕を伸ばしてくれている職員に移すと、ワードたちは蜘蛛の子を散らすように視界から消えていった。



「おいおい、大丈夫かい? 」



腕を捕まれる。

一人で立てる、と言おうとしたが、激痛が腕に走る。

痛い! 痛い痛い!


強引とも言える形で、引きずり起こされながら、俺は必死で悲鳴を押し殺す。


アリスもそうだけど、何故みんな馬鹿力なのだ?



「あ、有難うございます」



腕は痛かったが、起こしてもらったからには、仕方なく礼を言う。

だが、今はこの兵士2人に関わっている暇はない。



「すみません、大丈夫です、ちょっと急いでいるんで」



問答無用で、2人の間をすり抜ける俺。



「本当かい、気を付けてな、リョウスケ殿」



案外あっさりと、むしろにこやかに2人の親切兵士は離れていく。



……ん?

何か引っ掛かりを覚える。


妙にフレンドリーさを感じたのだ。



まあ、いい。

急がなければ。


俺はカウンターに、向かう。



十メートル程の間口のカウンターに、食事を貰おうとする人の姿は皆無。


ラッキーだ。

近寄りながら、俺はまた視界の中で、ワードを探す。


その途端に、まるで逃げ隠れていたかのように、視界の端から現れるワード達。


そして、中央に整列していく様は、ホントにメダカみたいだ。



けっこう可愛いじゃないか!


俺はこいつらに、名前をつけたくなる。



メダカの群れは、英語でschool of medakaだ。


いや、本当に!

という事で、『メダカの学校』とでも名付けるかと思ったが、童謡のイメージが強すぎる。


せっかくの知識確認システムだ。

カッコいい方がいい。


よし!

school of medaka の頭文字を使い SOM と呼ぶ事とする。



俺はSOMを起動させたまま、不自然でないように指で操作しながら歩き続ける。



カウンターに、到着した時には、必要な情報はSOMにより確認し終わる。

早い!

メモリが、俺の思考なのだから当然か。



シャドウについての情報は、一旦お預け。

現時点の優先順位は、試験があるためにかなり下である。



俺はSOMを解除し、大きく息を吐く。



ふー。

それでは、作戦開始だ!



作戦名を名付けるならば、『チリツモ大作戦』。


実は既にアリスと離れた時には、大まかなインチキ手段の大枠は決めていた。


ただ、SOMには感謝している。


アリスでは不足していた情報収集(データコレクション)が、具体的にはペーパーと鑑定石の情報補足が欲しかったのだ。



限られた時間だったが、まずまずの情報収集(データコレクション)解析(アナリシス)は出来た。



『チリツモ大作戦』開始!


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